2023年の実施された学術研究船白鳳丸による航海中,千島海溝の水深6102–7288 mで実施した2測点から採集されたナマコに,口の周りにつぶつぶしたものをつけた個体がいると同乗の小川晟人さんに声をかけていただいたのが始まりです.つぶつぶは根?のようなものでナマコに突き刺さっていました.船上でいくつか引き抜いて観察してみましたが,その時点で私には何のグループか特定できませんでした.なんなのかわからないなと思いながらも生体写真をたくさん撮っておいたのが,その後の研究継続に活きました.
寄生虫関係者が数名乗船していたのですがありがたくも私が持ち帰らせていただき,研究室でDNA配列情報を決定してみたところ,単体性の内肛動物であることがわかりました.内肛動物の観察経験が浅かった私は,内肛動物とはもう少し触手が長いものではないのか?とまず驚きました.その後形態を精査したところ未記載種だと明らかにできたため,Loxosomella namacolaという学名で新種記載しました(namacolaは,日本語のナマコnamakoと,そこに棲むといった意味をもたせる接尾辞-colaを組み合わせたものです).
単体性内肛動物はLoxosomatidaeに属していますが,Loxosomatidaeの構成種の和名は,〇〇ロクソソマなどのカタカナ表記にしたものが見つかったものの,いわゆる〇〇ムシみたいなわかりやすいものがありませんでした(〇〇タナイスという和名を付けている私の言えたことではないですが...).そのため今回の種に和名を付けるか,付けるとしてどういうものにしようかかなり悩みました.ビードロムシやぽぴんむしというのもいいかなと思ったりしたのですが,内肛動物は末端が閉じていないのでビードロ/ぽぴんに見立てるのは適切ではないかなと思い,やめました.結局,ナマコについており,形が蕾のようであることから,ナマコノツボミムシとしました.なおナマコに単体で(群体を形成せずに)つく内肛動物は世界初,深い方の採集地点(水深7285–7288 m)から得られた個体は,現時点での内肛動物の世界最深記録に相当します.(2026年7月1日記)