Amphipoda (ヨコエビの仲間)
ヨコエビと呼ばれる甲殻類の仲間です.なお,エビではありません.浜辺に打ちあがった海藻などをひっぺがすとピンピン跳ねるやつらに会ったことがあるでしょうか.彼らです.最近水族館での展示が増えてきたタルマワシという生き物もこのグループの一員です.2017年まではインゴルフィエラ類も含んでいましたが,今は異なる目とされています(Lowry & Myers 2017).私は富川光さん,楢原有紀子さん,松本裕さんと以下の種について研究を行いました.
ヨコエビと呼ばれる甲殻類の仲間です.なお,エビではありません.浜辺に打ちあがった海藻などをひっぺがすとピンピン跳ねるやつらに会ったことがあるでしょうか.彼らです.最近水族館での展示が増えてきたタルマワシという生き物もこのグループの一員です.2017年まではインゴルフィエラ類も含んでいましたが,今は異なる目とされています(Lowry & Myers 2017).私は富川光さん,楢原有紀子さん,松本裕さんと以下の種について研究を行いました.
A new species of Psammogammarus (Amphipoda: Melitidae) from Kuchinoerabu Island, Japan, with a note on its feeding habits.
【論文Link】
Psammogammarus mawatariiは,富川さん,私,山崎さんの所属研究室のボスだった,馬渡峻輔先生に献名した種名です.マワタリスキマヨコエビという和名がつけられています.本種は口永良部島(くちのえらぶじま)の潮だまりから採集されました.体長3ミリメートルちょっと,小さな動物ですが歩いて行ける潮だまりにも新種がいるというよい例ですね.新種記載に加え,胃内容物の観察を行い,摂食器官の形態に関する議論を行っています.
ちなみに.本論文が出版された2010年度は馬渡先生が退職される年だったのですが,富川さんが馬渡先生の退職記念パーティーでこの成果を紹介しているのを見て(その場に出版を間に合わせる計画性をみて)「さすがや・・・」と思ったのが思い出されます.(2013年頃記)
Opisa takafuminakanoi, a new species of Opisidae from Hokkaido, Japan (Crustacea: Amphipoda).
【論文Link】
Opisa takafuminakanoiは,動物分類学者の中野隆文さんに献名した種名です.Opisa属は第1咬脚(1番目の歩く脚に相当)がかなり変わったハサミ型(末尾図を参照)をしているとても素敵なヨコエビです.北海道厚岸の沖合から報告されました.第1咬脚がどう動くのか知りたい.ぜひまた採集したいグループです.(2016年頃記)
A new species of Nicippe from the Bering Sea (Crustacea, Amphipoda, Pardaliscidae), with a redescription of N. tumida.
【論文PDF】
2017年にJAMSTECの藤原義弘さんが主席として実施された海洋地球研究船「みらい」による航海(MR17-04 Leg 2:ベーリング海南東部における「アリューシャン・マジック」観測)の成果です.Nicippe tumidaは長らく北半球冷水域の広域分布種と考えられていましたが,近年の研究で複数種が含まれていることが明らかとなり,分類が進められてきました.本研究もその一つで,ベーリング海南東部の水深約500メートルから採集した標本について未記載種と判断,Nicippe beringensisとして新種記載を行いました.また,タイプ産地近く(ノルウェー)から採集した標本に基づきNicippe tumidaの再記載も行いました.(2020年頃記)
A new species of Leipsuropus Stebbing, 1899 (Amphipoda: Podoceridae) from Japan.
【論文PDF】
所属研究室の柁原宏さんの指導学生である松本裕さんが主導した研究の成果です.2017年に三重大学の木村妙子さんが主席として実施された練習船「勢水丸」による航海中に,熊野灘の水深338-340 mから得られた標本について,Leipsuropus seisuiaeとして新種記載を行いました.またLeipsuropusの全種のオスのための検索表を作成しました.トゲトゲしてかっこいいヨコエビです.(20230220記)
Capropodocerus, a new genus in Podoceridae (Crustacea: Amphipoda) from Japan, with descriptions of two new species.
【論文PDF】
所属研究室の柁原宏さんの指導学生である松本裕さんが主導した研究の成果第2弾です.2012年に中央水産研究所の藤本賢さんが首席として実施された研究船「蒼鷹丸」の航海と,2017年に三重大学の木村妙子さんが主席として実施された練習船「勢水丸」の航海中に得られた標本に関する成果です.これら航海において,体前半がワレカラっぽく,体後半がドロノミっぽい奇妙な見た目のヨコエビが得られました.2012年に初めて採った時,キメラのような鵺のような,なんともかっこいいヨコエビだなと思って(そのままにして)いたのですが,松本くんが修論で扱って下さり,ドロノミ科の未記載属の未記載種だと突き止め,記載して下さいました.
第一印象から新属名はCapropodocerus,ワレカラ科Caprellidaeとドロノミ科Podoceridaeを合体させて作りました(和名はそのまんまのワレカラドロノミです).蒼鷹丸の個体はCapropodocerus kamaitachi(オオガマワレカラドロノミ),妖怪のカマイタチに因んだ種小名で新種記載しました.大きな鎌状の脚を持っている様を鎌をもったカマイタチに見立てたものですが,松本くん曰く,カマイタチは本種の採集された東北(採れたのは沖合ですが)と縁の深い妖怪とのこと,なんともぴったりな名前がつけられました.勢水丸の個体はCapropodocerus tagamaru(カイゾクワレカラドロノミ),松本くん曰く,同標本が採集された熊野灘は鬼ヶ城伝説で有名らしく,その鬼は多娥丸という「紀伊国熊野の海を荒らし回った鬼の大将」(Wikipediaより)の存在に由来しているらしいとのことでしたので,それに因んだ種小名で新種記載しました(和名のカイゾクは海賊です).ドロノミ科の全属のための検索表も作成しました.
実のところなかなか受理がもらえず原稿を仕上げてからが大変に難産な論文でしたが,無事公開までこぎつけることが出来,よかったなと思います.(20230825記)
Opisa属の1種(状態記録なし)
Nicippe beringensis(固定前)
オオガマワレカラドロノミCapropodocerus kamaitachi(ホルマリン固定後)