タナイスっていつからいるの?


20240331にタナイスの化石に関する和文総説を書きました(角井 2024)ので,もう少し詳しく知りたい場合は同総説をご笑覧下さい.


タナイス目のうち現在生きている種(現生種)は,これまで約1500種程度が知られています(Anderson 2023).まだまだ名前の付いていない種(未記載種)もたくさんいて,現生種についてもやることが多いですが,はて,そういえばタナイスっていつからいるんだろうという過去のことを知っておくのも悪くありません.

現生のタナイス目は大きく2つのグループ,アプセウデス亜目Apseudomorphaとタナイス亜目Tanaidomorphaというものに分けることが出来ます(亜目の分け方にはもう一つ仮説があるのですが,ここでは割愛します).1500種のタナイスがこれら2つの亜目にまとめられているわけです.

絶滅してしまったタナイスはというと,上記2亜目に加え,ムカシタナイス亜目Anthracocaridomorphaという亜目に属する種も知られています(この亜目の妥当性については議論がありますが,ひとまず採用しています).


まとめると,以下のようになります.

・ムカシタナイス亜目:絶滅種のみ.

・アプセウデス亜目:絶滅種と現生種の両方.

・タナイス亜目:絶滅種と現生種の両方.


さて本題のいつからいるのかについて.これまで知られている一番古い化石は,石炭紀の地層から見つかったムカシタナイス亜目の一種Anthracocaris scoticaになります(Schram et al. 1986).つまり3億年以上前からいるということですね.アンモナイトや三葉虫のいた海にも住んでいたのかと思うと,なんだかロマンを感じます.なお現生種も含むアプセウデス亜目の最古の記録は約2億年前の化石,タナイス亜目は約1億年前の琥珀から見つかった化石がこれまでのところ最も古い記録になります(図).

とはいえ,絶滅種の研究は数ミリ程度のタナイスの化石を地層の中から探す必要があるのでなかなか進んでおらず,現状わかっていることが過去のタナイスの全てだなんて到底思えません.もっと古い年代からの化石の発見,新しい亜目や上科,科など高次分類群の発見,高次分類群の再編成など,タナイス進化史の常識を塗り替える重要な成果が大いに期待される研究分野だと思います.

今のところ日本からの報告は1種もありません.ぜひどなたか見つけて報告してみて下さい!

図. タナイスの化石記録と地質年代の関係(角井 2024).

last update: 20240404