私が専門とするマーケットデザイン(制度設計)は、望ましい制度やルールを理論的に考えるだけでなく、それを実社会の制度改善につなげることを重要な目的としています。このため、社会実装は制度設計研究の最終目標により近い到達点であり、私は社会実装を論文執筆や学会発表以上に重要な研究活動と位置づけています。この考えから、私は狭い意味での「研究業績」に直結しない場合であっても、社会的な意義が大きいと考えられる課題については、民間企業、政府、自治体、教育機関などの実務家の方々と協働しながら、制度設計や運用改善に取り組んできました。この一環として、私は東京大学マーケットデザインセンター(UTMD)のプロジェクトマネージャー、ERATO小島マーケットデザインプロジェクトの社会実装グループリーダー(研究総括補佐兼任)、東京大学エコノミックコンサルティング株式会社(UTEcon)のアドバイザー、日本経済学会アウトリーチWG運営委員長などの立場で活動してきました。
このページでは、私がこれまでに関わってきた社会実装プロジェクトのうち、すでに公開されている情報に基づいて紹介できるものを整理しています。各プロジェクトの紹介文は、関係各所に個別に表現確認をお願いする負担を避けるため、公開情報から自明に確認できる範囲に限定し、意図的に簡潔な記述にしています。詳しい内容に関心のある方は、各項目に掲載したリンク先の資料をご参照ください。
株式会社タイミー様と、スポットワーク市場における働き手と事業者のマッチングの改善に取り組みました。
📖"Designing Recommendation Exposure and Favorite Lists: A Field Experiment in a Spot-Work Platform" with Kazuki Sekiya, Suguru Otani, Yuki Komatsu, and Shunsuke Ozeki
株式会社MiDATA様と、両側推薦(two-sided recommendation)の改良に関する共同研究を実施しました。
📖"Integrating Predictive Models into Two-Sided Recommendations: A Matching-Theoretic Approach" with Kazuki Sekiya, Suguru Otani, Yuki Komatsu, and Sachio Ohkawa
現在、日本の多くの都道府県の公立高校入試では、各受験生はただ1つの公立高校にしか出願できない「単願制」が採用されており、他の都道府県についても単願制に極めて性質が近い制度が使われています。我々のグループは、より望ましいとして「受入保留アルゴリズム(deferred acceptance)」をもとにした入試制度の導入を提案し、政府や自治体に対して技術的知見の提供を行っています。
この提案は、2025年4月に石破首相(当時)により単願制の見直しの検討が指示されて以降、「デジタル併願制」という呼び名で大きく報道され、導入の検討が進められています。
この提案に関する資料は、UTMDのWebサイト内に特集ページが設けられ、整理されているので、そちらをご参照ください。
COVID-19などに対するワクチン接種の予約システムの設計をマーケットデザインの問題として捉え、改善に向けた研究と、関係各所への技術的知見の提供を行いました。
📖"No Screening is More Efficient with Multiple Objects" with Genta Okada
📚「ワクチン配布のロジスティクスとマーケットデザイン」(三菱経済研究所)
📖「ワクチン配布のメカニズムデザイン」日本オペレーションズ・リサーチ学会機関誌67巻3号, 2022
📝「ワクチン接種の需要喚起についての政策提言」東洋経済オンライン, 2021 (大竹文雄・小田原悠朗・栗野盛光・小島武仁・小林慶一郎・室岡健志・渡辺安虎との共同政策提言)
📝「ワクチン予約システムに関する改善提案」東洋経済オンライン, 2021 (note版)(大竹文雄・栗野盛光・小島武仁・小林慶一郎・室岡健志との共同政策提言)
📝 「『マッチング理論』で考える、望ましいワクチン配布」経済セミナー2021年6・7月号, 日本評論社, 2021 (Web先行公開版)
📝「COVID-19ワクチンの配布計画とマッチング・マーケットデザイン」東京大学マーケットデザインセンター レポート, 2021
📰「ワクチン配布にマーケットデザイン生かせ」月刊公明2021年8月号, 公明出版サービス, 2021
📰「ワクチン推進に Go To 活用を」日本経済新聞2021年6月22日付朝刊, 2021
📰「日本のワクチン予約は欠陥 トイレ紙買い占めとの共通点」朝日新聞2021年5月23日付朝刊, 2021
📰「新型コロナワクチン接種は『誰』が担うべきか」Wedge 2021年7月号, 2021
📰「経済学者のコロナとの闘い 社会実装へ英知結集を」日本経済新聞 オピニオン 核心, 2021
📰「殺到する電話、ワクチン予約システムのパンクは『予想されていた混乱』 なぜ問題を繰り返す?「早い者勝ち」の仕組みに課題」BuzzFeed, 2021
📰「ワクチン敗戦から立ち上がれ」週刊プレイボーイ17号, 2021
📺「ワクチン接種 望ましい配布計画とは」夜エクスプレス Insight, 日経CNBC, 2021年2月16日放送
📰「東京大学エコノミックコンサルティング株式会社と千代田区におけるワクチン接種に関するコンサルティングを開始」UTMD プレスリリース, 2021
日本のPETボトルのリサイクル入札について、オークション制度の改善を政策提言しました。
📝「PETボトルリサイクル入札の再設計に関する政策提言」東京大学マーケットデザインセンター レポート(奥村恭平・小田原悠朗・松島斉との共同政策提言)
📰「ペットボトル入札を考える」繊維ニュース 2023年6月27日, 2023
📝「日本のペットボトルはちゃんとリサイクルできているの?」身近な疑問 vs 東大, 東京大学広報誌 淡青 46号, 2023
📝『素朴な疑問VS東大 「なぜ?」から始まる学術入門』に再編集版が掲載
📰回収ペットボトルは「地上油田」 東京大が入札改革提言, 日経ヴェリタス, 2022
株式会社オークネット様の事業で用いられるオークション・システムの改良プロジェクトに参加しました。
📰「ノーベル賞経済理論で稼ぐオークネット 東大研究者らと競売設計」日経ビジネス電子版, 2025
📰「株式会社オークネット: 経済学の知見でビジネスにイノベーションを起こす 『マルチユニット・ハイブリッドオークション』『スマホ・タブレット端末の残価予測』の導入をご支援」UTEcon 事例紹介
📰「UTEconとイトーキが会議室不足を解決する新ソリューション「Reserve Any」を開発」UTEconプレスリリース, 2023
📰「オークネット UTEconと経済学的知見に基づいた新オークション方式『マルチユニット・ハイブリッドオークション』を開発」オークネット プレスリリース, 2023
株式会社イトーキ様と、UTEconによる次世代会議室予約システム「Reserve Any」の共同開発プロジェクトに参加しました。
📺Reserve Any 紹介動画(YouTube/PIVOT)
📰「『イトーキ×UTEcon』が次世代の『働く』を、デザインする。 会議室予約システム「Reserve Any」の開発をご支援」UTEcon 事例紹介
📰「イトーキ、オフィスワーカーの働き方をリデザインしながら、会議室不足を解決する新ソリューション『Reserve Any』を発表」 イトーキ プレスリリース, 2024