Miscellanea

災害に関わろうとする人類学者のためのごく簡単なブックリスト】 (作成途中, 2012年頃でストップ。2020年に少しだけ追記)

(1)災害人類学の概要

    • Oliver-Smith 1996 Anthropological Research on Hazards and Disasters in Annual Review of Anthropology Vol. 25: 303-328. (この分野の第一人者Oliver-Smithによるレビュー論文、非常に網羅的)

    • 木村周平 2005 「災害の人類学的研究に向けて」『文化人類学』70(3):399-409.(研究の流れを概略し防災研究の重要性を指摘)

        • (2) のHoffman and Oliver-Smith(eds.) のイントロなども参照。しかし、いずれも十分新しくない。

    • 林勲男 2011「災害のフィールドワーク」日本文化人類学会監修『フィールドワーカーズ・ハンドブック』世界思想社。災害人類学の国内でのパイオニアによるも の。その落ち着いた文章には、人類学者は社会や文化についてはある程度知っていても災害については素人である、簡単に考えてはいけない、という警句が含ま れている。

    • より最近のものとして、BarriosによるAnnual Review of Anthropology論文、Annals of Anthropology of Practiceでもいくつか概念整理

(2)事例集(論集)

    • 林勲男(編) 2010 『自然災害と復興支援 (みんぱく実践人類学シリーズ 9)』明石書店(2004年インド洋津波の被災地の支援、復興。人類学を中心に地域研究者、工学者、心理学者なども参加。タイ、スマトラ、アチェなど)

    • 『地域研究』11巻2号(2011年、総特集:災害と地域研究。地域研究と災害をめぐる座談会、インド洋津波についての論文)

    • Susanna M. Hoffman and Anthony Oliver-Smith (eds.) 1998 The Angry Earth: Disaster in Anthropological Perspective.(災害人類学の代表的論集。ある自然/産業災害イベントへの対応と復興、周期的に同様のハザードに襲われる地域の慣習的対応な ど。被災住民に寄り添った視点)

    • Susanna M. Hoffman and Anthony Oliver-Smith (eds.) 2002 Catastrophe & Culture: The Anthropology of Disaster. pp.23-48. Oxford: James Currey.(上の続編。日本語訳もあるが、決して読みやすくない。)

    • Greg Bankoff, Georg Frerks and Dorothea Hilhorst (eds.) 2005 Mapping Vulnerability: Disasters, Development, and People. London: Earthscan Publications.(上の二つと似たトーンの論集だが、特に脆弱性言説、住民コミュニティの脆弱性を低める開発プロジェクトのようなところに焦点 を当てている)

    • Gregory Button (ed.) 2010 Disaster Culture: Knowledge and Uncertainty in the Wake of Human and Environmental Catastrophe. Left Coast Press.(すみません、未読です)

    • Hoffman and Barrios 2020 Disaster upon Disaster, Berghahn. NAPA(The national association for the practice of anthropology)で活躍する人を中心に、人類学者と実務家による論集。国際的な政策史、気候変動、福島について(森本さんのもの)など含む。BerghahnのDisaster in Context シリーズ第2弾。

(3)人類学者のかかわりについて論じたもの

    • 清水展 2003 『噴火のこだま:ピナトゥボ・アエタの被災と新生をめぐる文化・開発・NGO』九州大学出版会。(かつての調査地が被災地になってしまったこと、それに対 してまずは救助・支援に関わり、そのあとでただ語りに耳を傾けることになった、筆者の関わり方について反省的に記述されている)

    • 金谷美和 2008 「 」李仁子ら(編)『はじまりとしてのフィールドワーク』昭和堂。

(4)語りを聞く

    • 清水展 2003『噴火のこだま』(被災者の語りを記録した章が二つ)

    • Oliver-Smith, Anthony 1986 The Martyred City: Death and Rebirth in the Andes. Albuquerque: University of New Mexico Press.(もともとの調査地の復興当事者とともにかかわった筆者による、復興プロセスの再構成)

    • 林春男・重川希志依・田中聡・NHK「阪神・淡路大震災 秘められた決断」制作班 2009 『防災の決め手「災害エスノグラフィー」:阪神・淡路大震災 秘められた決断』NHK出版。(主に行政担当者の奮闘、試行錯誤についてのインタビューが含まれる)

    • 村上春樹 1999『アンダーグラウンド』講談社。(地下鉄サリン事件の被災者のインタビューを再構成したもの。分厚い)

    • 東北の津波に関しては(極めて多数あるのでごく一部)

        • 山口弥一郎 2011 『津波と村』

        • 吉村昭 2004『三陸海岸大津波』文春文庫

        • 山下文男 2011『三陸大津波:歴史の教訓に学ぶ』河出書房新社

        • 野里征彦 2011『罹災の光景:三陸住民震災日記』(本の泉社)など

(5)ボランティア・市民社会論

    • 渥美公秀 2001『ボランティアの知:実践としてのボランティア研究』大阪大学出版会。(ボランティアに関わり、実践のなかで理論化する。エスノグラフィ。)

    • 林春男 2001『率先市民主義:防災ボランティア論講義ノート』晃洋書房。(防災ボランティアがどのようなものかをコンパクトに説明。)

    • 山下祐介/菅磨志保 2002『震災ボランティアの社会学:<ボランティア=NPO>社会の可能性』ミネルヴァ書房。(阪神・淡路大震災でボランティアは実際にどう動いたのか、そこからどう理論化するか。)

    • 菅磨志保ら 2008(編)『災害ボランティア論入門(シリーズ災害と社会5)』弘文堂。(1リスク社会とボランティア2災害ボランティアの論理3災害ボランティア再 考4災害救援活動の展開5情報とつながり6復興支援の現在7「減災サイクル」と新たな価値の創造8災害ボランティアという思想)

(6)記憶と防災教育

    • 岩崎信彦ら(編)2008 『災害と共に生きる文化と教育:「大震災」からの伝言』昭和堂。

    • [記憶・歴史・表現]フォーラム(蘇理剛志さん、寺田匡宏さんら)『Someday, for somebody いつかの、だれかに:阪神大震災・記憶の<分有>のためのミュージアム構想』[記憶・歴史・表現]フォーラム。

    • 「人文・自然景観の開発・保全と文化資源化に関する研究」(『国立歴史民俗博物館研究報告』1561、2010年)所収論文

    • 矢守克也 2009『防災人間科学』東京大学出版会(記憶や教育に関する章が複数)

  • 山名淳・矢野智司編 2017 『災害と厄災の記憶を伝える―教育学は何ができるのか』勁草書房(哲学的な論文もあるが、具体的・実際的な論文も)

(7)復興プロセスに関する事例

    • 清水展 2003 『噴火のこだま』

    • Oliver-Smith 1986 The Martyred City.

    • 『台湾原住民研究』第14号(2010年)(2009年の八八水害についての特集)

    • 市野澤潤平 2010 「危険からリスクへ:インド洋津波後の観光地プーケットにおける在住日本人と風評災害」『国立民族学博物館研究報告』34巻3号

    • 内尾太一 2018『復興と尊厳: 震災後を生きる南三陸町の軌跡』東京大学出版会

    • Adams 2013 Markets of Sorrow, Labors of Faith: New Orleans in the Wake of Katrina, Duke UP.(新自由主義的な復興行政下で痛めつけられる被災者、宗教ベースのボランティアの活動)

    • Simpson 2014 The political biography of an earthquake: Aftermath and amnesia in Gujarat, India(災害後のヒンドゥーナショナリズムの強まり、宗教対立)

(8)東日本大震災・福島第一原発事故に関連して

    • 高倉・滝澤編『無形民俗文化財が被災するということ』

    • 内尾『復興と尊厳』

    • 関谷・高倉編『震災復興の公共人類学』

    • Kimura, A 2016 Radiation Brain Mams and Citizen Scientists: The gender politics of Food Contamination after Fukushima, Duke.(放射脳ママ、市民による線量測定グループなど。ジェンダー、科学、政治、食)

    • Sternsdorff-Cisterna, Nicolas 2019 Food Safety after Fukushima: Scientific Citizenship and the Politics of Risk, Hawai'i (原発後の食や農、ジェンダーの問題。Scientific Citizenshipという概念を出すが。)

(9)災害心理学・精神医学(調査に関わるときに)

    • ビヴァリー・ラファエル 1989『災害の襲うとき:カタストロフィの精神医学』みすず書房。(災害をめぐる心理について包括的に。ショックと余波、接死体験、喪失と悲嘆、立ち退きと再定住、救援車のストレスなど。必ずしも最新ではない。)

    • 中井久夫『1995年1月・神戸』みすず書房。(阪神淡路大震災がどのようなものかを精神科医の目を通して描いた論集。)

(0)国内の災害社会科学

    • 社会学(大矢根淳ら)

        • 大矢根淳ら(編)2007『災害社会学入門(シリーズ災害と社会1)』弘文堂。

            • 1災害社会学の系譜、2 災害と社会的対応の歴史、3災害における生命と心、4災害と情報、5被災生活と生活再建、6新たなリスクに対峙して、7災害社会学の新たな視点・論点

        • 浦野正樹ら(編)2007『復興コミュニティ論入門(シリーズ災害と社会2)』弘文堂。

            • 1被災コミュニティにおける復旧・復興の位相2我が国における被災コミュニティ復興の歴史的展開3震災復興4火山噴火5戦災復興6水害からの復興7大火からの復興

        • アメリカならDisaster Research Center(オハイオ→デラウェア)が有名。QuarantelliやDynesら。組織社会学的。しかし今はそれほど元気がない?

        • むしろ、事例に即して見た方がよいかもしれない。

            • 島原雲仙火山噴火:火山→情報と避難。鈴木広(編)『災害都市の研究:島原市と普賢岳』九州大学出版会など。

            • 阪神・淡路大震災→精神的側面(PTSD、心のケア)、避難所生活、生活の再建(復興住宅におけるコミュニティ、区画整理とまちづくり における住民と行政の合意の難しさ)、ボランティア・市民社会論、記憶の問題、災害弱者(高齢者、障がい者、外国人など)、被災者支援に関わる法制度の整 備、ライフラインの復旧、復興と防災の経済学

                • 岩崎信彦ら(編)1999『阪神・淡路大震災の社会学 第1巻:被災と救援の社会学』昭和堂(I 被災の社会地図 II 救助と避難の実像 III 情報・メディアと被災者の行動 IV ライフラインの緊急対応と復旧作業 V 地域社会とネットワークの震災対応 VI 震災とボランティア VII 理論への歩み)

                • 岩崎信彦ら(編)1999『阪神・淡路大震災の社会学 第2巻:避難生活の社会学』昭和堂(I 避難所の生活と運営 II 家族と震災 III 避難生活の諸相 IV エスニック・コミュニティと被災 V 仮設住宅の生活と構造 VI 地方自治体と被災者 VII 理論への歩み)

                • 岩崎信彦ら(編)1999『阪神・淡路大震災の社会学 第3巻:復興・防災の社会学』昭和堂(I 小都心の復興と市街地再開発事業 II 区画整理事業の復興まちづくり III インナーシティにおける生活再建の展開 IV エスニック・コミュニティと震災復興 V 住宅コミュニティにおける共同性 VI 自主防災のコミュニティづくり VII 理論への歩み)

                • 神戸大学<震災研究会>編1995『大震災100日の軌跡(阪神大震災研究1)』神戸新聞総合出版センター

                • 神戸大学<震災研究会>編1997『苦闘の被災生活(阪神大震災研究2)』神戸新聞総合出版センター

                • 神戸大学<震災研究会>編1997『神戸の復興を求めて(阪神大震災研究3)』神戸新聞総合出版センター

                • 神戸大学<震災研究会>編1999『大震災5年の歳月(阪神大震災研究4)』神戸新聞総合出版センター

            • 中越地震→高齢化する中山間地域と災害、地場産業の復興、行政同士のネットワーク

        • 社会心理学(廣井脩、関谷直也ら)

            • 吉井博明ら(編)2008『災害危機管理論入門(シリーズ災害と社会3)』弘文堂。 (1災害危機管理論とは2地震災害時の危機管理3豪雨災害時の危機管理4火山災害時の危機管理5災害対策本部の初動と応急対応6避難と情報 7災害時公報とマス・メディア対応8生活再建・復興過程と行政9産業被害と企業の災害危機管理戦略10自主防災組織とボランティア11災害危機管理のため の訓練・演習体系と手法)

            • 『災害情報』(日本災害情報学会誌)など

            • 歴史学(北原糸子『地震の社会史』など)

            • 地理学、地域安全学会、日本災害復興学会、災害情報学会等の学会誌も参考に。