学校図書館法の一部「改正」に対する
司書委員会常任委員会見解
2014年10月
2014年10月
2014年6月20日、第186国会において「学校図書館法の一部を改正する法律案」が参議院本会議にて全会一致で可決し、成立しました。
私たち京都府立高等学校教職員組合学校職員部司書委員会は、すべての学校に学校図書館の専門職員が専任・正規で配置され豊かな学校図書館活動が展開されることを願って、「学校司書」の法制化を求めて長年運動してきました。その立場から、今回の学校図書館法一部「改正」について下記のように意見を表明します。
(1)「改正」第六条について
①.長年学校図書館の円滑な運営や発展等に寄与しながらも、これまで法文には一切現れてこなかった「学校司書」という職名が、「専ら学校図書館の職務」に就いている職員として初めて法に規定された点は、喜ばしいこととして評価できます。
②.職務内容として、「学校図書館の運営の改善及び向上を図り、児童又は生徒及び教員による学校図書館の利用の一層の促進に資するため」と規定されたことについては、学校司書が学校図書館の運営に欠かせない存在として認識されていると考えられ、これも評価できます。
③.しかし、「置くよう努めなければならない。」という努力義務的表現では、実際に各自治体において配置促進の手掛かりになるかどうかは疑わしいと考えます。現在学校司書の職制を確立している先行自治体の施策からは後退する表現であり、配置基準の切り下げにつながりかねないと危惧します。
④.学校司書の資格要件について、なんら言及されていません。附則に明記されたように、学校司書の仕事には専門的な知識が不可欠です。六条第二項においても学校司書の資質の向上と、それを図るための研修の必要性について述べられています。学校司書に必要な資格・免許制度等について早急に検討するとともに、当面は現行制度上の資格(「司書」等の国家資格)で代用して専門性を担保することが必要だと考えます。
⑤.現在、小・中学校で、常勤の学校司書を配置しているのは全体の約1割程度に過ぎません。高校でも年々正規の学校司書、専任の学校司書が減っています。不安定な身分や、兼務、短時間勤務などの障壁にも関わらず、より良い学校図書館のために、児童生徒や教員の求めに応じるために、多くの学校司書が献身的に働いています。このような学校司書が安んじて職に就き、キャリアに裏打ちされた教育実践を深めることが学校図書館の利用促進にとって重要で、ひいてはより良い学校教育につながります。④で述べた専門性の担保とともに、③で述べた定数化は欠かせません。少なくとも一校専任で学校図書館の仕事に専念できることが必要であり、短期間で替わるのではなく長期的視野に立って仕事ができる雇用であることが必要です。教職員定数法等の関係法規にも学校司書の定数を明記することが必要です。
⑥.上記①②で評価した点についても、私たちが日ごろ行っている職務内容から考えれば「従事する」という表現が適当とは考えておりません。学校図書館法が成立し、「司書教諭」という制度が創設されたころに比べると、学校では教科の授業や学級担任を担当する教諭以外の、専門的職種を活用する例が増えてきました。たとえば「栄養教諭」の創設などがその好例として挙げられます。日本の教諭が多忙を極めていることは、国際的な調査によっても明らかになっており、専門的職務は専門的職員へ移行すべきであると考えます。「学校図書館の専門的職務を掌」る職も、教諭に校務分掌として充てられる職から、生涯にわたって学校図書館の仕事を専門的に行う職種へ、名実ともに転換すべきであると考えます。当然、職制度や資格要件のあり方も「学校図書館の専門的職務を掌」るにふさわしいものとされるべきです。
⑦.④と関連しますが、六条第二項において、国や地方自治体に学校司書の資質の向上とそのための研修等を「努める」という表現ながらも課したことは、学校司書の専門性を明示したものと解され、評価できます。ただし、これも努力義務としての表現であり、実効性に疑義があります。
(2)附則について
①.附則第二項において、学校司書の資格や養成の在り方を「施行後速やかに」検討し、必要な措置を講じるとされています。そのこと自体は、不十分な条文を施行後も補っていくものとして期待が持てます。しかし、年限が区切られておらず、以前の附則同様長年にわたって放置されることを危惧します。
(3)その他
①.このたびの「改正」法成立時、衆参両議院とも、それぞれの委員会審議の中で附帯決議が採択されました。いずれも学校司書の配置や資格要件、勤務条件等に付いて政府及び地方公共団体に配慮や検討を求めています。特に学校司書に関して述べられている箇所は、本来条文に盛り込まれてしかるべき内容をふくんでいます。実際の運用や将来の再改正に生かされることを望みます。
②.上記(1)の⑥に関連して、「司書教諭」についても規定の見直しが必要だと考えます。
参照●「学校図書館法の一部を改正する法律」●
学校図書館法の一部を改正する法律
学校図書館法(昭和二十八年法律第百八十五号)の一部を次のように改正する。
第七条中「国は」の下に「、第六条第二項に規定するもののほか」を加え、「左の」を「次の」に改め、同条第三号中「前各号」を「前二号」に、「外」を「ほか」に改め、同条を第八条とする。
第六条を第七条とし、第五条の次に次の一条を加える。
(学校司書)
第六条 学校には、前条第一項の司書教諭のほか、学校図書館の運営の改善及び向上を図り、児童又は生徒及び教員による学校図書館の利用の一層の促進に資するため、専ら学校図書館の職務に従事する職員 (次項において「学校司書」という。)を置くよう努めなければならない。
2 国及び地方公共団体は、学校司書の資質の向上を図るため、研修の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、平成二十七年四月一日から施行する。
(検討)
2 国は、学校司書(この法律による改正後の学校図書館法(以下この項において「新法」という。)第六条第一項に規定する学校司書をいう。以下この項において同じ。)の職務の内容が専門的知識及び技能を必要とするものであることに鑑み、この法律の施行後速やかに、新法の施行の状況等を勘案し、学校司書としての資格の在り方、その養成の在り方等について検討を行い、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
参照●「学校図書館法の一部を改正する法律」に対する附帯決議
平成二十六年六月十九日
参議院文教科学委員会
http://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/ketsugi/186/f068_061902.pdf
第186回国会 文部科学委員会 第23号(平成26年6月11日(水曜日))
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009618620140611023.htm#r=s&r=s