◎京都府の「学校図書館司書」発足小史◎
京都府立高校には、1953年の「学校図書館法」制定以前から学校図書館が設置され職員の配置があった学校もありました。
このころの京都府立高校図書館の職員はまだ専任・専門の司書ではありませんでした。
「実習助手」や吏員の事務職員・吏員でない事務員・団体費職員(PTA雇用)など、さまざまな立場の職員が学校図書館の職務を担っていました。身分的にも経済的にも不安定であったり、職務内容も不明確、校務分掌の中で図書館担当以外の職務との往来もありました。司書の資格所持も問われていませんでした。
けれども学校図書館の仕事は複雑多岐にわたり、専門的な知識が要求されます。
自分で『日本十進分類法新訂7版』の分厚い本を1ページ目から読み進めた人もいました。1958年から1960年にかけては京都府立高等学校図書館協議会で独自の実務講習も開催されました。
・1961年、自分たちの仕事には専門的知識が必要だという自覚のもと、司書・司書補資格取得のための講習を受けようという呼びかけがなされ、順次受講者が増えていきました。長期間に亘る自費での受講でしたが、当初1割程度だった「司書」「司書補」「司書教諭」の有資格者率は、1970年には7割以上に増え、それに従い「学校司書」(当時の呼称)としての身分確立要求が強くなっていきました。
・同じころ府立高教組雇用人部(現在の学校職員部)では、学校司書を含む全職員の身分保障運動を進めていました。「①低賃金の『事務員』等を廃し、全員正規の吏員として任用せよ。②団体費雇用をやめ正職員にせよ。③学校司書を京都府独自に教育職として制度化せよ。④『実習助手』を充実せよ」という4つの要求を掲げて闘いました。
・そういう大きな運動の中で、 1971年9月学校図書館司書制度が実現 しました。教育職二等級(当時の「教諭」の職)への格付けを強く要望していましたが、高校定数法とのかかわりで実現せず、行政職賃金適用となりました。教育に深く関わり、直接生徒の指導に携わる職務内容であることは当時の府教委も承知していました。組合側も「学校図書館司書」という専門的な職名の実現のため苦渋の決断をしたということです。制度発足当時、教育職である「実習助手」からも「学校図書館司書」に任用替えされた人たちがありました。そのなかには、賃金が下がるのを覚悟で学校図書館司書としての仕事を続ける選択をした人もありました。
・「学校図書館司書」という職名が当時の「学事通則」に規定されたことと、1975年に「学校図書館司書」の独自採用試験が開始されたことは、全国的に見ても京都が先駆けで、画期的なことでした。
・その後、全校配置要求運動の結果、1979年度から順次、京都市内の定時制や6クラス以上の分校・盲学校高等部へも「学校図書館司書」の配置が実現しました。
・独自採用試験発足当初、受験資格は18歳から24歳、司書・司書補・司書教諭の有資格者でしたが、司書委員会からの要望により1983年度以降資格要件から司書補が削られ20歳以上となり、数年後には上限年齢も25歳に引き上げられました。更なる年齢制限の引き上げを長年要望してきましたが、2021年度実施の採用試験より35歳までと、大幅に引き上げられました。これは長年の運動の成果といえます。引き続き教員採用試験と同程度の引き上げを重要課題として運動していきたいと思っています。
・2014年、「学校図書館法の一部を改正する法律」が成立しました。6月20日、衆参両院とも全会一致で可決されました(2014年6月27日公布、2015年4月1日施行)。長年学校図書館の円滑な運営や発展等に寄与しながらも、これまで法文には一切なかった「学校司書」という職名が、「専ら学校図書館の職務」を行う職員として初めて法に規定された点は、非常に喜ばしいことですが長年運動し要求していた法制化運動から見れば、この「改正」法には大きな不備があります。一つは「学校司書」が必置の職員となっていないこと。二つ目は「学校司書」の資格要件について何ら言及されていないこと。専門性の担保が可能なのか、また一つ目の問題と合わせて、現在の配置条件が切り下げられないかという憂慮が生じます。この2点を含む問題点については、国会審議でも衆参両院で附帯決議が採択され、学校司書の配置や資格要件、勤務条件等について政府及び地方公共団体に検討を求めています。さらに全教学校司書部はもとより、日本図書館協会・学校図書館問題研究会・学校図書館を考える全国連絡会などの学校図書館・図書館関係の団体が見解や要望書などを出しています。司書委員会も当サイト上で見解を発表しました。
・現在は、学校図書館法に学校司書を「おかなければならない職、学校図書館の専門的職務を掌る職」として位置づけるとともに、学校教育法や標準法など関係法規にも位置付け、すべての学校図書館に専任・専門・正規の「学校司書」を配置させるための全国的な運動を進めています。一方、京都府に対しては、府独自の制度である現行の「学校図書館司書」を教育職2級に格付けすることを引き続き求めています。