2022年度 JKA補助事業

2022年度 安全で安価な「飲む体温計」および受信システムの開発補助事業

 

事業概要:胃酸発電で充電する「飲む体温計」の実用化を目指し、量産技術の開発を行う。具体的には、具体的には、「飲む体温計」の生産技術を開発する。特に、高い生産性で電子部品部を樹脂封止する技術や、実装の容易な胃酸電池電極材料を開発する。また、飲み込んだセンサからのデータを信頼性よく受信でき、かつ容易に携帯できる受信システムを開発する。

 

成果の紹介:

①胃酸電池用ペースト電極の開発

上記の「飲む体温計」のための胃酸電池用ペーストの開発に取り組んだ。これまでは、切断したMg板を、負極として導電性接着剤を用いて貼り付けているが、機械による自動化は容易ではない。そこで、良好な導電性と発電性を持つMgペーストの開発を試みた。これを用いれば、デバイスの指定の箇所にニードルディスペンサを用いてペーストを塗布して、胃酸電池電極の実装できるようになる(図1)。

本事業では、Mgペーストは、市販の導電性カーボンペーストとMg粉末を,任意の割合で混合して作成した。次に,これらを負極,Pt板を正極として用いて,人工胃液に浸漬することで発電性能を評価した。その結果、従来の純Mg板電極に対して約50%の電力を得られた。また、Mgペースト電極の出力電圧は,約2時間にわたり1.5 V以上が確保されていた。デバイスへの充電には10分程度で完了することから、実用上、十分な発電継続時間を確保できたことが示された。最後に、Mgペースト電極を実際の小型実装デバイスに塗布し、デバイスを試作した(図2)。そして、人工胃液に浸漬する動作試験を行うことで、本電極ペーストの有用性を実証した。

受信器の関する研究開発

①受信システムの開発と特性評価

本事業では、回路基板や電子部品を最適化し、スマフォサイズの受信器を試作した(図3(a))。これとループアンテナを接続することで、アンテナにて受信した信号をデジタル処理し、マイコンのメモリに保存される仕組みとなっている。通信信頼性を高めるために、誤り訂正符号技術も盛り込んだ。電源は、モバイルバッテリをUSBケーブルで接続される。次に、この受信システムの測定距離の定量評価実験を行った。その結果、デバイスのコイルアンテナに対して受信アンテナが対向している場合、距離50cm以上の通信が可能であることを確認した。したがって、ユーザーの携帯した受信器には問題なく通信できると思われる。

さらに、イヌを用いた動物実験での実証を視野にいれ、イヌ用のウェラブル受信システムを試作した(図3(b))。これは、市販のイヌ用ジャケットに、導電性の繊維を縫い付けることでアンテナが搭載される。また、飲み込みセンサから発信される磁場変調信号を漏れなく受信するために、3軸方向に受信感度を持つようにアンテナをレイアウトした。

以上の成果は、このセンサシステムの実用化への大きな一歩となりうる。

本研究は、公益財団法人JKA 2022年度補助事業のご支援を受けて実施されました。