大型有孔虫とは?

What's larger foraminifera?

大きな有孔虫=大型有孔虫

大型有孔虫とは、原生生物有孔虫類の中で殻の直径が大きい有孔虫の総称です。分類学上の定義とは無関係です。代表的な化石としては、フズリナ、オルビトリナ、ヌムリテス(貨幣石)、レピドシクリナ、ミオジプシナがあります。現生種では、ホシスナ、ゼニイシ、サイクロクリペウスなどが知られています。

写真:生きているサイクロクリペウス(下の方眼は1cm間隔)

写真:礫に付着するタイヨウノスナ(左)とホシスナ(右)

地球史を通じて低緯度浅海域に棲息

地質時代から現在にかけての低緯度浅海域(サンゴ礁海域)に分布し、進化・繁栄・絶滅を繰り返してきました。現在のサンゴ礁海域では、光が届く水深100 m付近まで分布しており、属や種によって水深分布範囲が異なります。特に西太平洋海域に多くの種が棲息しています。サンゴ礁の海藻や礫の表面に多く棲んでいます。

形態進化の証拠:巨大化&複雑化

大型有孔虫は、生存期間を通じて殻の形態が大型化かつ複雑化していきました。直径10 cm以上の個体もおり、100年以上生きていたと推測されています。恐らくゆっくりと大きく成長していました。この巨大化と複雑化には藻類との共生が関わっていると考えられています。

写真:生きているヘテロステジナ(大きさは約2 cm)

写真:Soritesの細胞内に共生する渦鞭毛藻

共進化:微細藻との細胞内共生

生きている大型有孔虫の細胞内には微細藻が共生しています。紅藻・緑藻・渦鞭毛藻・珪藻など、分類群によって異なる系統の微細藻と共生しています。地質時代の大型有孔虫も微細藻と共生していたと考えられています。有孔虫は微細藻と共生することで、光合成産物と酸素の供給、栄養塩類の吸収、石灰化の促進といった利益を受けています。微細藻との共生は、透明度が高く、貧栄養環境のサンゴ礁海域で有利な戦略と考えられています。

サンゴ礁海域の示相化石・示準化石

サンゴ礁海域で形成される石灰岩には大型有孔虫化石が多く産出します。この大型有孔虫化石は地質時代や棲息環境によって種組成や形態が異なるため、大型有孔虫化石を調べることで石灰岩の形成年代や堆積環境を推定することができます。また、主に炭酸カルシウムからなる殻には、過去の水温・塩分・pH・光量などの古海洋情報が記録されています。

写真:琉球層群の石灰岩薄片中の大型有孔虫化石