P-CoRIEプロジェクト(SATREPS)について

JST/JICA 地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)

2012年採択 2013年4月~2018年3月実施

サンゴ礁島嶼生態系の持続的維持管理のためのプロジェクト: 気候変動による危機とその対策

通称:P-CoRIE(Palau-COral Reef Island Ecosystem) プロジェクト

プロジェクトP-CoRIEの背景

世界のサンゴ礁域の面積は海洋全体の1%にも満たないが、そこでは浅海域の生物種の35%以上、全海水魚類の約25%が生息しているとされている。またサンゴ礁は、水産資源の供給、観光・レクリエーション場所の提供、沿岸域における防災機能など、様々な「生態系サービス」を有している。パラオは世界的にも多くの造礁サンゴ種が生息する「コーラル・トライアングル」の一角でもあり、豊かな沿岸生態系を有し、世界有数の海洋生物多様性を誇る。

パラオ政府は豊かな自然環境を利用した観光開発を経済的発展の主軸として位置づけており、その大部分はサンゴ礁に依存していることから、国策としてサンゴ礁生態系を保全することが重要な課題となっている。しかし、近年では天然林の農地への転換、破壊的な漁法、乱獲、バベルダオブ島への首都移転に伴う土地開発・観光利用の増加などに加え、海水温上昇・海洋酸性化など全地球規模の気候変動の影響による、サンゴ礁生態系への負の影響が強く懸念されている。また、既にパラオ国では、1998年・2010年に水温の異常上昇に伴うと考えられるサンゴの大規模白化が報告されるなど、サンゴ礁生態系への気候変動影響が近年顕在化してきている。

*環境保全分野の具体的政策として、同国では伝統的に各州が設定していた 海洋保護区を国が管理支援するシステムの構築を目的とした「保護区ネットワーク(Protected Areas Network、以下、「PAN」)」法が 2003 年に制定され、全国規模での保護区指定が開始されています。

*さらに、PAN のミクロネシア地域への拡大を目的として、ミクロネシア・チャレンジ(MC)がパラオ政府により提唱され、ミクロネシ ア連邦、マーシャル諸島共和国、米領グアム、北マリアナ諸島と共に 2006 年に共同政策宣言文書として採択されている。MCでは、陸域の30%、沿岸域の20%以上を2020年までに保護区指定することをうたっており、現在その保護区指定についての科学的な裏付けとともに、戦略的な保護のための知見が必要とされています。

*2012年には同国の200~300の島々からなるロックアイランドが世界遺産に登録され、同国のサンゴ礁生態系保全の重要性が国際的に認識されています。

プロジェクトP-CoRIEの目的

P-CoRIEでは、パラオ国全域を対象としながら、自然科学に加え社会科学の視点からサンゴ礁島嶼生態系を把握・分析し、その結果を統合することによりパラオ国の同生態系の 保全に係る政策の立案・実施に寄与する事を目的としている。また、同生態系に関する研究活動を通して、パラオにおける人材養成と保全に対する住民および事業主等のステークホルダーへの理解を促進することにより、研究遂行能力及び保全管理能力の強化を図り、パラオ国の同生態系管理に必要な能力の強化を図る事を目指している。

これまでのプロジェクト P-CoRIEの活動概要

2012(H24)年

6月 プロジェクトの条件付き採択決定

2013(H25)年: 立ち上げ

3月Dr. Yimnnang Golbuuが来日 琉球大学とパラオサンゴ礁センター(PICRC)のMoU締結

琉球大学メンバーがパラオにてパラオ短期大学(PCC)学長のDr.Patrick TelleiとMoU締結

4月 プロジェクト正式スタート

6月 Dr. Yimnnang Golbuuが来日

7月 Dr. Seiji Nakaya が PICRCにて現地調整員として勤務開始

Dr. Yuen YeongShyan, Dr. Julien LorionがPICRCにて研究開始

9月 Dr. Takashi KawaiがPICRCにて研究開始

第一回全体調整会議(JCC1)をPICRCで開催 (写真)

10月 Mr. Victor Nestor (PICRC)が琉球大学博士前期課程に入学

2014(H26)年:研究体制確立と基盤づくり

1月~実験装置・データロガー等の供与機材運用を開始・定点モニタリングサイト決定(13か所)

3月 PCCにおいて、政府・NPO/NGO関係者らを交えたシンポジウム開催

6月~ 現地でのPCC学生のインターン指導を開始・ PICRCの職員らが国際学会で発表

11月 パラオ政府関係者を交えたシンポジウム開催・職員2名の本邦研修

2015(H27)年:研究本格化

1月 国内向けシンポジウムを開催(沖縄)

3月~5月 PAN(保護区ネットワーク)事務局との会合にて政策案「Nationwide Strategic Management Plan」についてプロジェクトが情報提供を進めることを確認

12月 2016年開催予定の国際サンゴ礁学会での共同セッションが承認

2016(H28)年: 成果展開・トレーニングへの還元

4月 センター職員の修士課程への受け入れ開始予定(Evelyn Otto)

6月 国際サンゴ礁学会での共同セッション開催

9月 第四回全体調整会議をPICRCで開催

2017(H29)年:一般・行政への提案

3月 グリーンフィンワークショップをパラオで開催

7月 パラオ上下院議員らにプロジェクト成果説明と政策提案を実施

9月 第五回全体調整会議をPICRCで開催

12月 自然科学系の科学的知見に基づいた政策提言をシンポジウムで発表・同時にパラオ語翻訳のラジオ放送で発表

パラオの自然ガイドブックの出版および全公立高校・短期大学のクラスへ教材として寄贈

2018(H30)年:パラオ各州・政府機関への政策提案

2月シンポジウムで政策提言案をPICRCと提案

テクニカルレポートを含む政策提案パッケージを関係各州と政府機関に提出

主要な活動コンポーネント

(1)「環境変動」 (気候変動および人為活動に伴う環境変動によるサンゴ礁生態系への影響評価)

(2)「生物変動」 (島嶼におけるサンゴ群集を中心とした海洋生物のモニタリングによる評価)

(3)「生物多様性」 (生物多様性についての分析およびコネクティビティー解析用の指標生物抽出)

(4)「サンゴ礁島嶼生態系サービス」 (サンゴ礁島嶼生態系の社会科学的評価)

(5)「人材育成」(保護区ネットワークの能力強化)と「普及啓発」 (パラオの自然に関する意識啓発)

(6)タスクフォース活動

プロジェクトP-CoRIEの調査場所

パラオにおけるサンゴ群集調査地点(永久方形区&測線調査):

サンゴ群集調査用の永久方形区設置の様子(2014年に設置)

永久方形区調査の様子(左)と、

サイトの一つであるNgerdiluches-外洋側サイトのサンゴ群集の写真

プロジェクトP-CoRIE 活動状況

現在の活動紹介(Facebookページ)へのリンクはこちら

P-CoRIEについての記事 MUNDI (国際協力ジャーナル)はこちら

写真 パラオ短期大学構内に整備された、国内初の遺伝子実験施設(2017年3月撮影)

プロジェクトP-CoRIEの将来

1)数十年後のパラオのために

本プロジェクトの成果が、パラオにおけるサンゴ礁島嶼生態系の維持管理に係る政策の立案・実施に活用される事を目指す。

2)P-CoRIE 実施期間中の目標

パラオにおけるサンゴ礁島嶼生態系についての研究能力および持続的な維持管理能力の強化。

関連資料: 成果目標シート(2016年版)