頸城野郷土資料室

学術研究部研究紀要

お詫び

Googleサイトの更新にともなうトラブルを解決できておりません。そのため公開された論考は、このサイトと連携しているJ-Stage上でご覧いただくことになります。ただ一部の論考はこちらのサイトとのリンク作業が進行中です。

なお当紀要の投稿規定は別ページ、当法人の定款や学術研究部の規則等についてはこのページの下のほうにあるリンクからご参照ください。

『頸城野郷土資料室学術研究部 研究紀要』創刊にあたって

NPO法人頸城野郷土資料室理事長 石塚正英

学術研究部研究紀要編集委員会委員長 真野俊和

編集委員会連絡先 kubikinokyodo@gmail.com

NPO法人頸城野郷土資料室(Kubikino Folk-Archive)は、頸城野(新潟県上越地方)という一地域において、後継者を失いつつある民俗文化、遺失や損壊の著しい郷土の文化財を保護し、それらに関する基礎資料・研究資料を収集し整理しています。そして、「文化における地域主権」を実現することをモデル事業として内外に提案しています。

例えば絶滅危惧種のトキを佐渡で繁殖させるためには、トキの餌となるドジョウなどの生物が育つ自然や田園を回復しなければなりません。それと同様に、地域の経済や文化を保存し発展させるためには、中央でなく地域に立ってそこから全国・全世界を眺め見極めるという大望をいだく郷土社会を育てる必要があるのです。地域文化の普及は、地域文化を担う人間関係の創出を伴います。基点である地域が豊かになれば、きっと結節点である中央も豊かになることでしょう。郷土学は普遍(グローバル)と個別(ローカル)を包含するもの(グローカル)でなければなりません。本 NPOは、頸城野という括りでなく、リモートの利点を活かし、技芸・民俗・生活の研究を極めたい人との邂逅を各地に求めます。Think globally, act locally, and communicate glocally !

さて、本 NPOはこれまで、大きく三つの分野で活動を続けてきました。一つは頸城地方の文化や文化財に関する掘り起こしと啓蒙、二つ目は各種の地域おこし活動団体との協同、そして三つ目が「くびき野カレッジ天地びと」と称する市民講座の開催、です。私たちの活動期間もすでに 10 年以上におよび、その間に出版物をはじめとするさまざまな成果を世に送り出し、郷土の文化育成に貢献してきました。

実をいうと当資料室には、それに加えて「学術研究部」という部局もあります。このたびこの部局が本格的な活動を始めることになりました。『頸城野郷土資料室学術研究部 研究紀要』と題する学術機関誌の刊行です。もちろん学術的な目的のために機関誌を発行してきた地方の研究団体は、これまでにも現在でも全国に数多くあります。けれども当学術研究部の紀要と、それを通した学術研究部の活動は、以下にあげる点で大きな特色を持ち、きわめて高い水準を目指すものとなります。

  1. 当郷土資料室の名称に「頸城野」という新潟県南西部をさす地域名が冠せられるからといって、研究の内容は決して狭く頸城野には限られません。広く人文・社会・自然事象全般に属するテーマを包含するものになります。その点は、従来の「くびき野カレッジ天地びと」の講義内容が、必ずしも頸城地方に関するものに限られなかったのと同様です。

  2. 一般に学術研究の成果公開は、雑誌や書籍など紙への印刷物を通すのが普通です。しかし本紀要はインターネットを通した公開方法に限定します。この点については、印刷、製本、送付などの経費を大幅に節減できるというほかに、次のようにきわめて大きな利点があることを考慮したためです。第一に紙媒体で作成できる部数はせいぜい数百部にとどまるでしょうが、インターネットを通せばほぼ無限といって差し支えありません。また紙媒体の送付範囲がほとんど日本国内にとどまるのに対し、インターネットならば、読者が日本語を解する限り、地球規模への発信が可能になります。

  3. 第二に、電子ファイルによって論考を作成する場合、容易に修正や練り上げが可能になります。もちろん研究論文の場合、一度発表してしまったものはそこで確定させなければなりません。しかし本紀要には事後の推敲・再発表を容認する、ディスカッションペーパーという種別をもうけます。つまりディスカッションペーパーの執筆を通して、私たちは自らの学術能力を高めることができるようになるのです。

インターネット公開に特化した学術誌の刊行は、世界を見渡してもごくわずかでしょう。加えて、ほとんど公開実績を持たない私たちのような地方の民間団体が、研究機構として社会的な認知を受けることにも、多大な努力と長い時間を必要とするでしょう。それでも私たちは、世界でほとんど例のなかった試みに挑みます。

その目的を果たすべく、本紀要はJ-Stage(JST=国立研究開発法人科学技術振興機構が構築・運営している科学技術情報発信・流通総合システム)と連携しております。

2016年4月1日