RESEARCH

①原子間力顕微鏡

原子間力顕微鏡(AFM)は、原子レベルで鋭く尖った針(探針)で試料表面をなぞって表面の構造(凹凸)を可視化する顕微鏡です。

探針を試料表面に近づけると、探針と試料表面の間に「力」が働きます。この力を検出し、力の大きさが常に一定となるように探針-試料間距離を制御することで、表面の構造を画像化します

周波数変調AFM(FM-AFM)はカンチレバー板ばね)を共振周波数で振動させながら、カンチレバーの先端に取り付けられた探針試料表面の間に働く力を、カンチレバーの共振周波数の変化として高感度に検出する方法です。

FM-AFMは、表面構造を単一原子・分子レベルの空間分解能で観察することができます。我々のグループでは,液中での観察をメインに取り組んでおり、以下のような固液界面現象のメカニズムを原子・分子レベルで調べています。

また、独自の研究を行うためにFM-AFM装置開発(ハード、ソフト)や計測技術(電子状態、電位分布、粘弾性計測など)にも取り組んでいます。

②FM-AFMによる固液界面現象の原子スケール計測

固体と液体が接する固液界面では、様々な物理・化学現象が起こっています。我々のグループでは、以下のような固液界面現象における表面・界面の構造を原子スケールで調べています。

(1)結晶成長

結晶は我々の生活に必要不可欠な材料です。よりよい結晶を作るためには結晶がどのようにして成長しているのかを知る必要があります。結晶は溶液中の原子やイオンが結晶に取り込まれることで成長しますが、その様子を液中FM-AFMを用いて原子レベルで捉え、結晶成長のメカニズムを理解することを目指しています。

(2)電気化学反応

電極-電解液界面では、産業的に重要な様々な電気化学反応が見られます。電気化学反応のプロセスを1原子レベルで観察し、そのメカニズムを明らかにすることで、新型電池や触媒、腐食しにくい材料の開発に役立つ知見を得ることができる。

(3)生体分子の構造・機能

生物は多種多様な生体分子で構成されており、それぞれがそれぞれの役割を果たすことで、様々な機能が発現します。がんの転移抑制する物質による細胞膜の硬化メカニズムやコラーゲンの構造に興味を持っています。

学生の研究テーマ(卒業・修了時)

2023年度(令和5年度)

(M) 液中原子間力顕微鏡の多機能化に関する研究

(B) 液中AFM/STM同時計測が可能な走査型プローブ顕微鏡の試作

(B) AFM探針の3次元走査システムの試作

(B) 周波数変調AFMによる大気中高分解能観察のための動作パラメータ最適化手法の検討

(B) 原子間力顕微鏡によるゼオライトの液中高分解能観察条件の検討

(B) 電気化学原子間力顕微鏡の試作とそれを用いた電析の初期形成過程の観察

(B) 液中FM-AFMにおける加熱冷却システムを用いた温度制御可能試料ホルダの開発

2022年度(令和4年度)

(M) 水平力を検出可能な周波数変調AFMによる表界面の液中原子スケー ル計測に関する研究

(B) AFMカンチレバーを垂直・ねじれ方向に同時共振させる光熱励振システムの開発

(B) 垂直力・水平力同時検出可能な液中AFMにおける空間分解能の振幅依存性に関する研究

(B) 液中AFM/STM同時計測のための力/トンネル電流検出センサの開発

2021年度(令和3年度)

(B) 周波数変調原子間力顕微鏡による配位水の可視化検証

2020年度(令和2年度)

(M) 液中AFMによる金属酸化物半導体の電気的極性面の安定化機構に関する研究

(B) 垂直力と水平力の同時検出が可能な原子間力顕微鏡による水和構造の原子スケール計測

2019年度(令和元年度)

(M) 固液界面での結晶成長プロセスの理解に向けた結晶表面・水和構造の原子分解能観察

(B) 原子間力顕微鏡を用いた有機非線形光学結晶の水和・溶媒和構造に関する研究

(B) ナノサイズの空孔を有する2次元ナノシート構造の液中高分解能観察

2018年度(平成30年度)

(M) 原子間力顕微鏡による細胞硬化現象のナノ・マイクロ計測

(B) 液中電位分布計測のための絶縁コートAFM探針の作製と評価

(B) 表面粗さが白金電極上の水素ナノバブルに与える影響

2017年度(平成29年度)

(M) 原子間力顕微鏡を用いた白金電極/電解液界面の水和層および水素ナノバブルの構造に関する研究

(B) 液中周波数変調原子間力顕微鏡によるグリシン結晶の表面・界面の原子スケール計測

(B) 液中FM-AFMによるコラーゲンの三重らせん構造の分子分解能計測

2016年度(平成28年度)

(B) 液中原子間力顕微鏡を用いた脂質膜の分子構造と力学特性の評価

(B) 新規AFMフォースカーブ解析による細胞弾性率の変形量依存性の評価

2015年度(平成27年度)

(M) 電極電位が非イオン性界面活性剤の自己組織化構造に与える影響に関する研究

(B) 液中原子分解能AFM/STM同時計測に向けた力/トンネル電流検出器の開発