研究紹介
研究テーマ
↓名工大テクノフェア2021で研究紹介しています↓
https://technofair.web.nitech.ac.jp/seeds/seeds-309/
動物やヒトは,身体・環境・神経の相互作用によって生み出される自然な運動を活用することで,巧みで効率の良い運動を行っていると考えられます.
近年はヒト型ロボットや4脚ロボットの開発が盛んに行われていますが,その多くは制御工学やロボット工学の応用例として,ロボットの身体が持つダイナミクスや外乱の影響をキャンセルしたうえで,目的の動作を達成させるものが多い印象を受けます.
これに対して本研究では,ヒトや動物がどのような力学原理を通じて運動を達成しているかを理解することで,次世代の脚ロボットを設計する理論の構築と,ロボットを用いた検証を行っています.
動物たちが長い時間をかけて獲得してきた運動を理解することを通じて,進化の過程を解き明かし,最終的には動物の進化を先取りした究極の運動をロボットで実現することを目指します.
研究成果はロボット工学の発展だけでなく,ヒトや動物の運動理解を通じて,広い分野にインパクトを与えると期待しています.
チーターの高速走行と4脚ロボット
チーターは地上で最も高速に走ることができる動物であり,走行時には脚を動かすだけでなく,体幹を大きく曲げ伸ばしします.高速走行とエネルギー効率はトレードオフの関係にありますが,生物は体幹運動をうまく活用してこれらを同時に最適化していると予想されています.
本研究では,4足動物の身体を,運動にとって重要だと予想される要素だけを抜き出したシンプルなモデルに落とし込みます.現在は主に,上記の体幹曲げが高速走行に与える影響に着目しています.数理解析とシミュレーションによって,チーターが高速走行を実現するしくみを解き明かします.
また,ロボットを用いて解析の結果を実験的に検証し,高い運動性能を実現するロボットの開発にも取り組んでいます.
主な論文・研究発表
Tomoya Kamimura, Shinya Aoi, Kazuo Tsuchiya, and Fumitoshi Matsuno, "Body flexibility effects on foot loading in quadruped bounding based on a simple analytical model", IEEE Robotics and Automation Letters, Vol. 3, No. 4, pp. 2830―2837, 2018.
Tomoya Kamimura, Shinya Aoi, Yasuo Higurashi, Naomi Wada, Kazuo Tsuchiya, and Fumitoshi Matsuno, "Dynamical determinants enabling two different types of flight in cheetah gallop to enhance speed through spine movement," Scientific Reports, Vol. 11, 9631, 2021.
Tomoya Kamimura, Kaho Sato, Shinya Aoi, Yasuo Higurashi, Naomi Wada, Kazuo Tsuchiya, Akihito Sano, and Fumitoshi Matsuno, "Three characteristics of cheetah galloping improve running performance through spinal movement: a modeling study", Frontiers in Bioengineering and Biotechnology, Vol. 10, 825638, 2022.
2足ロボットの歩行・走行と体幹運動
受動的な力学に基づいてヒトのような2足歩行・走行運動を実現するロボットを開発しています.
ヒトの運動も,他の動物に漏れることなく,力学的な作用によって自然に生み出される運動だと考えられます.例えば,受動歩行はモーターやセンサーを用いることなく坂を下るだけで実現される歩行の一種です.ヒトの運動は受動歩行のメカニズムを効果的に用いていると考えています.
本研究では,力学的な視点から脚のダイナミクスのみならず,上半身の運動も含めてどのようにして歩行・走行運動が達成されているかを解析します.特に上半身に設けられ,受動的に動く揺動質量がどのように運動に影響するのかに着目しています.揺動質量は腕や内臓の運動を表します.
主な論文・研究発表
Tomoya Kamimura, Koudai Sato, Daiki Murayama, Nanako Kawase, and Akihito Sano, “Dynamical effect of elastically supported wobbling mass on biped running,” in Proc. IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems 2021 (IROS 2021), Prague (Online), Sep., 2021.
Tomoya Kamimura, Akihito Sano, "Effect of the dynamics of a horizontally wobbling mass on biped walking performance," preprint, arXiv:2209.14515 [cs.RO], 2022.
競争的研究資金
科研費:特別研究員奨励費「チーターの高速走行を可能にする力学条件の解明とその応用」(18J10682) 2018/04/25–2020/03/31,2,100千円(直接経費:2,100千円)https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18J10682/
科研費:研究活動スタート支援「四足動物の2種類のギャロップ歩容を形成する力学原理の数理的解明」(20K22392) 2020/09/11 – 2022/03/31 ,2,860千円 (直接経費: 2,200千円,間接経費: 660千円) https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-20K22392/
科研費:若手研究「四足動物の2種類のギャロップ歩容の異なる力学構造を生み出す原理の解明」(21K14104) 2021/04/01 – 2024/03/31,4,680千円(直接経費: 3,600千円,間接経費: 1,080千円) https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-21K14104/
第39回 日東学術振興財団助成金:「4足動物の非対称な体幹曲げ剛性が走行パフォーマンスを改善する動力学メカニズムの解明」,1,000千円 http://nitozaidan.jp/result/image/j39.pdf