論文の概要
Universal approximation properties for an ODENet and a ResNet: Mathematical analysis and numerical experiments
著者: Yuto Aizawa, Masato Kimura, and Kazunori Matsui
出版年月日:2024年1月
掲載雑誌:Discrete and Continuous Dynamical Systems Series B, Vol. 29, No. 1, pp. 351-376
ページ数:26
概要
ニューラルネットワークモデルは,回帰分析,画像分類,時系列処理などで良い性能を発揮している.ニューラルネットワークの層を増やすことによって性能が上がるのだが,層を増やし過ぎると学習がうまくいかなくなることがある.そこで,より深いネットワークの学習を容易にするためにResNet (Residual network)が提案されており,このモデルが近年のニューラルネットワークの基礎構造になっている.
与えられた連続関数に対して,内部のパラメータを調整することによって,ResNetの入出力で近似できるとき,ResNetは万能近似能力を持つ,と呼ばれる.ここで,この万能近似能力は各層の次元がどれほど小さい時でも成り立つかが疑問となる.
ResNetは微分方程式を離散化した問題と見ることができることが知られており,対応する常微分方程式はODENetと呼ばれる.本論文では,常微分方程式の解の構成を応用することで,入力n次元,出力m次元 (m≦n) のResNetとODENetは層の次元がn+m次元のときに万能近似能力を持つことを証明した.また,数学的に証明するだけでなく,実際に誤差逆伝播法を実装し,いくつかの具体例で近似性能を確認した.
A projection method for the Navier–Stokes equations with a boundary condition including the total pressure
著者: Kazunori Matsui
出版年月日:2022年9月
掲載雑誌:Numerische Mathematik, Vol. 152, pp. 663–699
ページ数:37
概要
水道や血流などのように圧力駆動の流れは身の回りに数多くある.そのような流れを取り扱う際に,境界の一部分で圧力値が与えられた場合に領域内部ではどのような流れになるかが問題になる.本論文では,圧力(全圧)に関する境界条件を課した時間発展Navier-Stokes問題に対して,数値解法の1つである射影法を用いた数値計算スキームを提案し,その安定性と誤差評価を数学的に証明した.さらに,その安定性を用いることによって元々のNavier-Stokes問題の弱解の存在証明を与えた.
Sharp consistency estimates for a pressure-Poisson problem with Stokes boundary value problems
著者: Kazunori Matsui
出版年月:2021年3月
掲載雑誌:Discrete & Continuous Dynamical Systems - S. Vol. 14, No. 3, pp. 1001–1015
ページ数:15
概要
流れ問題に対する数値解法としてMAC法やSMAC法,射影法,粒子法などがあり,これらは非圧縮性条件の代わりに圧力Poisson方程式を用いる.その際にオリジナルの問題では用いない境界条件を加えることとなるが,その追加境界条件による影響についてはあまり調べられてこなかった.本論文では,Stokes問題に対して2種類の境界条件と,対応する圧力Poisson問題を考え,それぞれの解の誤差が追加境界条件と実際の境界値との差で評価できることを証明した.
Analysis of a projection method for the Stokes problem using an ε-Stokes approach
著者: Masato Kimura, Kazunori Matsui, Adrain Muntean, and Hirofumi Notsu
出版年月日:2019年7月
掲載雑誌:Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics, Vol. 36, No. 3, pp. 959–985
ページ数:27
概要
下記の論文の結果について,圧力の境界条件をより一般化した混合境界条件やNeumann境界条件の場合について考え,同様の結果を得ることができた.特に,Neumann境界条件とした場合には具体的に収束オーダーが得られることを確認した.さらに,そこで得られた収束オーダーについて有限要素法を用いた数値計算で確認した.
Asymptotic analysis of an ε-Stokes problem connecting Stokes and pressure-Poisson problems
著者: Kazunori Matsui and Adrain Muntean
出版年月日:2018年9月
掲載雑誌:Advances in Mathematical Sciences and Applications, Vol. 27, pp. 181–191
アクセス:紙媒体のみ arXiv:1712.02588
ページ数:11
概要
定常Stokes問題と対応する圧力Poisson問題について調べるために,2つの問題を補間するε-Stokes問題を導入し,その弱解がεについて0と無限大へ極限をとった場合にそれぞれStokes問題と圧力Poisson問題の弱解へ適当なノルムで収束することを証明した.ここでは,流速と圧力に対して共に全周Dirichlet境界条件を課した場合について考えた.