著者: Yoshiho Akagawa and Kazunori Matsui
出版年月日:2025年2月15日
掲載雑誌:Journal of Mathematical Analysis and Applications, Vol. 542, No. 2, 128838
ページ数:22
概要
材料の弾塑性を記述するモデルの1つに完全塑性モデルがある.完全塑性モデルを含む問題を陰的に離散化すると,非線形問題を解く必要があるため,各時刻ステップでニュートン法などの非線形問題ソルバーを使うこととなる.一方で,陽的に離散化すると,そういった問題は避けられるが,時間刻み幅を十分小さくとらなければスキームが安定にならないという問題がある.
本論文では,射影法的なアプローチを用いて,非線形問題ソルバーを用いる必要がない新たな数値計算スキームを提案した.また,提案スキームが安定であり,初期値と外力に対して適当な正則性を仮定することで時間刻み幅を無限小とした時にスキームの解は厳密解に強収束することを示した.さらに,この安定性を用いることで,厳密解の一意存在性を示した.オリジナルの問題に対する解の一意存在性はすでに示されていたが,本論文ではより弱い仮定のもとで示している.
なお,これらがうまくいく背景には,von Misesの降伏条件を陽的な記述で書けることが重要なポイントとしてある.工学の本などで,von Misesの降伏条件を表す絵として円柱のような記述がよくある.しかし,円柱であることの証明や具体的な表示について調べた範囲で見当たらなかったので,本論文の付録でd次元(dが2以上)の場合でのvon Misesの降伏条件に対して陽的な記述を与えている.
著者: Masato Kimura, Kazunori Matsui, and Yosuke Mizuno
出版年月日:2025年6月
掲載雑誌:Journal of Computational Mathematics and Data Science, Vol. 15, 100116
ページ数:12
概要
下記の論文の結果から改良して,入力・出力n次元,中間層n次元のResNet・ODENetは万能近似能力を持つことを証明した.ODENetはトポロジカル的な理由から全ての連続関数を近似することはできないことが知られている.そのため,ODENetで近似可能な関数であれば,アフィン変換と活性化関数の合成関数(α◉σ(βx+γ)の形の関数)によって定まるODENetで近似できることを示した.また,この結果からオイラー離散化の議論を用いて,ResNetも同様の万能近似能力を持つことを示した.
著者: Yuto Aizawa, Masato Kimura, and Kazunori Matsui
出版年月日:2024年1月
掲載雑誌:Discrete and Continuous Dynamical Systems Series B, Vol. 29, No. 1, pp. 351-376
ページ数:26
概要
ニューラルネットワークモデルは,回帰分析,画像分類,時系列処理などで良い性能を発揮している.ニューラルネットワークの層を増やすことによって性能が上がるのだが,層を増やし過ぎると学習がうまくいかなくなることがある.そこで,より深いネットワークの学習を容易にするためにResNet (Residual network)が提案されており,このモデルが近年のニューラルネットワークの基礎構造になっている.
与えられた連続関数に対して,内部のパラメータを調整することによって,ResNetの入出力で近似できるとき,ResNetは万能近似能力を持つ,と呼ばれる.ここで,この万能近似能力は各層の次元がどれほど小さい時でも成り立つかが疑問となる.
ResNetは微分方程式を離散化した問題と見ることができることが知られており,対応する常微分方程式はODENetと呼ばれる.本論文では,常微分方程式の解の構成を応用することで,入力n次元,出力m次元 (m≦n) のResNetとODENetは層の次元がn+m次元のときに万能近似能力を持つことを証明した.また,数学的に証明するだけでなく,実際に誤差逆伝播法を実装し,いくつかの具体例で近似性能を確認した.
著者: Kazunori Matsui
出版年月日:2022年9月
掲載雑誌:Numerische Mathematik, Vol. 152, pp. 663–699
ページ数:37
概要
水道や血流などのように圧力駆動の流れは身の回りに数多くある.そのような流れを取り扱う際に,境界の一部分で圧力値が与えられた場合に領域内部ではどのような流れになるかが問題になる.本論文では,圧力(全圧)に関する境界条件を課した時間発展Navier-Stokes問題に対して,数値解法の1つである射影法を用いた数値計算スキームを提案し,その安定性と誤差評価を数学的に証明した.さらに,その安定性を用いることによって元々のNavier-Stokes問題の弱解の存在証明を与えた.
著者: Kazunori Matsui
出版年月:2021年3月
掲載雑誌:Discrete & Continuous Dynamical Systems - S. Vol. 14, No. 3, pp. 1001–1015
ページ数:15
概要
流れ問題に対する数値解法としてMAC法やSMAC法,射影法,粒子法などがあり,これらは非圧縮性条件の代わりに圧力Poisson方程式を用いる.その際にオリジナルの問題では用いない境界条件を加えることとなるが,その追加境界条件による影響についてはあまり調べられてこなかった.本論文では,Stokes問題に対して2種類の境界条件と,対応する圧力Poisson問題を考え,それぞれの解の誤差が追加境界条件と実際の境界値との差で評価できることを証明した.
著者: Masato Kimura, Kazunori Matsui, Adrain Muntean, and Hirofumi Notsu
出版年月日:2019年7月
掲載雑誌:Japan Journal of Industrial and Applied Mathematics, Vol. 36, No. 3, pp. 959–985
ページ数:27
概要
下記の論文の結果について,圧力の境界条件をより一般化した混合境界条件やNeumann境界条件の場合について考え,同様の結果を得ることができた.特に,Neumann境界条件とした場合には具体的に収束オーダーが得られることを確認した.さらに,そこで得られた収束オーダーについて有限要素法を用いた数値計算で確認した.
著者: Kazunori Matsui and Adrain Muntean
出版年月日:2018年9月
掲載雑誌:Advances in Mathematical Sciences and Applications, Vol. 27, pp. 181–191
アクセス:紙媒体のみ arXiv:1712.02588
ページ数:11
概要
定常Stokes問題と対応する圧力Poisson問題について調べるために,2つの問題を補間するε-Stokes問題を導入し,その弱解がεについて0と無限大へ極限をとった場合にそれぞれStokes問題と圧力Poisson問題の弱解へ適当なノルムで収束することを証明した.ここでは,流速と圧力に対して共に全周Dirichlet境界条件を課した場合について考えた.