第4回バイオロギングシンポジウム(実行委員長:綿貫豊)が10月26日に函館で開催された。シンポジウムのテーマは空間生態学であり、綿貫によるテーマ説明に続き、以下の発表が行われた。
Suryan R(Oregon State University), Ozaki K, Sato F, Sievert P, Deguchi T and Balogh G
Many lessons learned from long-term tracking studies of albatrosses
山本誉士(極地研・北大水産)
ミズナギドリ科の利用海域の季節的変化と海洋環境
伊藤元裕(極地研)
限られた餌場での採餌:氷海におけるアデリーペンギンの三次元空間利用
Thibot JB(JSPS 外国人特別研究員・国立極地研究所)
Post-natal dispersal and diving behavior ontogeny in juvenile Emperor penguins Aptenodytes forstri
金治佑(国際水産資源研究所)・南真吾
カマイルカの分布域推定:物理環境から季節回遊を予測できるか
Syamsuddin ML(北大水産), Saitoh S, Hirawake T
Ocean climate variability induced favorable oceanographic conditions to bigeye tuna catches in the Eastern Indian Ocean
島谷健一(統数研)
動物の意志を知りたいモニタリング
船からの目視観測は、海域に制約がある、観測が直線状であり時間も限定されるといったことから、静的な分布を限られた範囲でしか行えない。バイオロギング技術を利用した海洋生物のトラッキングは、観測が連続して行える点で、動物の分布を知るのに極めて有効な方法である。しかし、繁殖地の制約、非繁殖個体は追跡できない、分布の薄いところの情報を得るのは難しい、などの欠点もある。これらについて、いくつか質問があった。サンプルの多いある季節のイルカの分布からハビタットモニタリングを行い、そのモデルで別の季節の分布を予測したところ、観測データとかなり合致することが示された。また、データ欠落海域についても予測しうることが示された。ただし、データの統計処理については批判が出された。衛星による観測から得られた物理・1次生産データを使いメバチマグロのハビタット予測モデルが紹介された。1次生産よりは海流によってハビタットが予測されることが示された。最後に、動物の移動方向をいくつかの要因から説明する新しいモデルが紹介された。トラッキングでなければ得ることできない情報が、いかにして動物行動の理解に役に立つのか話し合われた。
ポスター発表
科研費Aに関連するものとしては、オオミズナギドリの研究者と綿貫・高田共同研究グループの共同研究による、GPSデータロガーやジオロケーターで追跡したオオミズナギドリの尾腺ワックス中のPOPsを測定して、利用海域の汚染度を知る試みを発表した。