患者コホート研究リスト

1. 目的

2012年5月23日に中央社会保険医療協議会において費用対効果評価専門部会が立ち上がり,我が国における費用対効果を勘案した保険償還価格設定の在り方について検討が重ねられています.費用効果分析の実施には,状態推移確率,有効性(QOL),費用の各パラメータを整備することが不可欠です.

これらのデータを整備する上で,「患者コホート研究」の活用が重要な枠割を果たすと考えられます.リアルワールドに基づく高品質なデータが長期間に渡って収集されているためです.しかし,日本において利活用可能なコホート研究は体系的に整理されていないのが現状です.そこで,私たちは,患者コホート研究の主要財源の1つである厚生労働科学研究費補助金に着目し,当該補助金を用いて実施された患者コホート研究をリスト化しました.

2. 方法

(1) 報告書検索

厚生労働科学研究費補助金にて実施された日本人を対象にした患者コホート研究を同定するために,「厚生労働科学研究成果データベース」を用いました.検索キーワードには,"コホート or コーホート","追跡 or フォロー","登録 or レジストリ","前向き or プロスペクティブ or prospectice","後向き or レトロスペクティブ or retrospective"です.

(2) 抄録レビュー

厚生労働科学研究成果データベースを用いた検索の結果,4,119件の報告書が抽出されました.これら報告書から患者コホート研究を実施していると考えられる研究を選定するために,データベースに含まれる抄録情報を用いたレビューを実施しました.選定基準として,「1.何かしらの疾患を有する患者を対象にしていること」及び「2.対象患者を一定期間(1ヶ月程度とした)追跡していること」を定めました.

(3) 本文レビュー

抄録レビューでは判定ができなかった130の報告書を対象に報告書本文を対象にしたレビューを実施しました.選定基準は抄録レビューと同じく,「1.何かしらの疾患を有する患者を対象にしていること」及び「2.対象患者を一定期間(1ヶ月程度とした)追跡していること」としました.

(4) 評価

上記の選定作業により抽出された患者コホート研究を対象に,①研究概要,②研究デザイン,③収集データ項目,④結果等,について取りまとめました.①研究概要は,厚生労働科学研究成果データベースから抽出した表1に示す項目について整理した.②研究デザイン,③収集データ項目,④結果等については,報告書本文を対象にしたレビューを行い,表2~表4に示す評価項目を評価書に転記しました.

表1. 患者コホート研究の概要把握のための評価項目

表2. 患者コホート研究の研究デザイン把握のための評価項目

表3. 患者コホート研究の収集データ項目把握のための評価項目

表4. 患者コホート研究の結果等把握のための評価項目

2. 結果概要

厚生労働科学研究費補助金にて実施された日本人を対象にした患者コホート研究を同定するために,「厚生労働科学研究成果データベース」において,"コホート or コーホート","追跡 or フォロー","登録 or レジストリ","前向き or プロスペクティブ or prospectice","後向き or レトロスペクティブ or retrospective"のキーワードを用いた検索の結果,4,119件が抽出されました.これら報告書から患者コホート研究を実施していると考えられる研究を選定するために,報告書抄録および報告書本文を評価した結果,最終的に161件の報告書が選定されました.

これら報告書をレビューした結果,コホート研究の実施件数は総計256研究(1件の報告書に複数の研究が含まれていたため,報告書数よりも増加)であり,疾患領域別の内訳を表5に示しています.研究実施件数が多いのは,筋骨格系疾患(n = 39),神経系疾患(n = 38),消化器系疾患(n = 37)でした.評価結果の詳細は以下のxlsxファイルに取り纏めています.

表5. 疾患領域別の患者コホート研究数

※本リストの内容に誤りや漏れがある場合は,h_fukuda<at>hcam.med.kyushu-u.ac.jpにご連絡ください.