靴下の製造工程をご紹介いたします。
普通の靴下メーカーは製造工程に外注を用いた分業体制が一般的ですが、ハリソンの工場では、編立、先縫い、セット、ペアリング等をすべて一貫生産しています。
これによって、素材に適した編機の選定、度目調整したしっかりとしたもの作り、フラットなつま先縫いや、風合い出しに最適なセット仕上げ、美しい外観等、高品質で完成度の高い靴下作りを実現しています。
1.糸繰り
靴下を編機にかけやすいよう、糸を糸繰り機(ワインダー)にかけて、コーン巻きにします。
靴下用の糸は、通常コーン巻きで納品されますが、巻き状態の悪い場合に、糸繰り機で巻き直しすることで編み立て時の品質が向上します。通常、靴下工場にこの設備はありません。
ハリソンの工場には、糸繰り機が備え付けられており、最初に一手間かけることで品質が安定しています。
2.編立
さまざまな編機で編み立てをします。
靴下の編機は丸編みで筒状に編んでいきます。
編機の種類はおおまかに以下の通り分類されます。
(1)シングルシリンダー機
K式が主流です。
一つのシリンダー(円筒)に編み針がはめ込まれていますので、基本的には平編みです。
スパイラルやカットボスの機能により柄の表現ができます。
なお、アーガイル柄に代表されるインターシャ編みができるのは、K式ではなく、Xマシンのような特殊なシングルシリンダー編機に限られます。
(2)ダブルシリンダー機
上下二つのシリンダー(円筒)を両頭針が上下しますので、凹凸のある編目が表現できます。
リブ編機、リンクス編機、ジャカード編機などの種類があります。
3.抜き(切り離し)
ダブルシリンダー編機で編まれた靴下の多くは、爪先が開いたまま長くつながった筒の状態で出てきますので、ヌッキーと呼ばれるセパレートカッター機によって、一つ一つの編地(片足ずつ)に切り離す必要があります。
機械を使わず、手で糸を抜いて離す方法もあります。
なお、シングルシリンダー編機で編まれた靴下は、一つずつ(片足ずつ)切り離されて出てきますので、抜きの工程は必要ありません。
4.裏返し検品
爪先縫いの機械にかけるため、いったん靴下を裏返します。
それと同時に不要な糸端を切って整理したり、傷や汚れがないか検品します。
5.ロッソ(爪先縫い)
裏向きの状態で爪先縫い機(ロッソ)にかけて、爪先を縫い合わせます。
イタリアのロッソ社がこの機械を開発して広まったため、爪先縫いの工程名として呼ばれるようになりました。
この他に、昔ながらのハンドリンキングや、最新の自動リンキング機によって、編目を一目ずつかがる方法があります。
6.表返し検品
ロッソ後の裏返しの生地を、先が丸くなった検査板などを使って、再び表返します。
爪先の縫目を伸ばすと同時に、傷や汚れがないか再検品を行います。
光を当てる装置を使って検品する方法もあります。
7.セット
靴下をアルミ製の足型(セット型)にはめて、セット機に入れます。
蒸気をかけてセット、乾燥することで、足型に成型されます。
蒸気の圧力や乾燥時間で風合いが変わるため、最も重要な工程の一つです。
8.ペアリング
2枚を合わせて1足にペアリングします。
ソッパス(ソクパス)やパッカーと呼ばれる金具で爪先とゴム口を留めることが多いです。
最終検品も兼ねて行います。
9.タグ付け
タグ付け専用ミシンで、ゴム口部にタグ(口紙)をミシン縫いします。
ハリソンのタグは、表側のミシン糸の糸端を引っ張れば、するするとほどける仕様になっています。
10.転写
アイロンによりロゴマーク等を熱転写します。
プリントではないため、洗濯を重ねるたびに転写マークは薄くなっていきます。
昔は、タグへの印刷技術がなかったため、ブランドロゴ、サイズ、品質を熱転写することが多かったのですが、印刷技術の発展に伴い、転写の必要がなくなりました。
ハリソンでは、スーピマ素材の訴求にだけ、転写というクラシックな手法を残しています。
11.検針
靴下に針や金属片などの異物が混入していないか、金属探知機で検針した後、完成品となります。