裁判の趣旨

【何を求めるのか~訴訟の目的】

人類史上空前の被害をもたらした事故の原因と責任を明らかにし、原告の被った被害の完全賠償を求める。

本件訴訟の判断は、原告のみならず本件事故の被害者全体に対して影響することは必至であり、被害者全体を救う力を持ちうるものである。決して被害者の泣き寝入りを許さず、勇気ある判断を求める。

【 法的責任】

●東電の責任

高度の危険性が内在している原発を設置・管理・運営する事業者として、安全性の確保と地域住民の生命・健康をはじめとする人格的利益に対する危害を未然に防止すべき高度の注意義務を負っているにもかかわらず、津波対策、シビアアクシデント対策を怠り、事故を引き起こした民法上の不法行為(709 条)と原子力損害賠償法上の賠償責任を負う。

●国の責任

電気事業法の規定に基づき、原子炉が人体に危害を及ぼすことのない技術基準を定め、これに適合させる権限を有している。経済産業大臣は、2006 年の原子力安全保安院が行った「溢水勉強会」、衆議院予算委員会の審議等を通じ、地震・津波対策の必要性について十分認識していたにもかかわらず、規制権限の行使を怠った国家賠償法(1条1項)の責任を負う。

●共同不法行為責任

福島第1原発は国が国策として推進し、国の規制・監督のもとに東電が創業していたものであり、国は必要な規制権限の行使を怠り、東電は必要な事前・事後の措置を怠ったために事故が発生したものであるから、民法719 条1項が定める共同不法行為責任を負う。

【 損害賠償請求の内容】

① 避難慰謝料(1人月額35 万円)

避難生活に伴い継続して発生する精神的苦痛に対する慰謝料として、2011 年3 月から提訴前月の2013年8 月まで、交通事故による鞭打ちなど他覚的症状のない入院慰謝料と同程度の月額35 万円を求める。

② 生活破壊・ふるさと喪失慰謝料(1人2,000 万円)

避難慰謝料は一時的に生活拠点を移動させられたことに関するものであり、将来に及ぶ不可逆的な損害に対する賠償は含まれていない。

原告らは日常生活とふるさとのすべてを失い、たとえ生活再建に必要な財産的損害が補填されようと、除染が実施されようと、事故前の状況が完全回復されることはあり得ない。以前の日常生活、親族や旧友らの待つ「ふるさと」は永遠に戻ってこない。このような無形、広範な将来に及ぶ不可逆的損害に対して、1人2,000 万円の賠償を求める。

③ 不動産損害・財物損害賠償

土地、建物、家財については、原告が再出発をすると決意した場所での生活再建基盤の再取得価格を基本とした賠償を求める。