第3次原告団声明「私たちは捨てられた民なのか」

投稿日: 2014/05/22 4:00:20

私たちは捨てられた民なのか

福島原発かながわ訴訟 第3次原告団声明

東京電力福島第一原発の核災害によってふるさとを追われた私たちは、4度目の春を横浜地方裁判所前の歩道で迎えました。無念の、4度目の春です。

神奈川県などで避難生活を余儀なくされている12世帯27名は、本日、奪われた暮らしとふるさとを取り戻すため、国と東京電力株式会社を被告として損害賠償を求める訴えを起こしました。2013年9月11日の17家族44名、12月12日の6家族22名に続く第3陣となります。請求の内容は第1陣・第2陣と同じく①避難に伴う慰謝料②生活を破壊され、ふるさとを奪われたことに対する慰謝料③不動産損害等の個別の損害賠償、の3項目です。

2011年3月11日のあの日まで、私たちは日本国民としての義務を果たし、平凡でも平和な日々を暮らしてきました。税金を納め、隣人とは仲良くし、地域経済の発展に貢献してまいりました。私たちは、この平凡な日々がずっと続くものだと思っていました。それが国と東京電力の手によって壊されるとは、夢にも思いませんでした。

私たちは何か悪いことをしたのでしょうか?泥棒でも土地や建物は持っていきません。火事でも土地は残ります。私たちが被った損害はそれ以上のことなのです。

確かに、山も、畑も、田んぼも、家族の思い出が詰まった家も、雑草の中に残ってはいます。空の青さも海の色も3年前のままです。しかし、すべてが目に見えない放射能に覆い尽くされ、もう、私たちが持っていた家でも土地でも自然でもないのです。墓参りにも行けず、家族は離れ離れとなり、友人とは簡単に会うこともできず、楽しいクリスマスも正月も節分も、迎え火を炊いて亡き人を迎えるお盆もありません。ただただ、憂鬱な日々を送るのみ。福島の人間であることばかりか、日本人であったことさえも忘れる寸前です。もはや難民状態です。それなのに、被害の全容も、この事態を招いた責任も明らかにされず、誰も罰せられない。考えられないことです。

国は昨年暮れ、「復興加速化指針」を閣議決定したといいます。その内容は、放射能汚染のひどい地域は帰還を諦め、それ以外は期限を切って帰還を促すというものです。住民は浴びる放射線量を自分で管理せよ、とも言っています。これはどういうことなのでしょう?癌になって死んでも「自己責任」ということなのでしょうか?内部被ばくと健康被害の関連が分からないと言いますが、分からないなら安全が確認されるまで適切な賠償を行い、帰さないのが、国民の命を守る国の取るべき道ではないでしょうか。

原発爆発に追われ、着の身着のままで逃げ惑ったあの時、国は放射能の雲が避難者の上を流れていたことを知っていたにも関わらず、なぜ、それを教えてくれなかったのでしょうか?後に、「パニックが起こるから」と言いました。パニックに陥ることと、被ばくすることを、経済の天秤にかけて後者を選んだ国。国民の健康と命という基本的人権の大本を踏みにじった国。底の知れない被害を引き起こしながら、なお、変わらない国の姿勢に対して、言いようのない怒りを感じます。

私たちは、この惨事に対する国と東電の責任を明らかにし、完全な賠償を実現することによってこの怒りを和らげ、少しでも人間らしい生活を取り戻したいのです。人間の命と健康と尊厳を第一に考える、「当たり前の国」を取り戻したいのです。

私たち福島原発かながわ訴訟原告団は、この願いがかなうまで、各地で同様の訴訟に立ち上がっている方々、弁護団、支援していただいております多くの皆さま、そして全国の、世界中の心ある人々と手を携え、共に闘ってまいります。

2014年3月10日

福島原発かながわ訴訟第3次原告団