現在進めている研究テーマ
1. 湿潤アジア地域における土壌酸性化の主要メカニズムの解明:人間活動の影響評価(特に耕地化・過剰な窒素施肥)
最も頑張っているのが土壌酸性化の要因を定量的に解明することです。
例えば日本の自然土壌の多くは酸性ですが、ここに酸性雨がどれだけ
影響しているか、はっきり分かっていません。
酸性化の各プロセス(右下図)の寄与を解明すれば、自然現象・人為影響
の区分が可能となります。自然現象として進む土壌酸性化のモデル化と
人為影響の評価を進め、農耕地土壌の酸性化を緩和する土地利用方策を
提案することを目的としています。
熱帯焼畑生態系の土壌有機物モデルの構築と酸性化緩和技術への応用
2. 自然現象としての土壌酸性化プロセスの解明
土壌の成り立ちを「酸性化」に着目し調べています。
土壌は多様であり、生成・酸性化プロセスも多様です。
異なる土壌の主要な酸性化プロセスを調べています。
2-1. ポドゾル化における有機酸の役割の再検証
2-2. 黒ぼく土の有機物蓄積プロセスの解明
2-3. 東南アジア島嶼部におけるOxisol・Ultisolの生成プロセスの解明
3. 土壌有機物の分解・蓄積速度及びメカニズムの解明
土壌へ供給された有機物は分解され、大部分がCO2として大気中へ放出されますが、
一部は土壌有機物として蓄積します。土壌は陸域最大の炭素プールであり、蓄積量は
大気の2倍、植物の3倍にも相当します。ただし、土壌が今後さらに炭素を蓄積できるのか、
放出源となるのか分かっていません。土壌の有機物は複雑な化合物の集合体ですが、
そのうち、糖や有機酸やアミノ酸は速やかに分解され土壌呼吸として放出される一方、
一部の高分子化合物はこのような茶色い溶存有機物として浸透し安定な有機物として
蓄積するメカニズムを解明しました。
3-1. 14Cトレーサー実験による落葉落枝(リター)の分解(可溶化・無機化)速度の規定要因の解明
3-2. 溶存有機物の動態と生態系機能
4. 酸性土壌への植物の適応機構の解明:有機酸の機能
植物は酸性土壌においてAl害やリン欠乏といった問題を抱えています。
根から放出される有機酸はこれらの問題の緩和に働く可能性があります。
この有機酸が実際に根からどれくらい放出され、土壌中でどのように働いて
いるかについて調べています。
ちなみに、植物は様々なリン欠乏適応戦略を有しています。
その他の共同研究
・京都大学の土壌学研究室の山田高大くんと
森林土壌の窒素無機化速度の規定要因をアルギニン分解能に着目して調べています。
・農環研の金田哲さんと
ミミズによる団粒形成が土壌有機物の蓄積能へ及ぼす影響 について調べています。
・龍力 株式会社 本田商店(兵庫県)の本田武義会長と
酒米の王様「山田錦」の栽培土壌とお米・お酒のおいしい関係 について調べています。
テロワールにおける土の役割について考える機会となりました。
・NGOいちいがしの会の出口晃平さんと
熊野地方の増えすぎた人工林を天然林へソフトランディングさせる林業技術 について調べています。
まだ詳細は議論中ですが、巻き枯らし法の土壌特性への影響を調べています。
・École Polytechnique Fédérale de Lausanne(Switzerland) の生態学グループと気候変動の土壌炭素に対する影響を調査しています。