過去の研究会概要

◆ 第1回研究会

日時:2014年12月1日 14:00~16:00
場所:東京都健康長寿医療センター研究所

講師:稲葉 陽二 先生(日本大学法学部 教授)
演題:社会関係資本全国調査の結果と高齢者就労への示唆

*第一部 セミナー

世界でも5番目に高い高齢者就労率である我が国だが、多くの高齢者が仕事をしたいと考えており、その就業活動はスムーズであるとは言えない。そこで、本研究会としては、高齢者就労の現状を把握し、更なる促進を考えるために、全体像を把握しなければならない。
そのための研究会の方向性として、就業促進なのか、孤立防止なのかでは対応が異なる事を念頭に置かなくてはいけない。先行研究では、心の健康は年齢があがるほど改善されており、職場からの解放によって心の健康があがるという事であれば、高齢者の就労はストレスを増やすようなものであり、無意味なのかもしれないという疑問が生じている。
身近な人々との接触が減り、彼ら/彼女らへの信頼が低下するトレンドをどう食い止めるのかがこれからの課題ではないだろうか。

*第二部 全体討論

高齢者就労を支援するにあたっては、高齢者自身の就労イメージや目的意識、妥協点を明らかにする必要がある。さらに,そのイメージや目的意識には欲求の階層性があると考えられる。個人の視点では、若いころからの準備や早期転換の視点が必要である。
一方、社会の視点としては、多世代との共存を意識しつつ施策を考える必要がある。その双方向の視点から高齢者就労を考えることによってより良い支援が可能となるのではないか。その際、エイジズム(高齢者への差別や偏見)の様な高齢者就労に対するマイナスイメージの存在があるのではないかと考えられるため、個人の側からの高齢者就労の利点、社会の側からの高齢者就労の利点を示していかなくてはならない。


第2回研究会

日時:2015年1月28日 14:00~16:00
場所:東京都健康長寿医療センター研究所

講師:佐藤 陽 先生(十文字学園女子大学人間生活学部 教授)
演題:地域福祉を推進する社会福祉協議会を中心に―他機関との連携、有償活動、生活支援サービスとともに―

*第一部 セミナー

社会福祉協議会(以下、社協)は、『社会的に弱い立場にある人々を社会の一員として、支え合う社会づくり(ソーシャルインクルージョン)』の方向性を持ち、地域のボランティア・行政・専門家を繋げる役割として期待されている。また国側からは、住民参画を得て支え合う社会の実現が求められ、制度では拾いきれないニーズや、制度の谷間にある人への対応等、公的福祉サービスだけでは対応しきれない多様な生活課題に対応するため住民と行政の協働による「新たな支え合い(共助)」の確立が提案されている。
現場では、地域福祉のニーズが増える中で、無償ボランティアだけでなく有償ボランティアをも導入しており、社協から見た、有償ボランティアと無償ボランティアの位置付けや、今後行われる生活支援について示した。

*第二部 全体討論

地域福祉において様々なボランティア主体が共存しているが、現在では,問題なく住み分けがなされている。理想としては、社協と包括センターが協力し合い、サービスの充実を図るべきだが、現実には、行政がどこに予算配分するかによって,その主導となる施設が左右されてしまう状況にある。
さらに、有償ボランティアをボランティアと見るか、労働と見るかが未整理な段階で、活動における事故や事件の際への法律や保険が対応しきれていない可能性が高い。今後、社協だけでなく、全てのボランティアやNPOの活動をどのように区分けしていくのかといった整理が急務である。


第3回研究会

日時:2015年4月6日 14:00~16:00
場所:東京都健康長寿医療センター研究所

講師:川邉 彰男 先生(一般社団法人 日本人材派遣協会統括研究員)
演題:高齢者を対象とした人材派遣の現状と今後の見通し

*第一部 セミナー

高齢者派遣の特徴は大きく二つに分かれる。一つは、定年延長の際、派遣会社を通して再雇用という形式に利用されるタイプ、もう一つは希少な有資格者のような専門性を持つ高齢者を扱うタイプがある。そのため、一般の派遣労働(以下、派遣)に比べ、料金設定の仕方も多様であり、高齢者だから安い、専門性があるので高い等、企業の基準の置き方に左右される。
現在では、高齢者派遣における規制の緩和が進んでおり、派遣業界全体から見れば、若年者よりも高齢者の方が優位にある。だからこそ、今後、人材派遣業界において、高齢者就労の期待が高まると考えられている。

*第二部 全体討論

現在、制度的には、派遣労働の課題となる部分が、高齢者には開かれているため、高齢者にとって派遣は働きやすい形態であると考えられるが、派遣、請負、シルバー、有償ボランティア等、雇用(あるいは非雇用)を巡っては、法的な整理が進まないまま、実態が動いている様子もある。実情としては、多くの高齢者は、複数の就労、地域活動に参加していると考えられ、兼業も含めた、高齢者の活動の実態を明らかにする必要がある。
さらに、「高齢者」のカテゴリー内でも、60代前半、65歳~70歳未満、70歳以上のカテゴリーで、その働き方は大きく異なると想定され、年代をさらに明確にした議論が必要である。


◆ 第4回研究会

日時:2015年6月22日 15:00~17:00
場所:東京都健康長寿医療センター研究所

講師:田尻 孝二 先生(日本高齢者生活協同組合連合会副会長・生活協同組合東京高齢協専務理事)
演題:高齢協が手がける高齢者就労のかたち

*第一部 セミナー

高齢協は、1990 年代中盤に高齢者の福祉を目的とした協同組合を作ろうという動きの中で「寝たきりにならない、させいない」という理念を基に、「生きがい・福祉・仕事おこし」を3つの柱にして発足した。「生きがい活動」という目標を掲げた高齢協の活動は、設立当時からの「仕事おこし」活動と、高齢者自身の特技を生かした文化・教養教室活動とに二分していくこととなる。さらに、「仕事おこし」活動は、2000年頃から開始した「ヘルパー講座」の委託により、事業収入を得るようになり、それが、高齢協の福祉事業の出発点にもなった。その後、介護保険事業への参画が始まるが、これらの事業の開始に伴い「生きがい活動」としての「仕事おこし」活動事業は下火となっている。生活支援事業も始まるこの時にこそ、「高齢協」らしい取り組みとは何かを再考していく必要がある。

*第二部 全体討論


現段階で、高齢者就労に関しては、圧倒的な情報不足が懸念される。平成29年には生活支援サービスが始まる事が確定している今こそ、生涯現役のプラットホーム構想を作り上げていかなくてはいけない。そのための第一歩として、高齢者就労のためのガイドブックを考えて行くべきではないだろうか。これまでの研究会での報告は、地区単位の高齢者就労についてのものばかりであったが、地域差を明らかにしてくという視点こそ重要なのではないだろうか。全国で活動している高齢協やシルバー人材センターなどの、地域ごとの取り組みに関する一覧があれば、行政側も自分たちの地域に何が不足しているのかといった事が把握できるはずだ。そのような、ガイドブックがあれば、生活支援サービス開始までに、各自治体にとって何が必要なのかを見出す手がかりとなるに違いない。


◆ 第5回研究会

日時:2015年8月24日 14:00~17:00
場所:東京都健康長寿医療センター研究所

講師:渡辺 吉靖 先生(公益財団法人東京しごと財団しごとセンター課高齢者就労支援係係長)
演題:東京しごとセンターにおける高齢者就労支援の施策と考え方について

*第一部 セミナー

昭和50年財団法人東京都高齢者事業振興財団(以下、財団という)は設立され、時を同じくして江戸川区に第1号のシルバー人材センターが立ち上がった。昭和58年に東京都は「高齢者就業システム開発研究会」を設置し、高齢者の雇用・就業・能力活用を促進する就業センター設置の必要性が提言された。その後、地域に設置された高年齢者就業相談所、及び平成8年に開設された東京都高年齢者就業センターの管理運営を東京都から受託し、財団における高齢者への雇用支援事業が本格化した。 平成16年、東京都高年齢者就業センターは、就職支援の対象を全年齢層へと拡大し、雇用におけるミスマッチ解消と都民の多様な就業ニーズに対応するため、東京しごとセンターへと生まれ変わり、年間8,000人前後の利用登録者が訪れるシニアコーナーは、東京しごとセンターの55歳以上の働きたい都民のための就業支援窓口となっている。

*第二部 全体討論

社会変化の影響から近年増えてきたのは、継続雇用が適応されはするものの、待遇、条件等の面において今の会社を辞めるべきかどうすべきかで悩んでいる高齢者である。就労したいという人と地域に貢献したいという人では意識が異なるため、NPOや有償ボランティアとマッチングが上手くいかないのではないかと考えている。仕事センターのプログラムや相談事業では、NPOのスタッフやボランティアとして活動することと雇用就労として働くことの違いをきちんと伝え、地域貢献への意識がある人を対象に、そうした機関への就労斡旋を行っている。就労したい人に対しては、しごと財団は職業紹介権は持っていないが、職業訓練やセミナーから、応募や面接に繋がるような取り組みを行っている。


◆ 第6回研究会

日時:2015年11月2日 14:00~16:00
場所:東京都健康長寿医療センター研究所

講師:実歳 美幸 先生(テンポスバスターズ 前人材事業部部長)
演題:テンポスバスターズにおける高齢者の雇用について

*第一部 セミナー

株式会社テンポスバスターズは、1997年に業務用の中古厨房の会社として設立された会社である。当初は、高齢者を積極的に採用しようとしたわけではなく、人手が必要だったため、年齢を重視していられなくなったという経緯はあるも のの、現在の社員・パート全体の約3割が65歳以上の高齢者となっている。2005年には定年制を廃止しており、現在のパートの最高齢は81歳、社員の最高齢は72歳である。高齢者を積極的に採用し、活躍してもらうポイントとして、業務により多少の基準は異なるものの、年齢、性別、国籍を問わず一律同じ評価制度を採用していることが挙げられる。そこに示された「歳だから」という発想がないという事こそが、高齢者だけでなく全社員への理解に繋がっている。

*第二部 全体討論

テンポスバスターズでは、高齢者の中途離職を防ぐための方策として、入社までに3日間の先行研修を行い、仕事の内容について十分に理解してもらった上で、就労が可能かどうかといった意志の確認をしている。さらに、「育児休業・介護休業取り放題」という制度や、いったん辞めても「出戻りOK」という制度があり、他の企業で問題になっている介護離職はあまり見受けられない。現段階での高齢者の退職理由には、本人の健康問題が圧倒的に多いものの、それに関しても、まだ働けるといった理由で戻って来る方もいる。実際に、一旦離職して、75歳から復帰した例もある。60歳以上の社員やパートを対象にした研修旅行、通称「パラダイス旅行」の際に社員によって考案された、「テンポス精神十七ヶ条~高齢者編~」というものがあり、その中には、働ける喜びとやる気にあふれた言葉が紹介された。


◆ 第7回研究会

日時:2015年2月1日 14:00~16:00
場所:東京都健康長寿医療センター研究所

講師:松田 文子 先生(大原記念労働科学研究所 特別研究員)
演題:高年齢労働者を対象とした心身機能測定と職場改善の実践

*第一部 セミナー

大原記念労働科学研究所は、1921年倉敷紡績の敷地内に設置された研究所で、働く人の安全、衛生、環境を主に研究している。近年の高年齢労働者の被災した事故の半数が、「挟まれ・巻き込まれ」や「転倒・転落墜落」となっており、大原記念労働科学研究所では、「心身機能測定」により、高年齢労働者の特性を明らかにし、予防策や対応策を講じている。特に、個人と企業に対するフィードバックを行う事により働く人の安全、衛生、環境に貢献している。個人に対しては、事前の自己評価と測定結果をフィードバックすることにより、1人1人の事故防止への動機づけを促している。企業に対しては、認知機能と睡眠との関連を示した上で、記憶力維持への対策を示したり、転倒経験群の100m歩行のつま先高さが有意に低い事を明らかにした上で、つま先高い群は運動日数が多いという事象と関連していた事から、見えづらい段差をなくす環境整備と体を動かす機会の増加を対応策としてフィードバックしている。「職場改善」の具体的な実施には、これまでに手掛けた中から3つの事例を挙げ、高年齢労働者に健康かつ安全に働いてもらうために、加齢による生理面や心理面の変化に配慮した職場環境づくりがその能力発揮に必要であり、その試みは、本人にも企業にもプラスになるものであるとした。

*第二部 全体討論

大原記念労働科学研究所では、企業からの依頼により「心身機能測定」と「職場改善」を行っており、東京都健康長寿医療センター研究所でも高齢者を対象とした健康診断を行っている事から、「心身機能測定」について、実際の測定項目や所要時間、スタッフの人数などを話し合った。「職場環境」については、事例として挙げた工場の「職場改善」だけではなく、シルバー人材や介護ヘルパーといった色々な場所で働く人たちの心身機能測定や職場改善について検討を行った。「心身機能測定」の対象者の雇用形態についての質問があったが、現段階では、企業からの依頼のため対象者はほとんどが正社員であった。今後は、雇用形態の多様化を視野に入れた分析も必要と考えられた。


◆ 第8回研究会

コアミーティングのみ


◆ 第9回研究会

日時:2016年5月17日 13:30~15:30
場所:東京都健康長寿医療センター研究所

講師:稲葉 陽二 先生(日本大学法学部 教授)
演題:経済学から見た高齢者就労

*第一部 セミナー

経済学から見た高齢者就労について5点を示した。①経済原則(賃金=労働の限界生産物の価値)を無視して特定の年齢階層のみを優遇すると、若年層など他の年齢階層へ負の影響が出る。②労働供給を増やすと雇用は増えても賃金は低下し、労働需要を増やすと雇用が増加し賃金も上昇する。つまり、実際の財・サービス市場の拡大が有効である。③高齢者就業の促進策が許容される場合・高齢者が不当に差別されている場合(ex.一律定年制)・高齢者の就労が労働市場の効率を阻害する以上の外部経済がある場合(ex. 高齢者就労による医療の削減など)・全ての年齢階層に提供される教育や制度(ex.同一労働・同一賃金)の改変・労働市場が人手不足の業種(ex. 介護など相互信頼(関係財)で形成するサービスは身体能力の衰えを補完する施策があれば高齢者向き)④高齢者階層の多様性を反映して、高齢者の労働供給も多様となっており、高齢者の就業促進策もきめ細かい対応が求められる。⑤人口減つまり、生産年齢人口大幅減の日本は基本的に労働不足経済となっていく。労働不足を補完するためには高齢者の就業率を上げることも政策課題である。ただし、人工知能(ロボット)の普及による生産性向上は雇用削減効果ともなり、それによってさらに格差を拡大させると想定される。結果として、困窮高齢者が増える可能性は大きい。

*第二部 全体討論

昨今、話題となっている人工知能に代替しない高齢者就労の在り方について話し合った。介護や保育など、現在、人手不足の分野に高齢者就労を方向付けていくというのであれば、人工知能にも代替不可能な上に若者の雇用の妨げにならないのではないか。体力的な問題はあるが、就業時間を若い人と交代で行うという事であれば、高齢者にも若者にも意味のある就労となる可能性がある。体力を補うといったロボットの開発が進めば、高齢者が介護や保育をする問題の解決となるのではないか。近年、コンビニエンスストアやファーストフード店等で、早朝の時間などに高齢者を積極的に活用している。時間の住み分けといった意味では、コンビニエンスストアやファストフード店で働くという事も1つの解決法だが、介護や保育といった分野での成功事例からも、意味のある就労の形として今後検討していくべきだろう。最終的には、Generativity(次世代の価値を生み出す行為に積極的にかかわって行くという考え方や行為)を育てることに繋がっていくのではないか。


◆ 第10回研究会

日時:2016年7月11日 14:00~16:00
場所:東京都健康長寿医療センター研究所

講師:杉 啓以子 先生(社会福祉法人江東園TQM [Total Quality Management] 本部 経営企画管理室 本部長)
演題:江東園における高齢者活用の方策

*第一部 セミナー

江東園は高齢者福祉施設(養護老人ホーム・特別養護老人ホーム・通所介護)と児童福祉施設の保育所、そして、障害者福祉施設(知的障がい者生活介護)と地域支援事業など幅広い世代に対応する施設を運営する社会福祉法人である。様々な業務分野において高齢者をボランティア(有償・無償)や就労の担い手として積極的に採用し、活用している。世代間交流を基本理念とする江東園では、複合施設の利点を生かし、高齢者が保育園児の日常生活をサポートするボランティア的役割を持って活動する交流事業をはじめとして、施設利用者が散歩を兼ねた「子供見守り隊」をシニアボランティアがサポートして地域の見守りを実施している。施設の専門職を地域に派遣して行う「栄養指導」や小学校での高齢者体験事業も活発に行われている、更には、自主運営のシニアボランティアである「江戸川見守り隊」による独居等高齢者の地域見守り活動や地域サロン「地域のお茶の間」の運営への支援を進めている。更には、様々な障がいの垣根を超えて生き生き暮らせる街を考える「江戸川さんしょうがいフォーラム」の設立など、積極的に地域に根差した活動を行い、地域福祉の拠点となっている。
江東園の杉本部長は、30年間の世代間交流の実践から見えた高齢者の特性である「自分の体験や経験を次の世代に伝えたいと思う存在」そして「何かの役に立ちたいと思う存在」を高齢者の様々な働き方の基本に据えることを提唱した。
高齢者を活用する際の三つのポイントとして、5人の実例について解説され、①2日間の実習により業務の適性レベルを評価すること②責任者(杉氏)自ら入念に面接を行うこと③個々の職歴・経験・体力を十分考慮して最適な業務を割り振ることの重要性を指摘された。

*第二部 全体討論

高齢者の介護職・支援員職の採用の際には入浴・排泄・食事の実習により、レベルをA~Dに分け、A、Bを職員採用し、C、Dは希望すればボランティアとして採用している。その際、利用者への接遇態度、気遣い、疑問な点を放置せず、自分より若い先輩・同僚から直ぐに学ぶ姿勢があるかといった点が重要だと強調された。地域住民を巻き込む秘訣について、杉氏自身が地場に根付き、地場で子育てをしながら、様々な団体との人脈を作り上げてきたことを挙げた。最後に、杉氏の理念に賛同して職員一丸となれる秘訣として、江東園TQMが考案する研修プログラムが多世代型アプローチの有用性や介護福祉士資格を取得できるカリキュラム等から構成されていることが示された。


◆ 第11回研究会

日時:2016年9月12日 13:30~15:00
場所:東京都健康長寿医療センター研究所

講師:南 潮 先生(鳥取短期大学 助教)
演題:ESSENCE研究の進捗状況報告

*第一部 セミナー

高齢者就業支援の在り方について、これまでの経緯を踏まえて以下の提言を行う。第1に、就業支援という業務に拘らず、社会参加支援として長期的な視点で柔軟に求職者と関わる必要がある。本研究で明らかとなったように、経済的な理由で就業を行う高齢者は、それができなくなった途端に社会的孤立、生活困窮に結び付く危険性も高い。たとえ就業がかなわなくても自助組織など他の形態で社会参加を促すことができれば、精神面、身体面で状況が大きく改善する場合もある。また、就業支援施設を利用する求職高齢者は、男性で社会・経済的にハイリスクの人が多いため、地域保健従事者が主催する保健事業に積極的に参加することも期待し難い。これらの人達に、求職活動を入り口として保健部局や地域包括支援センターへ繋ぎ、生活相談・健康相談に至る道筋を創る事が今後期待される。第2に、活力のあるキャリア層を取り込む魅力的な仕組み作りをすべきである。高齢者の就業が、生活のための稼得というイメージに固定してしまうと、こうした層の参入が得にくくなる可能性がある。有償ボランティアやNPO等とも組み合わせて多様な形態での生きがい就業として、社会と本人自身にとって価値ある活動を実現する場の設定が必要である。第3に、子ども・子育て世代や現役世代を側方から支援する、保健福祉の業種に積極的に参入を促す事への可能性を挙げる。具体的には要支援・要介護高齢者に対する生活支援サービスや、共働き・ひとり親世帯に対する子育て支援サービス、障害者福祉施設での補助業務などを想定する。現代の高齢者は、一方的に支援される側に位置づけられるのでなく、未だ社会に貢献する気力・体力を持ち合わせている。高齢者がこうした業務に従事することにより世代間対立の緩衝や、健康格差の是正に寄与しつつ、本人にとっても生きがい・安心が担保される可能性がある。

*第二部 全体討論

シルバー人材センターでは、土日祝の朝に体育館を開放し、夜に閉めるという仕事や、会員さんからの要望で、内職などの就業開拓を行っている。ESSENCE研究のフィールドとなっているアクティブシニアも、シルバー人材センターと同じように、高齢者を雇用してくれる企業の開拓をそれぞれの地域で行っている。実際に、それぞれのアクティブシニアが独自に開拓した求職先に就業する率は高い。我々が想定している以上に、シルバー人材センターやアクティブシニアの取り組みは多種多様である上に、各事業所自らが就業開拓を行う積極的な取り組みをしている。しごと財団では、企業の意識を変えてもらうような事業を昨年度から始めており、体験型のコース「しごとチャレンジ65」は今年度からスタートした。インターンシップではないが、体験してもらう事によって最終的には継続雇用や今後の引き受け先になってもらう事を目標としている。このところ話題となっている待機児童の問題についても、高齢の子育て支援員を養成していくといった想定がなされている。今後は、しごと財団の「しごとチャレンジ65」の経過報告と高齢者就労支援研究会で見いだされた知見を一緒にしたシニア就労版コーディネートマニュアルの作成に取り組んでいければという抱負を共有した。


◆ 第12回研究会

日時:2016年11月28日 14:00~16:00
場所:東京都健康長寿医療センター研究所

講師:小塩 隆士 先生(一橋大学 教授)
演題:高齢者就業についてー年金制度改革との関連ー

*第一部 セミナー

日本の高齢者の就業率は、2000年代に入ってから、男女ともに回復し上昇傾向にある。その背景には、高齢者の高学歴化・ホワイトカラー化・健康状態の改善といった長期的構造の変化に加え、公的年金の支給開始年齢の引き上げなど、年金制度改革が進められてきたことが挙げられる。今後の高齢者の雇用促進の為の最も有効な政策は、おそらく年金の支給開始年齢の引き上げである。しかし、高齢者の労働市場の改革と連動しなければ、この改革は当面、高齢者にとってメリットよりもデメリットの方か大きくなる可能性が高い。しかも、従来型の定年延長・雇用継続アプローチには限界がある。高齢労働者の多様で主体的な働き方を可能にするには、第1に「個人事業主化」という方向性(ヨーロッパの例)、第2に長年の勤労生活で身につけた技能・技術の正当な評価が挙げられる。そのためには、被用者保険の適用範囲拡大や公的年金の支給開始までの3~5年に期間を絞った「つなぎ年金」の創設など、社会保険改革が必要である。

*第二部 全体討論

これまで、高齢者の就労は若い人の就業率に影響を与えるのではないかという懸念があり、研究がなされてきたが、結果として、我々が想定しているほど、高齢者の就業と若者の就業には代替関係はないという事が明らかにされている。日本の国民純貯蓄は、今、ゼロになっている。つまり、生産する人が減って消費する人が増えているのである。現状を維持する事も重要であるが、10年位でそのバランスも崩れると想定される。年金を減らし、公的制度を無くすという議論がされているが、それでは全く改革にはならない。単純に生産する人(働く人)を増やしていく事が重要である。高齢者就労支援の方向性としては、平均余命からみると、健康状態が良くなっているのに働いていない高齢者もいる。国が「一億総活躍社会」を謳っているように、定年延長よりも、高齢者から主体的に労働市場へ参入していくことが重要である。


シンポジウム

日時:2017年1月22日 10:00~16:45
場所:東京都健康長寿医療センター研究所

「持続可能な社会へ向けた高齢者就業の展望」(座長:藤原佳典)
※概要につきましては新着情報のページにパンフレットを掲載しておりますので、そちらをご覧ください。
※読売新聞Web版にも取り上げられました。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/network/20170124-OYTEW198689/


◆ 第13回研究会

日時:2017年5月15日 15:00~17:00
場所:大田区シニアステーション糀谷


講師:堀 恵子 先生(大田区福祉部副参事)他、大田区の皆さま
演題:介護・福祉への高齢者支援研修と実践、その後の経過


*第一部 セミナー

東京大田区の65歳以上の高齢者人口は増加傾向で(高齢化率は22.9%)、平成29年度には16万4千人を超えると予測されている。元気シニアを応援するため、大田区10か年基本計画として、高齢者の就労支援、地域活動・交流の場の確保、介護予防等の推進の3本柱で取り組みを進めている。就労支援はシルバー人材センターやいきいきしごとステーションで推進しており、元気高齢者就労サポート事業としては、保育施設や介護施設への就労を希望するシニアに対して、実践的な技術や知識の習得のための講習等を行っている。講習終了後には、就労面接会を実施して、講習から就労に至る総合的な支援を行っている。平成28年の介護補助員の講習・実習(高齢者施設での福祉の仕事体験セミナー)には13名、合同就職面接会には46名の参加があった。保育施設に就労を希望する高齢者向けの保育補助員の養成講習会は6日間(講習4日間・実習2日間)行われ、男女18名が参加した。
このように、高齢者が地域で活躍することは、大田区の地域力の更なる活性化につながるものである。生涯現役を応援する社会を形成し、地域包括ケア体制の構築に向けた大きな原動力につなげていくため、より一層力を入れて事業を推進していきたい。

*第二部 全体討論

雇用者側の求人と高齢者求職者側(以下、求職者側と表記)の求職のミスマッチという問題がある。例えば、夜間の警備や介護の求人は多くあるが、求職者側は体力的にきつい仕事を敬遠する傾向にある。雇用側の姿勢として、高齢者を安い労働力とみなしているわけでもない。事実、求人条件における賃金は若い層と比較しても遜色ない。よく、年齢制限があるのではないかと言われるが、それはハローワーク等であって、概ね55歳以上からの就労を支援しているいきいきしごとステーションでは、独自の求人を生み出す努力もしており、そのような関係性の元求人を出して下さる事業者側からは、元気に働ける人なら80歳でもOKだと言われている。現場からの感覚だが、少子化の影響で若手が少なくなってきているため、シニアの方を活用していかないと労働力不足に陥る危険性がある。特に、警備や清掃などは、2020年の東京オリンピックを控えて何万人も必要だとされており、その人材を集めることは不可能かもしれないというぐらい危機感を持っていないといけないと日々感じている。


◆ 第14回研究会

日時:2017年7月10日 14:00~16:30
場所:東京都健康長寿医療センター研究所

講師:上田 研二 先生(株式会社 高齢社 最高顧問)
演題:株式会社高齢社における高齢者雇用の取り組み

*第一部 セミナー

会社設立以前から、自分自身を含め、定年後の人たちに「働く場」と「生きがい」を提供したいと考えており、2000年1月1日に株式会社高齢社を設立した。何しろ一度聞いたら忘れられない社名で、高齢社ビジネスモデルとしてカンブリア宮殿(TV)にも取り上げられた。その特徴は、①登録時の年齢が60歳以上75歳未満である事②定年制なし③リストラなし④年金併用型で勤務は週3日が標準(働く人の都合優先)⑤1人分の仕事を2人で担当するという「ワークシェアリング方式」の採用⑥期末手当・業績手当の支給⑦経営内容のオープン化⑧人件費に占める変動費の割合が高い(赤字になりにくい)⑨休日割増はつかない⑩就労率の高さ⑪社会貢献活動⑫アットホームな会社(16:00からビールなど)という12が挙げられる。高齢者が働く上での課題と障害には、①健康問題②マッチング問題③社会や受け入れ企業の年齢に対する先入観④各種労働法規と実態の乖離という4点がある。最高顧問である上田氏は2004年からパーキンソン病と戦いつつ、夢と生きがいに満ちた生涯現役人生(一生修行・臨終卒業)を実践している。

*第二部 全体討論

特徴の中に、ワークシェアリングを導入しているとあったが、常に2人一組のワークシェアリングというわけではない。働き方は、働く人(高齢者)が、派遣先の企業に提案している。つまり、週3日の人もあれば、社会保険の適用される日数(時間)働いてもらうケースもある。高齢社に仕事を発注してくれる企業で、一番多いのが東京ガスグループとなっている。高齢者は毎日が日曜だから、土日に働いて休日割り増しが付かなくとも不満は聞こえてこない。そのような働き方だからこそ、子育て世代や若い世代とも仕事が分担していけるのではないか。今後の活動目標の1つに、家事代行サービスの会社を買収し、女性会員を募っている。現段階では200名が登録しているが、500名を確保し、女性版高齢社を目指したい。目標の2つ目に、まだ企画の段階だが、農業ビジネスにも手を広げていきたいと考えている。


◆ 第15回研究会

コアミーティングのみ


◆ 第16回研究会

コアミーティングのみ


◆ 第17回研究会

日時:2018年1月15日 9:30~12:00
場所:桜美林大学 四谷校舎

講師:大川 直人 先生(社会福祉法人池上長寿園 本部・人財課課長)
演題:高齢者就労の現状と課題について

*第一部 セミナー

社会福祉法人池上長寿園の歴史は古く、前身は1962年(昭和37年)に、戦後の混乱期に窮迫していた高齢者の生活を支援するために、大田区内の婦人団体が2年間にわたり、募金・バザーなどの「草の根」の運動を展開し、養老施設池上長寿園が開園した。「未来への創造」歴史を紡ぎ“”に挑戦するという経営理念を掲げ、福祉の未来・地域の未来・利用者の未来・自分自身(職員)の未来を考え創り上げようと活動をしている。高齢者就労支援という視点から見ると、正規職員・非正規職員合わせて850名の内、212名(約27%)が60歳以上の職員であり、最高齢は80歳3名であった。212名の60歳以上の職員の内、52名(24.5%)が10年以上勤続しており、そのように高齢者が働き続けている理由には、9職種16類型という働き方の多様化、同区内在住であるといった要因が想定され、ヒアリングを通して、介護分野への高齢者就労支援には、「安近短(安心、近い、短い時間)=豊かな人生の実現」に繋がるという発想、そして法人がその人のキャリアデザインを支援するという視点が必要である。

*第二部 全体討論

現在働いている高齢者は65歳以上が多いが、長期的に働いている人は女性の方が多い。そこから見えてきたのは、高齢男性は、65歳以上に新規に雇用されている人がほとんどであるという事だ。逆に、55歳から65歳の人の就労が難しいと感じるかもしれないが、55歳~59歳だと正規職員の枠での雇用というケースもあり、総合職ともなれば夜勤なども必須となる。ただし、夜勤がないという条件で採用の場合は、一般職という形態もあり、昇給も転勤もない雇用となる(現時点での人数配分は総合職約300名、一般職約100名)。法人の高齢者には、職員以外にも有償ボランティア(陶芸など趣味活動の先生)や無償ボランティアもいる(多い施設で延べ2000名程度)。無償ボランティアは洗濯物たたみ、掃除、見守りなどをしてもらっている。介護分野はまだ人手不足で、やはりシニア層に期待する部分が多い。介護の現場では、(職員を)育成という認識が多いが、高齢者雇用に関しては、そもそも持っている力を活用する必要があり、その力を発揮できるよう環境を整備していくという「開発」の発想を持つ必要があると感じている。


◆ 第18回研究会

日時:2018年3月12日 14:00~16:00
場所:桜美林大学 四谷校舎

講師:藤本 真 先生(社会福祉法人池上長寿園 本部・人財課課長)
演題:60歳以降の雇用をめぐる実態 企業による継続雇用・人事管理の取組みと労働者の意識

*第一部 セミナー

2015年に労働政策研究・研修機構が実施したアンケート「高齢者の雇用に関する調査」に回答した60歳定年制企業4903社のうち、業務の変化について、定年前と同じ業務だが責任が変わる企業(責任変化型)が46.2%、全く同じ業務(無変化型)34.5%、定年前と異なる業務(業務変化型)は10.3%であった。定年後の給与については、定年時を100%とした場合、無変化型は78.2%、責任変化型は67.3%、業務変化型は64.3%となっていた。被雇用者から見た課題としては、雇用形態や収入について雇用者側と被雇用者側にずれがあることだ。定年後も正社員で働きたいという人が44%だが、実際は契約社員となる。また、全体の3割の人が定年到達時と同程度の給与を希望し、2割が定年到達時の8~9割以上の給料を望んでいるものの、実際の給料はそれほど高くないといった現状にある。

*第二部 全体討論

  • 65歳を超えても70歳を超えても元気な限りは働きたいと回答する人が多い。そのためにも、65歳以上の雇用環境の整備を進めていく事が望まれている。
  • 高齢者雇用促進機構などでは、65歳を超えて働く事ができる企業の紹介や、そうした企業における取組みの普及に向けた活動が行われているが、実際には65歳以上の人々が、65歳に到達するまでと同様に働くことは、加齢とともに難しくなってくるものと考える。
  • 日本人は働く事しか考えないという文化・風潮があり、それが就業率の高さに繋がっているが、高齢期には縮小しながら働く事を考えないといけない。
  などといった議論がなされた。


◆ 第19回研究会

日時:2018年6月1日 18:00~20:00
場所:社会保険出版社

講師:東 憲太郎 先生(公益社団法人 全国老人保健施設協会 会長)
演題:介護助手育成の取り組み

*第一部 セミナー

日本の高齢化率は年々高くなっており、2025年には30%を超えるだろうとの予測もされている。一方で、介護人材は大幅に不足している状況である。団塊の世代が75歳以上になる2025年を見越すと「効率的かつ質の高い医療提供体制の構築」と「地域包括ケアシステムの構築」は急務の課題。このため、平成26年度から、消費税増収分等を利用した財政支援制度「地域医療介護総合確保基金」を創設し、各都道府県に設置。当法人(医療法人緑の風)ではこの基金を活用し地域の「元気高齢者」を「介護助手」として登用し、介護職の業務から比較的簡単な作業(周辺業務)を担わせることで、介護の専門職化を目指している。現場へのインタビューなどから一定の効果が出てきていることを実感している。

*第二部 全体討論

  • 介護助手の男女比は分からないが、周辺業務として、男性は運転・車イスの整備・お風呂掃除など、女性はベッドメイキングや家事的なことがらを行なうことが多いなど棲み分けが出来つつある。
  • 元気高齢者だけではなく学生や主婦も介護助手になりうる。今後、保育分野にも転用できるのではないか。
  • これまでに他の社会福祉法人において、仕事の切りだしをお願いしたことがあったが、福祉職のポリシーとしては生活全般をお世話するという考え方が根底にあり、うまく切り分けが出来ないこともあるのではないか。
  などといった議論が活発になされた


◆ 第20回研究会

日時:2018年7月9日 14:00~16:00
場所:社会保険出版社

講師:石本 淳也 先生(公益社団法人 日本介護福祉士会 会長)
演題:高齢者サポーター ―見解や課題―

*第一部 セミナー

直近の政府データによると、介護業務に従事している人は190万人ほど居るが、実際の現場では介護福祉士などの国家資格保有者、ヘルパー1~2級取得者、無資格者とが混在している状況である。そして、有資格者とそれ以外の者が担うべき役割やスキル、さらには処遇などの「評価」について、それぞれの「差」がはっきりしていない。制度上の位置づけや整理が不十分なまま、人材の養成や確保が進められてきたことが原因なのかもしれない。そのため、抜本的な「機能分化」の重要性が叫ばれている。
また、訪問介護事業では、家事的スキルを介護従事者に求めた結果、若い世代の人材確保やその定着が根付かなかった。介護従事者側も介護サービス利用者側も「介護=お世話をする」という価値観からの脱却が必要である。その上で、社会資源として広く様々な人を介護人材として受け入れることの意義や意味を繰り返し教育していく必要があると考えている。

*第二部 全体討論

  • 現場業務についていない介護有資格者の割合は50%ほど。待遇改善の手段としてケアマネージャー等の別の資格を取って、そちら側の業務をやっている可能性がある。
  • 職員にただ話を聴いてもらいたいだけの利用者も多いが、本当に何らかの介護を必要としている利用者も多い。また、夜になると薬の問題や不眠による昼夜逆転などの問題もあるため専門の資格を持った人材が必要。人材をうまく活用することは重要な課題である。
  • 現場の常勤スタッフの意見として、(無資格の)スタッフをどのように扱っていいか分からないという声を耳にしたことがある。
  • 介護そのものについての思想の根底を作る時期に差し掛かっている。介護とはこういうものだという社会的必要性などを啓蒙するような団体を作っていくことも重要ではないか。
  • まずは、幅広い世代がこのような問題に対して意識を持つことが最初。上に立つ者が積極的に考えを下へ伝えていくことも重要だと思う。トップダウンで変えていかなければならない問題ではないか。
  などの議論が活発に行われた。


◆ 第21回研究会

日時:2018年9月10日 14:00~16:00
場所:社会保険出版社

講師:中井 祐輔 先生(株式会社リジョブ 介護Div. チームマネージャー)
演題:短時間・業務特化で介護業界で働く!介護シェアリングで働く人材を確保するために

*第一部 セミナー

日本は、今後ますます少子高齢化が進み人口が減っていくと予測されている。他の業界では、人口が減ればそれに伴って需要量も減るものだが福祉(介護)の業界においては正反対の減少が見られる。そこで、介護業界で進む深刻な人材不足の解決方法として株式会社リジョブは「介護シェアリング」という雇用形態を提唱している。これは従来型の勤務時間(シフト制)に基づく働き方ではなくて、シフト内の業務の切り分けを行い、それらを複数人で分担するという働き方である。一般の企業も創業期は社長などが自らすべての業務をやっている場合でも、組織の成熟とともに業務分担するスタッフを雇うようになる。介護シェアリングはこれと似たようなもの。「介護スタッフ」でなく「福祉施設の食事の際のホールスタッフ」とすれば、飲食店で働こうとしていた人たちを介護事業所に呼び込めるかもしれない。実際にさまざまな施設で介護シェアリングを導入した事例について報告が上がっている。早番1名分の人件費削減に成功したり、業務特化で短時間勤務という働き方は拡大しており、グループ内の100を超える事業所でスタッフの業務シェアが行われているという話も聞く。今後とも、いかに業務を切り分けていくか試行錯誤が必要である。

*第二部 全体討論

  • 基本的にシェアリングによってコミュニケーションコストが増大したとはあまり聞かない。多くの場合、皆が手伝ってくれている部分があるから効率上がっていると感じているし、感謝が生まれることもある。
  • 人が入れ代わり立ち代わりだと、利用者と介護者とのラポール形成において、利用者が戸惑ったり困ったりしないのだろうか。
  • 地域的な差を想定しているわけではないが、それでも都市部と郊外部では選択肢になりうる事業所の数がそもそも違うため、そういう意味での差異はあると考えられる。
  • シェアリングによって、ゼネラリストが余った時間を満足度の向上のために有効に使っていけると思う。
  • 近年はインターネット応募も増えてきたので、応募者自体のリテラシーも変化してきているような気がする。
  • 福祉業界では信頼が大事だと感じている。そのためにどういう仕事を塊として切り分けるかがポイントになるのではないか。

  などの議論が活発にかわされた。


◆ 第22回研究会

日時:2018年10月1日 14:00~16:00
場所:社会福祉法人池上長寿園 たまがわ

講師:大川 直人 先生(社会福祉法人池上長寿園 経営本部経営企画課 課長)
   千葉 真由子 先生(社会福祉法人池上長寿園 たまがわ事業部門 統括事業部長)
演題:高齢者就労の現状の課題について

*第一部 セミナー

<講演>

池上長寿園では、経営理念のひとつに<SHST>というものを定めている。Safety(安全)、Hospitality(おもてなし)、Smile(笑顔)、Team work(チームワーク)の頭文字をとったものであり、これにより外国人や高齢者であっても理念をすぐに理解して業務に取り組める。現状、職員の内訳を見てみると、正規と非正規がおおむね半々で在職している。介護職員は60歳で一度定年退職をするものの、5年間は再雇用により、その後は非正規雇用により引き続き働く場を提供している。男女とも60歳代のうちは何らかの形態で続いて働いてもらっている状況である。また、雇用継続について内部で調べてみると、10年以上の人が約25%もいる。たまがわ事業部においては約40%が長期にわたり就業している。このようなスタッフの多くは、比較的近隣に住んでおり、週に3日程度4時間のシフトに入っている。朝や夕など、専門職の手だけでは回らないような忙しい時間帯に食事の介助や環境整備、営繕、見守りなどを担ってもらっている。直接の介護はないので、体力面もさほど心配なく働いてもらっている。人間関係がすでに構築されている住み慣れた近隣地域で短時間働いてもらうという「安近短」を実践することで、高齢者就労を通じた豊かな人生の実現の手伝いをさせてもらっている。

<就業者の話:女性/13年目>

・現在の勤務は、週3日であとの時間は趣味を楽しんでいる。
・セミナーで池上長寿園のことを知り、是非働きたいと応募した。
・面接の際に、当時の課長さんと色々話した上で今の業務が良いだろうということで適性を見極められた。
・利用者と世代が近いからこその安心感もあるだろうし、出来る話もあることを3年目に痛感した。
・職場で健康診断なども出来るので、自分としても安心して働ける。
・今後も続けられるうちは、ライフワークとして福祉に携わりたい。

*第二部 全体討論

  • アクティブシニアとして彼ら(彼女ら)を後押しするためには施設側のコミュニケーションが必須である。当然ながら、福祉の提供をするにあたっては全人的なケアが必要だとする見方もあるが、池上長寿園では9業種16職種を準備して、仕事(業務レベル)の切り分けを行っている。本人のニーズや適正を見極めたうえで配置をするように心がけている。
  • 高齢者でも積極的に応募してくるのは、もともと大田区の婦人会として組織がスタートしたという経緯もあるから。そういう人たちが地域のためにというパッションを持って、長寿園にかかわってくれている。
  • なぜ高齢者就労なのカという点については、介護人材の裾野を広げるという側面がある。そのためにも仕事の切り分けが必要なのだろうが、施設が「やってほしいこと」ではなく、本人が「やりたい」こととの紐づけが重要と考えている。
  などの議論が活発にかわされた。


◆ 第23回研究会

日時:2018年10月15日 14:00~16:00
場所:社会保険出版社

講師:柳沼亮一 先生(社会福祉法人三幸福祉会 杜の癒しハウス文京)
演題:高齢者就労の現状の課題について

*第一部 セミナー

三幸福祉会では、三大介護(排泄・入浴・食事)以外のケアを行なう者を「ケア・アテンダント」という立場で働いてもらっている。必ずしも福祉関連の資格を必要とせず、時給制の雇用。業務範囲が広がれば時給もあがる仕組みである。本人が働ける時に働いてもらうという事を意識しており、本人が働ける時間を提示してもらい、極力その時間での雇用を目指している。それにより、本人のライフワークにマッチングした雇用が可能になる。このようにワークシェリングとタイムシェアリングの両方の視点が必要である。
現状では、雇用しているのは全て女性であり、ケア・アテンダントなら出来そうだということで入ってくれている。継続して就業している人の話を聞いてみると、①自らの存在意義の模索、②再度働きたい、③感謝されたい、④社会と繋がっていたい、⑤周辺業務なら迷惑をかけずに自分にも出来るという5つの点が動機としてよく話題に挙がっている。また、独自にケア・アテンダント認定資格を導入して、シルバー層の就労支援を促進している。ケア・アテンダントとして働くシニア層は生き方や仕事への向き合い方の面でプロ意識が高いので、若い世代の職員たちにも良い影響を与えている。このような世代間交流がこの業界を変えていく可能性もある。

*第二部 全体討論

  • ケア・アテンダントという名前についてだが、当初は「介護助手」という予定にしていた。しかし、助手やサポーターという表現よりもアテンダントの方が利用者に寄り添っている感じがするので良いだろうということで、最終的にこのような名前に落ち着いた。
  • どのような高齢者を採用するかという点は基準がない。地域ごとに住民の特徴が異なるからである。施設長決裁になっているので採用後にも配置転換をしたりなどで適性にあわせて対応することが容易である。
  • このような取り組みは、介護領域にとどまらず他の領域においても可能なのではないか。今日の話を聞いていると保育の領域においても実践が可能だと感じた。
  といった議論が活発にかわされた。



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