Research Projects

私たちの研究
私たちの中心的課題は「ヒトを含む哺乳類の身体構造の作り方」を理解することです。
ヒトを含む様々な哺乳類は種ごと固有の形態を呈しますが生まれたときには既に「その種らしい体かたち」をしています。
種に固有の体かたちは胎子期に作られるわけですが、胎子期に一体何が起きているのか、どういった発生プロセスで種と種の体かたちの違いは生み出されていくのかについて、まだほとんどわかっていません(注:ヒトでは胎児(たいじ)と書きますが、動物では「胎子」と書きます)。

年に数個体しか子供を産まない哺乳類の胎子は家畜を除くと標本として集めにくく、また仮に入手できても博物館の現場では標本として極めて保管しにくかったためです。
解剖学者は標本を解剖しなければ仕事が始まりません。
しかし、数少ない液浸標本を博物館は研究者に一度切りの解剖を許可するわけにもいかず、胎子標本が博物館にあってもただ死蔵されてきました。
ところが、2010年代から対象物を非破壊的に観察できるマイクロCT技術が急速に発展し、稀少な胎子標本を壊すことなく、内部を研究する可能性が開けて来ました。
そこで、私たちは国内外の博物館や動物園の倉庫に眠ってきた数少ない胎子標本を掘り起こし、世界に先駆けてマイクロCT技術を適用して、様々な動物の胎子期発生を明らかにしてきました

近年、私たちがこれまで行なってきた胎子の進化形態学的研究に次世代シーケンシング、マススペクトロメトリー、バイオインフォマティクスを導入し、「ゲノム」-「トランスクリプトーム」「メタボローム」「三次元的形態」の各階層を接続し、「動物の形態的多様性の構築原理」を統合的に理解することを目指しています。
そして、画像解析技術、ゲノム科学、情報学、形態学を融合させた新たな学問領域たる「Morpho-informatics  形態情報学」を提唱し、その開拓を目指しています。

本研究室は野外やコロニー、博物館、動物園から様々な動物の胎児サンプルを収集し、自前の高解像度マイクロCTや充実した分子生物学実験機器を用いて、ヒトを含む哺乳類を中心として遺伝子改変マウスや様々な脊椎動物の顎顔面の発生と進化を幅広く研究しています。
具体的には、哺乳類胎子のCT画像や連続組織切片を用いた三次元比較解剖学、野生動物のショートリード、ロングリードによる全ゲノム解析、Hi-C解析、胎子発生トランスクリプトミクス、メタボロミクス、バイオインフォマティクス解析を進めています。

なお、現在以下の7つの助成課題を推進中です。

進行中の助成課題