京都大学探検部 風蓮川(風連川)カヌー報告

ecku20040922/小薮大輔

漕行可能距離約75km。風蓮川という名前はアイヌ語の「フーレ・ペツ」(赤い川)に由来するらしい。泥炭地を流れる川特有の赤茶色く泥濁した川だ。河口の汽水湖・風蓮湖周辺の湿原 はラムサール条約登録地になっていて、タンチョウの営巣地でもある。出版されている資料のなかで参考にしうるのは小学館91年刊行の「日本の川地図101」(絶版)くらいだと思う。 ネット上では以下のようにいくつか風蓮川に関するレポートや有料ツーリングがあるが全て上風連橋(乙)以降の漕行記録に限られていて、それより上流からとなると参考になる資料はほ ぼ見当たらないのでここに公開した(本稿は2004年京大探検部ルームノートより転載加筆)。なお、上風連橋というのは上流(甲)と下流(乙)のふたつがあるので注意が必要。

かわうそ的つれづれ写真日記

かわうそくらぶの河原番

川旅日記

フローティングリーフ

Kayak Expedition on Furen River (YouTube)

鉄路なら釧路駅、空路なら中標津空港が起点となる。我々が取り付いた地点A新富橋は中標津空港と釧路駅のほぼ中間に位置 する。首都圏からだと成田•羽田→中標津空港へ直行便があるうえ,地点A新富橋は中標津空港からは20キロ前後の位置にあ るので意外とアプローチは簡単である。釧路・中標津からはタクシー、もしくは阿寒バス「釧路羅臼線・釧路標津線」に 乗って釧標国道272号と風蓮川との交差地点でおろしてもらうのが良い。272号は釧路と中標津空港を結ぶ道でもあるため交 通量も多いのでヒッチハイクも有効かもしれない。なお付近には公道しかないので車をデポするような場所はない。ただ一 般的にはここに掲載した新富橋からの狂気ルートではなく道道123号沿いの風林橋(風蓮ではなく風林。ややこしい。)か らのお気軽ルートを薦める。前者はただの苦行だ。もう行きたくない(いや...ちょっと行きたいかな…)。風林橋からだと 倒木ダムもほとんどなく,快適なツーリングになるだろう。おそらく一泊で河口に出れる。ただし河原が大きくなく、あっ ても高さがないので浸水の危険性があり、テントが張れる場所はかなり限られている。幕営可能な場所は上流から、新富橋 前後、上風蓮橋(甲)左岸、下風蓮橋左岸付近、風蓮橋左岸、河口近くの鮭留め付近の岸など。良さそうなテン場が見つか れば、その日はそれ以上進まない勇気も必要かもしれない。なお、付近に店はないので、水と食料は十分に。2004年時点で 川に一番近い上風蓮集落の商店(Aコープ)でも開南橋(123号との交差)から片道4kmある。

風蓮川の流域地図

8/22 舞鶴にすむタケの親父さんが舞鶴駅でピックアップしてくれ、港まで送ってくれる。舞鶴港からフェリーに乗って小樽へ。時期柄、乗客は似たようなワンゲラーやバックパッカー がとても多い。安いしね。それにしても、こんなに大荷物があるというのにスエポンがしれっとギターを持ってきた。スエポンいわく「いや、にぎやかになるかなって」。頃合いを見て燃 やしてあげよう。

8/23,24 小樽より列車とバスを乗り継いで釧路→新富橋に到着。出会った地元の人から熊がでるよと脅される。一応熊よけスプレーを持ってきたが緊張する。川にかかる新富橋橋桁の 下でテン場の準備をしていたら、土建屋風の中年男性が橋から僕らを発見。工事はないはずだし、橋の下なんだから道路の邪魔でもないのに「何しとんやーお前ら」と追い出される。近く をウロウロし、道路からは目につかなさそうな場所を選定し、テン場とする。事前調査の通りやはり周囲には集落もなかったので、新たな食料は補給できず仕込んで持ってきた豚肉の味噌 漬けから豚汁を作る。嵩張るだろうからという溢れる善意からギターを焚き木にしようと提案するが、スエポンはギターを全く離そうとしない。

8/25 8:10 事前調査では「水量が少なく、漕ぐのは難しい」とのことだったが先日の台風による降雨のためか予想以上に水量があったので計画書地点Aから出艇することになる。僕 とキムがアドベンチャー艇、スエポン、タケがアウトサイド艇に乗船。水は非常に冷たい。川(というより流水が土壌を削った深い溝)は3mあるか無いかというくらいか。水深は膝にも 届かない。原野をゆく。亜寒帯気候のはずなのに、熱帯のジャングルのように鬱蒼とした密林が両岸からせまっていて、非常にものものしい雰囲気である。20分に1回のペースで現れる倒 木が行く手を完全に塞ぐので僕とキムは漕ぐのをほとんど諦め、川を歩いてフネを引っ張って倒木越えをしていくことにする。川を下れば下るほど倒木は減っていくだろうとタカを括って いたが、それは甘い考えだったことを後々思い知らされることになる。高低差がほとんどないせいか、川の蛇行が激しい。川が屈曲するたびに現れる河原にはアライグマやシカ、イタチの 足跡だけでなく、明らかに熊のものと思われる足跡が無数に見られる。また、近くの自衛隊が実弾訓練をしているのか、時折ドゴーン、ドゴーンと胸のおくまで響くような射弾音がぼくら を驚かせる。流れ弾が怖い。景気付けに熊スプレー(唐辛子仕様)を試し撃ちしてみた。バシューッ!唐辛子の煙幕が凄い勢いで放たれる。すぐさま激しく咳き込むメンツ。涙と咳が止ま らない。これは強烈だが自爆も酷い。撃つ時は防備した上で撃つべしと学ぶ。12:00 倒木の嫌がらせに苦しみつつ、やっとの思いで諒和橋につく。スタートから3kmしかきてないのに4 時間かかってしまった。計画ペースより相当に遅れている。今日はほとんど漕げず歩いてばかりであった。水量、川幅、倒木の調子も相変わらずで、やはりペースをあげることができな い。16:00、上風連橋(甲)につき、上陸して牧草地の先をテン場とした。牧草地だが全く人がいない。この時点で計画より丸一日遅れのペースになってしまった。事前情報から蚊地獄を 恐れていたが、特に蚊はいない。ダニもいない。もうだいぶ気温が低いせいだろうか。一日目からハードな一日であった。ただ、こんなところがまだ日本にあったのだという衝撃もまた大 きい。(休憩を除いた行動時間7時間、行程7km、時速1km)

8/26 みな昨日の疲れが取れず、そして寒さのせいで効率よく動けず、出艇11:00とかなり遅れる。倒木はまだまだ多いが初日ほどではない。この調子でどんどん減っていってくれたら 嬉しいのだが。熊の影が色濃く、本格的にこわくなってきた。16:30二つ目の支流合流点あたりでテン張る。出艇が遅れたことで、この日の行動はかなり制限されてしまった。計画のス ケジュールに追いつくため、明日の行動は迅速にせねばならない。その横でスエポンがギターをジャカジャカやっている。燃やしたい、あの物体を燃やしたい。衝動を胸の奥で必死に抑え つつ床に就いた。(休憩を除いた行動時間5時間、行程4.5km、時速0.9km)

8/27 9:00出艇。水量もだいぶ増え、倒木もグッと減ったようだ。快調にスピードを上げ、距離を稼ぐ。途中、エゾジカのつがいを目にする。すぐに逃げていったが、なんとも美しい 姿であった。休憩のため河原に上陸したとき、ガサガサ!と草むらの奥で何か黒くて大きいものが動いた。凍りついたが、のそりのそりと去っていく気配がしてほっと胸を撫で下ろした。 気分よく進むことができた午前中とは打って変わって、倒木がまた増え始める。その規模も今までのような甘いものではなく、胴回りが3mを越えるような大木が折り重なるようにして行 く手を阻む(写真参照)。水量は多いが川幅が狭いので無数の大木が左右の岸から折り重なって橋を形成している。高さも3mはあるだろうか。フネを持ち上げて倒木のダムを登り、超え る。半時間かかった。もはや手に力が入らない、ようやく超えたと思ったら、先行して流れを曲がって行ったスエポンの「なんやアレ…」ともらす声がする。また化け物のような倒木ダム が現れる(写真参照)。3mはあるだろうか。絶望。ただこれは流石に乗り越えられない。岸を上がり、フネを持ち上げてダムを巻いて乗り越える。この絶望的な状況は記録するべきだと いって、乗り越えた所で写真をとる(写真参照)。天候も芳しくなく、非常に寒い。こんなのが三日続いてしまったら発狂してしまう。やばい、これはさすがにやばすぎる。4人だからま だ「マゾだ、マゾだあ」と自分たちの追い辞められた境遇を楽しめるが、一人でこんな所には来るのはまっぴら御免だ。いい具合のテン場が見つからなかったが、17:00に下風蓮橋から 1km手前の泥炭質の左岸でテン場を張る。泥炭地を水が削っているせいか、水もドロドロである。浄水器が詰まって仕方がない。気分転換に釣りをしたら、10 cmくらいのムール貝に似た 胡散くさい貝が釣れた。うにゅーとのびた貝の腕足を引っ張ってやると、水管からブチューと水がでる。それにしても刺激されるのが食欲である。煮て醤油を漬けて恐る恐る食べてみる と、意外と旨い。これは料理次第で案外いけるかもしれない。疲労のためか皆口数が少なく、焚き火談義は不発に終わった。焚き火の前でウトウトしてるスエポンを横目にギターを取って 焚き火に入れようとしたら急に起きて機敏に奪い返された。(休憩を除く行動時間7時間、行程13km、時速1.9km)

8/28 8:15出艇。昨日と打って変わって天気も回復し、気持ちもいくらか軽くなる。今日こそ倒木が少ないことを祈るばかりだ。9:00下風蓮橋を越える。このペースなら当初のスケ ジュールに追いつけそうだ。頑張らねば。川幅もかなり広くなり、倒木ダムもグッと減ってきた。原生林を静かに流れる風連川はとても美しい。来てよかったとようやく感じ始める。倒木 をいくらか越えながらもスピードに乗って快調に進む。また、両岸の植生が森林から草本群落にすこしずつ移り変わってきているのが分かる。途中、休憩がてら岸を登ると気持ちよく開け た牧草地が広がっていた(写真参照)。数枚記念写真をとって興じる。13:00上風連橋(乙)を過ぎる。ここでやっと計画ペースに追いつき、気分が俄然高まってきた。川も蛇行が緩く なってきて、かなり漕ぎやすくなった。だが、キムチが熊らしき黒い姿をみたといい、また気分が沈む。14:00 開南橋に着く。橋のたもとでテン場を張り、キムチと僕は4km先の上風連 の集落まで商店を期待して買出しに行くことにする。集落まで向かって歩いている途中、北海道感溢れる「牛横断注意」の道標が立っていた。上風連で会う人会う人、みな口をそろえて 「熊出るよー、危ないよー」と脅しを掛けてくる。買い物をしたAコープで店長のおじさんに妙に気に入られ、ただで色んなものをくれる。さらに、僕らが河口まで出たら車で迎えに来て くれるという。いい人だ。今晩の飯は久々に豪勢だ。照り焼きと串焼きにご飯がすすむ。みなの表情も明るい。ビールが旨い。最高だ。でも台風が日本に近づいているというラジオの気象 予報。大丈夫だろうか。(休憩を除く行動時間 5時間、行程13km、時速2.6km)

8/29 8:40出艇。朝起きて支度をしているとアウトサイド艇が少ししぼんでいるのに気付く。空気がもれている。空気を入れ直す。が、空気の抜ける音がする。弁が少しおかしくなっ ているようだ。接着剤で布テープを貼って応急処置をする。12:00に風林橋を越える。支流が合流するたびに水量は増えるのだが、また倒木ダムが増えてきた。それも一回の倒木越えで 30分近くもかかるような規模の大きいものになりつつある。キムチの顔色が悪い。嫌な予感がする。そして現れる鬼のような倒木の群。僕らをあざ笑うかのように。フネを持ち上げ、やっ とのことで倒木を越える。そのあとも何回か倒木越えを強いられる。ぼくも体力よりも先に精神にガタがきそうだ。キムチは明らかにやつれて見え、頬もコけて見える。17:00に風林橋 から左岸2つ目、の支流合流点の姉別原野にやっと辿り着き、テン場を張る。キムチの口数が少ないので、「大丈夫か?」と聞くと、キムチは薄笑いを浮かべて「うん、大丈夫、大丈 夫。」と返答してきた。いや大丈夫じゃないだろ。目の焦点も微妙に定まっていない。心配が深まる。食事のあと、河原で牛の糞を踏んづけてしまったキムチは、「ふざけんなオイ!」と 糞に向かって怒鳴りつけていた。心配は更に深まる。タケ、スエポンも疲労困億しているようにみえる。ぼくも今日はひどく疲れた。今日はみんな早く寝るべきだな。が、ラジオは台風が 鹿児島に上陸したといっている。そのまま北上し、あさってには北海道にも上陸する恐れがあるという。スエポンと協議し、明日は起床を早めて早朝に出発し、できれば2日分の行程にあ たる距離を駆け足で抜けて第三エスケープ地の厚床に向かい、JRの駅で台風が過ぎ去るまで避難すべきだということになった。(休憩を除く行動時間7時間半、行程21km、時速2. 8km)

8/30 昨晩の残り飯と紅茶をかきこみ、7:20出艇。予報によると今日は午後から雨が降り始めるという。原野の風景を楽しみたいが、安全を考えたらここは早めに抜けないといけな い。10:00姉別川と合流して以降、水量は一気に増え、川幅も昨日の2倍近くになった。倒木ダムもいくらかあるが、規模は小さく迂回して漕ぐ抜けられる。無名川との合流以降は両岸に 広大な湿原地帯が続く。上陸してみると、身の丈以上あるスゲ草が茂り、地平線の向こうまで湿原の切れる先が見えない。こんな所に迷い込んだら出てくることはできないな。川はここよ り先、倒木も全くなく、ゆったりと流れ始める。運河のようにまっすぐ走っているので、人の手が入っているのかもしれない。酒を飲みながらのんびりと下りたいものだが台風が怖い。な んとも惜しいが仕方ない。11:00風連川橋に到着。雨が降り出す前に間に合ったようだ。急いでフネを撤収し、JR厚床に向けてヒッチをはじめる。開始5分でつかまる。ツイている。駅 でウダウダしたあと、上風連の集落で仲良くなったおじさんに電話をかけてみた。台風が来そうだから一旦避難することにしたと伝えると、「んなら、ワシんとこに泊まりにきたらえ え。」といってくれる。近くの温泉にも連れてってくれた。あぁ生き返る。晩はおじさんの経営するスナック(来客なし)で泊めてもらうことに。親切が身に染みる。(行動時間3時間 半、行程12km、時速3.4km)

8/31 おじさんに別れを告げ今日こそは旨いものを食べようと根室に向かう。外は台風のせいで風はとても強いが、不思議と雨は少ない。北上してくる間に水分を吐き出しきってしまっ たのだろうか。風に煽られたスエポンが吹き飛ばされそうになっている。できれば回らない寿司を食べたいが、電話帳で回転寿司を探す。見つけた店でむさぼるように回転寿司を食べる。 うまい。とてもうまい。それに安い。機嫌がよくなった僕とスエポンは後輩へのおごり文化のない部の慣例を破って、少し元気を失っていたキムチとタケの分を払う。夜は厚床駅の軒先で 寝場所を確保する。外はすごい風。川でテントを張ったままだったらテントが吹き飛んだかもしれない。避難して正解だった。8月が終わった。

9/01 朝起きると台風は既に過ぎ去ったようで、今日は一転晴れ空だ。風連川橋に戻り、8:00再出発。しかし、陸上よりも川の上は風が非常強い。フネが風に煽られてコントロールが 利かず、まっすぐにフネを維持できない。危険と判断し、すぐ1km先の鮭止めのヤナで上陸し、番屋の前でまた停滞することに。暇つぶしにヤナのまわりをぶらぶらしていると、鮭が遡上 してきていることに気づく。じっと見ていたら大物の鮭が二匹飛び跳ねた勢いでヤナに上がってしまった。放っておいても死ぬだけなので自然の恵みとして有り難く食べることにする。オ スとメスがそれぞれ一匹ずつ。メスをさばくとお腹から大量のイクラがでてきて大興奮。海から遡上してきたばかりだろうし、エキノコックスも他の寄生虫も心配はないのだろうというこ とで生で食べることに。お米を炊いて、醤油ととともにイクラ丼にして食べる。うまいー。身は石狩鍋ムニエルにして食べる。ごちそうだ(しかし、後から知ったことにでは肝吸虫がいる らしく鮭の生食は厳禁らしい。普通は一度冷凍して殺すそうだ…。エキノコックスも10年後が怖い)。(行動時間1時間、行程3km、時速3km)

9/02 昨日の鍋の残りをすすって、9:00再出艇。ヤナを右岸からポーテージ。今日は昨日に比べるとだいぶ風もおさまったようだ。川の水はすでに汽水になっているのか、周辺の植生 もだいぶ変わってきている。慎重に漕ぎながら10:00河口に到着。遠くまで広がるオホーツク海。タンチョウヅルが飛んでいる。きれいだ。風景に心を洗われながら風蓮湖をぐるりとほ ぼ一周する。その後、ヤウシュべツ川を遡上して万年橋でテン場を張る。留守本部に連絡を入れてプラン終了。橋の下で用を足していると、花束とお菓子、ジュースが入ったダンボールが 置かれているのに気付く。ここで誰か死んだのだろうか。タケが少し恐がっている。だが、ダンボールのすぐ横で用を足してしまったことを考えると、崇られるとしたら、まずオレだ。

総評 予想以上の倒木の多さに地獄を見た。我々は荷物も多かったので、毎度の倒木越えは応えた。水に全身浸かる必要もあるので、真冬だったら命に関わる。計画段階で日程を多めに とったのは正解であった。行動記録を見ていただくとわかるように、全体的に時間比で距離を稼ぐことが全然できなかった。だが全体を通して瀬とよべる瀬もない。やろうと思えば遡上も できるほどの流速である(狂気の沙汰だと思うが)。もし台風がきていなかったとしても、8泊で行くのが適当であったようにおもう。8月末とはいえやはり北海道は寒い。一方で、気温 が下がり始めていたせいか、吸血昆虫があまり多くなかったのが幸いであった。核心部は272号と928号の間で挟まれた領域だろう。倒木多く、水量少なし。また、倒木は多いのに乾燥し た倒木がほとんどないので焚き火の付きに難がある。気楽に風蓮川を楽しみたいのなら928号もしくは123号との交差部(風林橋)から取り付くのがよいだろう。「日本の川地図101」(絶 版)によると、「雪解けの時期には洪水のような状態で、水位は2mをゆうに超える」とある。その時期だと地点Aからの取り付きも悪くないかもしれない。初日の自衛隊演習場付近以外 は川の水はドロドロで浄水器がなければ飲めたものではない。エキノコックスはMSRの浄水器で除去できると信じて、浄水は特に煮沸しなかった。ただ、下流に近づくと牧草地に入るの で、水は家畜の糞尿が混じっていると思うので生で飲むべきではない。生のイクラを食べてしまったわけだけど、特に腹痛などはなかった。熊とのニアミスは何回かあった。熊スプレーを もっていったのは正解であった。出会う出会わないは運次第であろう。河口を出た後の汽水域の湾は風が強いが北海道らしいダイナミックな風景で楽しい。台風の影響で風が強かったため 断念したが、ここでテント泊するのも楽しいと思う。北海道の人は旅人に優しいので、すぐにヒッチハイクに乗せてくれる。バスも手を上げればどこでも止まってくれる。熊影に怯えなが ら、鬱蒼と茂る原生林を抜け、無数の絶望的な倒木を越え、台風をいなし、寄生虫の入った生鮭を食べ、9日かけてようやっと海に着いた時の「もう二度とやりたくねぇ…」感をぼくは忘 れることはないだろう。だが今までで一番の達成感のあったプランとなった。ただ、プランにギターとか不要だから、マジで。