# Q: どういう研究をやっていますか?
ヒトを含む脊椎動物の「形態」が私達の興味の中心です。私達は進化生物学、古生物学、人類学、比較解剖学、発生学、バイオインフォマティクス、ゲノミクスの境界横断的研究を志向し、脊椎動物における形態の形成、進化、機能・生態的意義といった基礎的研究から、先天形態異常の病態理解を視野に入れた生物医学的研究を行います。PIである小薮は哺乳類に強みをもちますが、研究室としては脊椎動物全てを関心対象としています。これまでの代表的的研究として、哺乳類の頭部相同性問題 (2012, PNAS; 2021, PNAS; 2024, Philosophical Transactions of the Royal Society B)、羊膜類の脳サイズと上後頭骨の発生タイミングの共進化 (2014, Nature Communications)、コウモリ類における喉頭エコーロケーションの進化的起源 (2021, Current Biology)、コウモリ類の新生児生活史とその発生学的特異性 (2024, Proceedings of the Royal Society B)についての研究などがあります。近年は、JST創発的研究支援事業のサポートを受け(2030年まで)、哺乳類全目の胎子期発生の比較研究と空間的トランスクリプトーム研究の比重を高めています。
# Q: ラボの体制は?
PIの小薮の本所属(雇用主)は中山大学ですが、国内でもPIとして研究者番号と研究室を維持しており、国内の研究者とも共同研究を継続しています。研究拠点は小薮がPI・客員研究員を務める筑波大学のプレシジョン・メディスン開発研究センター・ゲノム形態情報学分野(以下筑波ラボ)と、本務校の中山大学生態学院(以下深圳ラボ)の2箇所があり、双方にチームメンバーが在籍しています。筑波ラボではオミクスおよび先天形態異常研究のプロジェクトに主軸を置いている一方、深圳ラボでは多様なプロジェクトを推進しています。
# Q: 研究室に参加したいのですが?
深圳ラボではポスドク研究員の枠にまだ余裕がありますので、ご興味ある方はお問い合わせください。ただし、学内規定により応募時点で学位取得後3年以上の方は採用できません。筑波ラボでは学術振興会特別研究員PDの受け入れが可能です。
深圳ラボのある中山大学(英語名: Sun Yat-sen University) は日本とも縁が深い孫文(別名:孫中山 Sun Yat-sen)によって設立された大学で,2025年版 Nature Index で世界13位にランクされている中国の有力研究型総合大学の一つです.中山大学の本部キャンパスは広東省広州市にありますが、私達の研究室は香港に隣接する深圳キャンパスにあります。私の所属する中山大学生態学部は、1888年にアメリカのキリスト教長老会が開校した嶺南大学 (Canton Christian College) に源流があり、中国国内では珍しく自然史研究の長い伝統を持ちます。中国における「生態学」は我々のイメージする生態学に加え、分類学、形態学、進化生物学、行動学、保全生物学など全てのマクロ生物学を含んだもので、中山大学生態学部は、その「生態学」において中国国内の一大拠点となっており、中央政府の教育部による格付けでは、浙江大学と並び生態学分野における国内1位の評価を受けています。また、「生態学」だけで独立した学部を有しているのは中山大学のみとなっています。
中山大学でのポスドク研究員の基本年俸は340,000人民元(約700万円)で、博士学位取得大学がいわゆる世界大学ランキングで200位以内の場合は、広東省から更に120,000人民元(約250万円)が基本年俸に加算されます。職員宿舎での居住が可能で(賃料約4万円。単身者35m^2、家族持ち65-80m^2)、中山大学附属病院で標準治療を無料で受診可能です。また、ビザ取得や生活の立ち上げなどは、中山大学と当ラボの秘書がサポートします。深圳ラボでは博士課程の受け入れも可能ですが、日本人はHSK5級をクリアする必要があり、ハードルが高いのが現実です。
正式な参入ではなく、短期滞在や研究インターンを希望する方も歓迎していますので、お気軽にご連絡ください。
# Q: 研究室の強みは何ですか?
私達は自ら野外に趣き、非モデル動物の希少サンプルを収集することを重視しています。国内外での野外調査、協力大学・動物園との共同研究によって蓄積した、7000点以上におよぶ世界屈指の非モデル動物胎子コレクションを基盤とした研究が私達の強みです。技術的には、マイクロCT解析、連続組織切片の3次元再構築、ライトシート顕微鏡解析などの3次元形態解析に強みがあります。さらに、これに網羅的遺伝子発現解析を加えた、3次元空間的トランスクリプトームの研究を推進しています。また、オーストラリア国立大学 (Laura Wilson Lab)、チュービンゲン大学 (Ingmar Werneburg Lab)、フランス国立衛生医学研究所 (Alain Chédotal Lab)、CNRS/モンペリエ大学 (Alexa Sadier Lab)、ヘブライ大学 (Avihu Klar Lab)、ベトナム科学アカデミー (Vuong Tan Tu Group)、広州大学 (Kai He Lab)、香港市立大学 (Jun Li Lab)、BGI (Fang Xiaodong Group)などと国際共同研究を進めています。
さて、話が少し飛びますが、京都大学には「山岳部」と「探検部」という学生団体がありました。PIの小薮は学部時代、後者の団体で活動していました。両団体の源流は同じなため、思想や文化も似ている兄弟団体なのですが、ひたすら登山を極める正統派の山男集団の山岳部に対し、傍系の探検部は川下り、岩登り、山登り、洞窟、狩猟、野外調査、民族学調査、民俗学調査、都市調査など、アレもコレもやる「山師(※)」集団でした。探検部は詰まるところ中途半端なのですが、その道のプロになりきらず、興味を広く保つことで、違う角度でアマチュアらしく「あれは何だろう?」と素直に問えることが強みなのではないかと思ってきました。正統派の研究や王道は他に任せ、私達は誇り高き亜流として、アレコレやる山師的気風を大切にしたいと思っています。
※山師: (鉱山の採掘事業がきわめて射倖的、場あたり的であるところから転じて ) 投機的な事業をして金もうけをたくらむ人。山をはる人。詐欺師。ペテン師。
# Q: どういうバックグラウンド知識が必要ですか?
学部レベルでは、進化生物学、発生学、遺伝学、生態学の履修が重要です。古生物学、形質人類学、解剖学、分類学も学科や大学によっては履修が難しいですが、重要な科目であり、研究室参入後に自習することを推奨します。統計学の習得と実践も重要です。ポスドク研究員は、上記にあげた領域だけでなく、獣医学や医学、歯学、バイオインフォマティクス、神経科学、数理といった幅広い分野からも歓迎します。研究室のPIである小薮は特に頭部を専門としていますが、メンバーの研究対象は頭部に限定しません。また、手法の面では、ウェット中心に研究を行っているメンバーもいれば、ドライのみを行っているメンバーもいます。
# Q: 研究室にはどういった機材がありますか?
筑波ラボには、自前のマイクロCT(島津製作所 Inpexio SMX-90CT plus)、蛍光実体顕微鏡、蛍光生物顕微鏡、ミクロトーム、クライオスタット、バーチャルスライドシステム、各種分子生物学機器があります。プレシジョン・メディスン開発研究センターでは、GC-MS、LC-MS、ショートリードシーケンサーのNovaseq 6000とロングリードシーケンサーのSequel IIeが利用できます。深圳ラボでは、ナノCT(ZEISS xradia 515 versa)、ライトシート顕微鏡、ミクロトーム、クライオスタット、バーチャルスライドシステムなどが利用できます。
お問い合わせ: dsk.8evoluxionアットgmail.com