ワークショップ2
「あなたの知らない世界?―現地スタッフの本音―」
粟飯原 志宣 (早稲田大学日本語教育研究科)
神吉 宇一 (長崎外国語大学)
日本人同士が日本語で話しているとき、日本人同士で日本語ですから、言葉の意味が通じないことはほとんどないと思います。でも実際には「今、私が話していること、たぶんこの人に通じてないよね」と思うことがあると思います。言葉の辞書的な意味が伝わることと自分が伝えたいことが相手に伝わることの間には、ずいぶんと距離があるものです。ところが、外国人、つまり違う言葉を話す人たちとコミュニケーションを行う場面では、しばしば「言葉が通じる=意図が通じている」と勘違いしてしまうことがあります。
本ワークショップは、アジア地域の日系企業で、英語や日本語を使って日本人と一緒に働く現地スタッフの声を素材として扱います。その素材から、現地スタッフが仕事を通してどんなことを考えているか、現地スタッフがどんなことに違和感を持っているかをみていきます。その上で、ワークショップ参加者の今までの経験も踏まえ、海外の日系企業において,日本人スタッフと現地スタッフが相互理解を深めながらよりよいチームとして仕事を進めていくためにどうすればいいかを考えていきます。本ワークショップは、グループワークを中心に進めます。ワークショップの最後には、各グループで話し合ったことを全体で共有する時間も設けます。「アジア地域の日系企業」といっても、その状況は多様、千差万別です。したがって、「こうすればうまくいく」という正解を出すことは難しいことだと思います。ワークショップを通して、多様な視点や考えに触れることで、参加者のみなさんがご自身の直面する課題を解決するための糸口を見出せるようになるといいなと考えています。
本ワークショップは、大まかに以下のような構成で行います。
1.情報提供セッション:大学におけるビジネス日本語教育の潮流
2.アイスブレイキングセッション
3.ワークセッション:「あなたの知らない世界?〜現地スタッフの本音」
4.共有セッション:ワーク内容の発表
通常のワークショップで行う最後のリフレクションセッションは、今回は「宿題」とします。このワークの経験を各自の経験と照らし合わせて、じっくりとリフレクションしてみてください。そして、その後の取り組みも含めて、またぜひご報告いただければ、ビジネス日本語教育への反映や現場への還元も進むと思います。多くの方のご参加をお待ちしています。
【コーディネーター】
神吉 宇一 (かみよし ういち)
長崎外国語大学特任講師。大阪大学大学院言語文化研究科博士後期課程単位取得満期退学。小学校教員、政府系財団職員など正規・非正規30以上の職を経験して2013年9月末より現職。現在の興味関心は、地域づくりと定住外国人の日本語教育、専門日本語教育における日本語教師の専門性、活動型日本語教育の設計と実践など。主著に『日本語教育学のデザイン』。
粟飯原 志宣 (あいばら しのぶ)
証券法人営業、銀行系経済研究所、香港現地法人中堅管理職を経て、1998年日本語教育に転身。経歴:香港日本文化協会 (非常勤講師)、香港大学専業進修学院 (プログラムマネジャー)、早稲田大学日本語教育センター (常勤インストラクター) を経て、現在早稲田大学日本語教育研究科博士後期在学中。主な研究キーワードは専門日本語教育、ビジネス日本語教育、理論構築、教育内容の汎用性、接触場面。