企業は、人々が集まって活動する組織です。しかし、その組織が実際にどのように行動するのかは、経営者の意思だけで決まるとは限りません。従業員の考え方や行動、企業を取り巻く様々な利害関係、そして経営管理の仕組みなどが複雑に関係しています。私は、企業がどのようなシステムのもとで活動しているのか、そのシステムからどのような行動が生み出されるのか、そして、その行動を外部からどのように理解できるのかという問題に関心を持っています。
ここでは、これまで取り組んできた主な研究を、3つのアプローチに分けて紹介します。
一般的に、組織は目標を持ち、その目標を達成するために資源をどのように利用するかを決定します。こうした経営目標や経営戦略は、組織の活動を方向づけるものです。では、「組織のすべての構成員が、組織の目標を追究するでしょうか」。この点、Merchant & Van der Stede(2023)は、組織におけるコントロールの問題を、方向性の欠如(lack of direction)、動機づけの欠如(lack of motivation)、個人的限界(personal limitation)という三つの観点から整理しています。すなわち、構成員は、自分に何を期待されているかを理解しているのか、それを実行するために十分な努力を払うのか、そして、それを実行する十分な能力を持っているのか、という問題です。こうした問題を扱うのが、マネジメント・コントロール・システム(MCS)に関する研究です。
私は、こうしたMCSが実際にどのような効果をもたらすのか、特に、望ましいと考えられている仕組みが、時として予期しない行動を生み出すことに関心を持っています。具体的には、企業の目標設定が従業員を非倫理的な行動に導いてしまうことはないか?(Fukushima & Yamada, 2024 BAR)、公正な評価を目指す制度が、かえって従業員の不満を生み出すことはないか?(Yamada & Fukushima, 2026a SSRN)、企業間の信頼は常に望ましい行動を促すのか?(Yamada & Fukushima, 2026b SSRN)などの研究をしています。
コーポレート・ガバナンスとは、企業が「株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」(東京証券取引所、コーポレートガバナンス・コード)のことを言います。こうしたコーポレート・ガバナンスの仕組みは、日本の経営慣行にも大きな影響を受けています。では具体的に、日本の経営慣行のもとでは、どのようなガバナンスが機能し、企業の行動をどのように形作っているのでしょうか?経営者と株主の利害対立だけでは説明できない、日本企業に特徴的な利害関係はないのでしょうか?これまで日本企業のガバナンスについて、親子会社関係(Fujita & Yamada, 2022 JBEM; Yamada & Fujita, 2022 Sustainability)、銀行との関係(Sakawa, Watanabel, & Yamada, 2017 AQAFA)、外国人株主の役割(Ishiguro & Yamada, 2024 ARA)などの視点から分析してきました。
企業は私たちの生活に深く関わっているため、企業がどのような行動をとっているかは、企業の経営者や従業員だけでなく、企業外部の様々なステークホルダーにとっても重要です。また、制度やルールが企業にどのような影響を与えているか確かめることも必要になります。しかし、企業外部のステークホルダーにとって、企業内部の情報を知ることは容易ではありません。そこで財務諸表を中心とする様々な企業の公開情報を用いた企業行動やその意図の分析、あるいは情報そのものの性質について研究しています。これまで企業グループ内の地理的構造と企業行動(Yamada, Sakurai, & Ishida, 2020 RIBAF)、情報開示と実際の投資の関係(Sakawa, Watanabel, Yamada, & Duppati, 2020 PBFJ)、経営者による業績予想(Yamada, 2016 ARA)、税制と企業行動の関係(鈴木・奥田・米谷・田村・村上・山田, 2024, 編著書)などについて研究してきました。