山田ゼミの特色は会計学の一分野である「経営分析論」について専門的に学習・研究できることです。
いろいろな考え方があるので一概には言えませんが、会計学は企業活動を公正なものにするために「経済活動をできるだけ網羅的に正確に記録し、それを利用する、それに関係する事象について分析する、あるいはその仕組みを考える」ことを目指した学問であると思います。山田ゼミでは、主に会計情報を「利用する」あるは「企業の経済活動に関係する事象について分析する」部分に焦点を当てています。
そもそも会計情報(財務情報)とはどのようなものでしょうか?会計の対象となる経済活動(ビジネス)には、財やサービスを生産し取引(売買)する、財を保有する、お金を貸す・借りる・支払う・調達するなどの様々な活動が含まれます。人々が経済活動を行うとき、それを記録し確認したいと思うことは自然なことでしょう。実際、経済活動を記録するという意味での会計の歴史は非常に古く、例えばメソポタミア文明では人々が農耕生活へ移行したことに伴い穀物や家畜の数量をトークンという粘土製のコマで記録するようになったといわれています(私の専門ではありませんが、会計の歴史に興味がある方はぜひ「会計史」という分野を学んでみてください)。現在では、世界中のほぼすべての企業において、日々、経済活動が記録され、上場企業では年(あるいは四半期)に一度のペースで財務報告資料として一般に公表されています。要するに、公正な経済活動を行うために、企業あるいはそれにかかわる人々の様々な活動が貨幣価値で把握できる範囲において網羅的にほぼ正確に記録されているのです。逆に言えば、私たちは会計情報を分析することで、その背景にある企業や人々の様々な行動やその意図を明らかにできる可能性があると言えます。同時に、会計情報ではとらえきれない企業行動について理解することで、会計情報と非財務情報を組み合わせたより適切な経営分析を行うことができるようになります。
分析の例として、会計情報は様々な契約に利用されているかもしれません。株主や銀行・金融機関は多かれ少なかれ、企業や経営者の評価に会計情報を用いるでしょう。このとき、会計情報を分析することで、表面的にはなかなか観察できない企業内部の活動を読み取ったり、場合によっては情報に織り込まれた「ウソ」を発見できれば、より適切な評価や資金提供が可能となるでしょう。立場を変えて、企業側から考えると、会計情報に「自分は優れた企業・経営者である」という情報をいかに織り込むかは、企業や経営者の評価を左右する重要なポイントとなり得ます。会計情報の内容によって、企業や経営者の評価、資金調達額が変化するかもしれないのです。
もちろん、ウソをつく経営者は信頼を失います。信頼は契約と並んで経済活動を支えていると言われています。株主は信頼できない経営者を雇い続けることはできませんし、信頼がない企業と取引を続けることは困難です。信頼のような貨幣価値で測定できないものは、一般的には会計情報から読み取ることができないため、その現象を丁寧に観察しコンテキストを読み解く姿勢が非常に大切です。ゼミでは会計情報の理解に加え、統計分析にとどまらない検討をしっかりと加えることで、経営分析の基礎を身に着けます。
どんなに馬鹿げたアイディアであっても、「これは会計か?」と思うようなテーマであっても歓迎します(実際のゼミ生の研究テーマは「ゼミ生情報」をご覧ください)。
皆さんと一緒に研究ができることを楽しみにしています。