システム・ダイナミクスの概要

「システム・ダイナミクス」(system dynamics)はコンピュータを使って「経営や行政の問題」「環境に関する問題」「広い人間関係・社会の問題」をはじめとする複雑な問題について、その本質を理解したうえでの的確な解決・状況改善提案や方針策定をするのための手法です。なお、システム・ダイナミクスは、日本ではかつて「システム・ダイナミックス」と表記されていました。既刊書もこちらの表記が一般的です。また、英語でも日本語でも略してSDとも呼ばれます。

システム・ダイナミックスの特徴は以下の3つです。

  • 問題をダイナミックにとらえる(時々刻々と状況は変化する、何でも一定だと決めつけないということ)

  • 得られた結論の裏付けを「フィードバック・ループ」構造(因果関係の循環)に求める

  • コンピュータを利用した定量的な分析を行う

詳細は多くの既刊書にて述べられていますが、大変分かりやすく説明としては、G. P. Richardson & A. L. Pugh IIIによる"Introduction to System Dynamics Modeling" (MIT Press, 1981)のChapter 2が挙げられます。

より入門的なテキストとして、田中伸英・高橋 裕「システム・ダイナミックス」(サンウェイ出版, 2017)があります。本書のサポートサイトはsysdyn999です。

また、システム・ダイナミクスの問題のとらえ方は、「システム思考」の立場に立っているといえます。こちらのわかりやすい紹介を行っている書籍としては稗方和夫・高橋 裕「システム思考がモノ・コトづくりを変える」(日経BP, 2019)があります。なお、「システム思考」という言葉はシステムズ・シンキング(systems thinking)という呼ばれ方もします。特に日本では、システム・ダイナミクス手法に含まれる「因果ループ図」及びそれを利用した定性的な分析をさすことがあります。