修士論文について
M2の9月末(ギリギリ伸ばして10月下旬)までに自分で課題(題材)をみつけることが理想的です。「課題設定から自ら行う」ことも「新しいものを創造する」能力の重要な一部であると深澤は考えます。ただ、これも大変に難しいことであるのは承知しています。
これが出来ない場合には、多くの場合、「4次曲線の外ガロア点」「5次曲線の内ガロア点」が修士論文のテーマになります。これらに関しては本研究室のノウハウがあります。ささいながらも一応、新しい結果を含んだものになります。ノウハウを利用する可能性がある場合は、M2の9月末までに深澤・東根「ガロア点理論入門」の3章を読んでおくと良いです。
ノウハウと関係なく、所属修士院生が(その一部を)読めた論文
(1) I. Duursma, R. Kirov and S. Park, Distance bounds for algebraic geometric codes, J. Pure Appl. Algebra 215 (2011), 1863-1878.
(2) S. Fukasawa, A birational embedding of an algebraic curve into a projective plane with two Galois points, J. Algebra 511 (2018), 95-101.
(3) L. Panaitopol and D. Stefanescu, On the generalized difference polynomials, Pacific J. Math. 143 (1990), 341-348.
(4) I. V. Arzhantsev and A. P. Petravchuk, Closed polynomials and saturated subalgebras of polynomial algebras, Ukrainian Math. J. 59 (2007), 1783-1790.
深澤の経験談
博士課程に進学したいと考えていたにも関わらず、M2の8月になっても読める論文がひとつもない状態でした。院生室の先輩達と話しているうちに Fischer and Piontkowski 著 "Ruled Varieties" という日本の書籍にはないテーマを扱っている本をみつけてはいたのですが、全く読めませんでした。8月9月は死に物狂いでテーマを探しました。あまりに見つからないので(代数幾何でなく)微分幾何や実特異点論の本を読んだ程です。理由を説明できない不思議なことがあるもので、あがいていた私に神様が微笑みかけてくれる「瞬間」がありました。9月下旬に "Ruled Varieties" が急に読めるようになりました。10月からロケットスタートができ、師匠から初めて褒められた記憶があります。
またこの本が良い本だったことも大変幸運でした。テキストとして証明がきちんと書かれている上に、開拓したての研究分野を紹介したものでした。当時、この本をきちんと読んでいたのは日本では恐らく私だけでしょう。また上のエピソードから、研究テーマのためには洋書も含めて世界中の本から探すべき、と言えるでしょう。
この経験談は稲盛和夫先生の言葉 もうダメだというときが仕事のはじまり | 稲盛和夫 OFFICIAL SITE (kyocera.co.jp) に通ずるものがあるように思います。