Our interests

植物の共通祖先は、約4億7千万年以上前に陸上に進出したと考えられています。現生の陸上植物のうち、最も初期に分岐したグループであるコケ植物(セン類、タイ類、ツノゴケ類に分かれる)や、緑藻のうち陸上植物の共通祖先に最も近縁とされるシャジクモ藻類を実験材料とし、植物進化の様々な謎の解明に挑んでいます。

主な研究テーマ

世代交代はどのようにして獲得されたのか?

植物に特有の形質に、1倍体と2倍体の発生プログラムを有し、両者が交代する生活環をもつこと(世代交代)があります。 ヒメツリガネゴケにおいて、世代交代を制御する転写因子KNOX2を発見しています。KNOX2を起点として、世代交代の仕組みの解明に挑んでいます。

複相の多細胞化はどのようにして起こったのか?

複相世代の多細胞体(胚)は、陸上植物の共通祖先において獲得されたと推測されています。 緑藻類の中にも、シャジクモのように単相世代が多細胞化するものがありますが、複相である受精卵多細胞化することはありません。一方で、陸上植物の基部に位置するコケ植物は、単相世代のみならず複相世代も多細胞化します。陸上植物の共通祖先で起こった複相世代の多細胞化(胚の獲得)は、その後の複相のさらなる複雑化や巨大化へのきっかけとなったのでしょうか?ヒメツリガネゴケの複相の発生に重要な遺伝子の機能解析から、複相の多細胞化要因の理解に迫ります。

複相の分裂組織はどのように維持されているのか?

陸上植物の基部に位置するコケ植物は、単相が優占的な生活環を示しますが、被子植物は2倍体が優占的です。ヒメツリガネゴケの複相世代の成長は、有限で、茎葉構造のような枝分かれもしません。一方、被子植物では、複相世代の頂端に茎葉構造を生み出し続ける、無限成長を支える茎頂分裂組織が形成されます。陸上植物の進化過程における、複相優占的な生活への移行には、複相の分裂組織が有限型から無限型へと転換したことがきっかけとなったのでしょうか? KNOX1遺伝子の機能を起点として、ヒメツリガネゴケの複相の分裂組織の維持機構の解明を目指しています。

ヒメツリガネゴケKNOX1の機能に関する論文

雌雄の生殖器官はどのように作り分けられているのか?

雌雄同株のヒメツリガネゴケでは、低温短日条件下に移すと、茎葉体の先端に先に雄の生殖器官である造精器が続いて雌の生殖器官である造卵器が発生します。最初の造精器の発生は茎葉体の頂端幹細胞が直接造精器始原幹細胞へと変化し造精器幹細胞が作りだされることで開始しますが、その後にどのように造卵器が発生するかその詳細は分かっていません。 これらの雌雄の生殖器官を作り分ける仕組みについても研究しています。

新たな植物のモデル化への挑戦

生物を研究室内で育てられるようにします。理想的には無菌株を実験環境下ですべての生活環を観察できるようにします。現在、陸上植物の共通祖先に近縁とされるシャジクモの形質転換系の確立を目指しています。写真提供:無津呂一輝君(卒業生)

新たな植物で世代交代の進化に迫る

陸上植物に最も近縁なストレプト藻類である接合藻類ヒメミカヅキモ。緑藻クラミドモナスや陸上植物では、すでに世代交代に関わる遺伝子の機能がわかっているため、これらの間に位置するヒメミカヅキモに着目し、研究を行っています。世代交代に関わる遺伝子の機能解析を行っています。写真提供:加来(院生)