代表的な支援実績・地域のお声ご紹介

2018年に代表の村松知木が設立した「一般社団法人地方創生パートナーズネットワーク（R-NET）」多くのパートナーの皆様に支えて頂き、活動をしてまいりました。

今回、1月より事務局のマネージャーに就任致しました桑野が、パートナー様に、インタビューをして、率直な感想やご意見をお伺いしました。

R-NETはどんな活動をしているの？観光業に携わる方の課題は？R-NETがお役に立てることは？

地域のことを考え、日々奮闘されている観光業の皆様の声をお届けするとともに、R-NETの活動を皆様に知って頂きたいです！

何かを変えないといけないと思っていた

• R-NET：この取り組みを始めたきっかけについて教えていただけますか？

• 小林様：最初は、R-NETの村松さんと北秋田市との出会いからでした。令和3年、株式会社マックアースの一ノ本様を通じて村松さんをご紹介いただきました。当時は、阿仁スキー場の樹氷のプロモーション事業に取り組んでおり、その件で村松さんにさまざまなアドバイスをいただいたのです。その中で、村松さんより「地域循環を生み出すには、地域の事業者が主体的に取り組んでいくほうがよい」とのお話がありました。現状、行政がイベントを主導し、それに地域の方々が賛同する形で観光事業を進めている事例が多いと思います。しかし、村松さんの言葉を聞いて、「地域の方が主役になって、自分たちで動いていくような仕組みが必要だ」と強く感じたのです。R-NETには、秩父の事例があり、村松さんはその経験や知見を持っていました。その話を聞いたとき、「この方にならお任せできる」と北秋田市の担当者皆が思いました。 そもそも北秋田市はとても広く、点在する観光スポット同士の連携ができていないという課題がありました。村松さんからは「1回のワークショップで終わるのではなく、継続的に行うことが大切」とのアドバイスをいただき、それを受けて、3年間の事業計画として取り組むことになりました。

 【1年目】多くの知見や経験を学び、方向性を模索した年

• R-NET：1年目はどのようなところからスタートしたのでしょうか？

• 小林様：はじめは本当に手探りでした。まずは人を集めることが必要だと考え、市から観光施設、観光物産協会、宿泊施設などに連絡をして参加者を募りました。北秋田市で初めての試みということもあり、正直なところ、最初から多くの方が集まる状況ではありませんでした。第1回の参加者は5名ほど。観光事業に関わる方々がぽつぽつと参加してくださる形でした。もちろん皆さん、観光そのものには詳しいのですが、「地域全体で商品をつくる」「地域を一体で盛り上げる」という観点になると、また少し勝手が違ってきます。そこで1年目は、成功事例の共有や意識づくりに力を入れました。秩父乾杯共和国の取り組みや、次世代観光研究会・旅館比与志の事例紹介、全国道の駅支援機構の栃尾圭亮さんからの観光地域づくりに関する講話など、さまざまな知見を参加者にインプットする場を設けました。他地域での取り組みや成功体験を知ることで、参加者の皆さんの気持ちも徐々に前向きに変化していき、「自分たちにもできるかもしれない」という空気が生まれていきました。最初は5名だった参加者も、1年目の終わりには約20名にまで増え、確かな手応えを感じました。

 【2年目】考えるだけでなく行動する。まず一歩踏み出した年

• R-NET：皆さんの気持ちが一つになってきたのが伝わってきますね！では、いよいよ本格的に動き出す2年目について教えてください。

• 小林様：2年目は、1年目の成果を踏まえて「田舎体験ができるコンテンツをつくろう」という方向性が決まりました。そこから、どんなコンテンツを地域として打ち出していけるか、参加者同士で連携しながら企画・造成を進めていきました。まず行ったのは、グループワークでのブレインストーミングです。参加者それぞれがやりたいことやアイデアを出し合い、最終的に「実際に実現したいと思っているアイデアはありますか？」というアンケートを取りました。そこで挙がったのが、以下の3つのアイデアです。この3案をもとに、発案者を中心としたグループに分かれて、「どうすれば実現できるか？」をテーマにディスカッションを重ねていきました。2年目のワークショップは年間6回の開催で、前半を観光事業者による講演、後半をグループごとのディスカッションの時間に充てました。講演には、秋田内陸縦貫鉄道株式会社様や大館能代空港ターミナルビル様など、地元企業の方々にもご協力いただき、貴重な知見や現場の声をいただくことができました。実際にそのままディスカッションにも加わっていただいたのは、大きな刺激となりました。ただ、ディスカッションが進む中で、大きな課題も見えてきました。それは、「やりたいというアイデアはあるけれど、実際に動かす人が誰か」という“プレイヤー”の問題です。例えば、「観光周遊タクシー」は発案者が自らやってみたいという意欲を持っていましたが、「マタギサウナ」は実際にマタギの方が運営する必要があり、発案者が直接プレイヤーになることは難しいという状況でした。このように、自分がプレイヤーになれない企画の場合、誰にその役割を担ってもらうのかががとても重要なポイントになりました。ワークショップの時間内だけでは決まりきらない部分も多く、参加者たちは時間外にも集まり、内容を詰めていく姿が見られるようになりました。とはいえ、こうした“悩み”や“壁”が出てくるのも、村松さんにとっては想定内だったようです。2年目は、まさに「形にするためにぶつかる壁と向き合う」段階だったと思います。 

1. 観光周遊タクシー（北秋田市の縄文遺跡をガイドとともに周遊するタクシーサービス）

2. マタギサウナ（北秋田市の文化の一つであるマタギの方が運営するサウナ）

3. 城泊体験（北秋田市にある城などの歴史的な施設に宿泊するプラン）

 【3年目】商品を販売する！アイデアを形にできた年

• R-NET：いよいよ最後の年、3年目ですね。ラストスパート、といったところでしょうか。

• 小林様：そうですね。3年目は、これまでに練り上げてきたプランをいよいよ実施する段階になりました。出たアイデアのうち、「城泊プラン」は物理的な制約により実施が難しいと判断し、今回は見送ることに。そこで、「観光周遊タクシー」と「マタギサウナ」の2つに絞り、実現に向けて本格的に動き出しました。特に課題となったのは、スタートアップ時の費用面でした。 

①JOMONコンシェルジュと巡る北秋田市イナカTAXIツアーについて

「観光周遊タクシー」の企画は、北秋田市の地域おこし協力隊として伊勢堂岱遺跡のPRを担っている「JOMON（縄文）コンシェルジュ」の方が中心人物となって進めました。ご本人がプレイヤーとして実施の意志を持っていたので、企画はスムーズに前進しました。ただ、その方は県外から移住された方だったため、地域内の事業者とのつながりが少なく、連携の仕組みづくりにはチームメンバーがサポートに入りました。2年目のワークショップに参加してくださった秋田内陸縦貫鉄道株式会社様や大館能代空港ターミナルビル様の協力も得られたことで、地域との連携体制が構築できたのは大きかったです。費用面については、秋田県の補助金制度を活用しました。市からアドバイスし、申請を通じて無事にスタートアップ資金を確保。行政・企業・個人が連携して一つの形をつくり、2024年度にはテスト販売を実現することができました。

 ②マタギテントサウナについて

「マタギサウナ」は、プレイヤーを誰が担うかが最も大きな課題でした。メンバー内で話し合った結果、マタギ文化に魅せられて移住してきた方がいることを知り、その方にコンセプトを共有。最終的に、運営を引き受けていただくことが決まりました。当初はマタギ小屋のような施設にサウナを設置する案もありましたが、「せっかくなら市内のさまざまな場所を巡れるようにしたい」という想いから、移動式のテントサウナという形に。こちらも秋田県の補助金に採択され、テスト販売まで進むことができました。また、3年目はR-NETからのご提案で、Instagramを活用したUGC（ユーザー生成コンテンツ）キャンペーンキャンペーンも実施しました。せっかくできたコンテンツを広めるため、プロモーションにも力を入れたほうがいいと、これも村松さんのアドバイスでした。キャンペーンの企画は参加者が考え、観光物産協会が事務局として運営を担当しました。初めての試みで不明点も多かったのですが、R-NETのサポートのおかげでスムーズに進めることができました。

実際のキャンペーンについてはこちら

プレスリリース記事

Instagram投稿記事

企画を通して参加者に利益を還元していく

• R-NET：3年間の取り組みが一区切りとなりました。今後、このプロジェクトはどうなっていくのでしょうか？印象に残っていることなどもあれば、教えてください。

• 小林様：市としての事業は今年度で終了となりますが、取り組み自体はこれからも続いていきます。今後は観光物産協会の事業として引き継がれる予定です。始まりはたった5人からのスタートでしたが、回を重ねるごとに少しずつ参加者が増えていきました。1回限りのワークショップではなく、継続的に取り組んだからこそ、参加者の考え方が前向きになり、多様な方たちが関わってくれるようになったと感じています。正直、どの地域にも「行政がやるから地域が動く」という依存的な考えが根強くあると思っていました。でも、実際には「自分たちで何とかしたい」と考えている方がたくさんいることに気づかされました。そうした想いを持つ方たちが出会い、つながる場を提供できたことが何より嬉しかったです。そして、企画から生まれた事業による利益は、しっかり参加者に還元されていきます。自分たちで地域資源を生かし、地域が潤う循環ができることは今後の観光事業の発展にとっても大きな一歩になると思っています。ただ、もちろん観光事業者の皆様全員が市のワークショップに参加できるわけではないという課題もあります。だからこそ、今後はより開かれた形での継続も模索していきたいですね。これまで、行政が企画し、情報を発信するスタイルが主流でした。でも、この3年間で、地域の方々のアイデアからこんなに魅力的なものが生まれるのだということを実感できました。行政が主体で進めたとしても、地域の方々が「いいね」と思ってくれなければ、それは持続しません。今後も“地域の意志”を尊重しながら支援していくようなアプローチが必要だと思っています。

R-NETの存在が地域の力を引き出した

• R-NET：この取り組みの中で、R-NETが果たした役割についても教えていただけますか？

• 小林様：そもそも、この事業は村松さんの助言がなければ始まっていませんでした。R-NETが専門家を紹介してくれ、ワークショップのたびに足を運んでくれた。地域の事業者の皆さんも村松さんを信頼していたからこそ、積極的に協力してくれたのだと思います。村松さんは、ただアドバイスするだけのコンサルではありません。何度も北秋田市に足を運び、地域のことを真剣に考え、深く関わってくれました。その姿勢があったからこそ、参加者同士の関係性もどんどん深まっていったのだと思います。

自走がテーマであっても、外の力を入れながらバランスよく運営していくことも必要

■桑野

一貫されていますね！あくまでも「自走」がキーワードなんですね。そんな山形市役所様に代表の村松が今、登用され、勤務をさせて頂いていますが、どのような役割をしていますか？山形市様とＲ-NETの関わりを教えてください。

■青木様

村松さんとは、観光庁のスノーリゾート関係の仕事でご一緒することになりました。それからの付き合いです。新しいことをしようとしたときに、地域のメンバーが同じ方向を向けないということが実際にありました。これはうちだけではなく、どこにでもある課題ですね。今まではそれでもよかった。沢山人が来ていましたから。だけど、コロナ禍になり、人が来なくなり、どうすればいいのかわからなくなった。その時、内部の我々が話すよりも、観光庁事業で来た村松さんがみんなに話してくれて、内部の人の方向性がまとまったんです。

山形は資源もある、知名度もある。恵まれている方だと思います。だからこそ、コロナ禍という未曽有の事態で皆が途方に暮れた。ただ、前向きに考え、観光のマーケティングを勉強するところも増えてきた。村松さんが北海道、兵庫などの色々な事例を見せてくれて1年ぐらいかけて内部に話をしてくれたんです。いくつかの補助金申請が通ったのも、村松さんが部分的に関わってくれたからでもあります。うちは自走がテーマなのでコンサルを使わず若手が自分たちで補助金を引っ張って来れるぐらいの教育をしているんですが、それでも外の方の力が必要になることもある。村松さんが外の目線を入れ、山形の地元の人たちに話をしてくれたことが色々変わるきっかけになりましたね。コロナ禍で観光業はダメージを受けたかもしれない。でも、その分、「考えるチャンス」をもらった。前向きに考え、令和4年度は絶好のチャンスだと思って多くの仕掛けを考えています。

■桑野

山形市様の取り組みは、一貫されていて、そこに強い意志が感じられました。コロナのピンチもチャンスに変え、自分たちで状況を打破していく。そして、その中にR-NETが関わらせて頂いていること、すごく光栄に思います。貴重なお話ありがとうございました！

老朽化したリゾートエリアを見て「それでもここは絶対良くなる気がする」とポテンシャルを感じた

入社してみると厳しい状況が目の前に広がっていました。しかも、同業他社知人に「トマムに転職する」と言ったら「トマムってまだやってたんだ！」と言われたくらい、巷では最初の経営会社が破綻したイメージが蔓延していました。当時の星野リゾート トマムは、今でこそ有名になった雲海テラス（後述）もまだなかったですし、決してお客様にご満足いただけるような施設の状況ではありませんでした。しかし、入社時にリゾートエリアを視察させていただく機会があり、ホテルなどの建物やアクティビティ、周辺施設を散策したとき、面白いほどに集客のアイデアが次々に浮かびました。このような状況でもなぜか悲観的にならず、老朽化した施設を眺めながら、「それでもここは絶対良くなる気がする」という、根拠はないけど妙な希望が芽生えたのを記憶しています。

当時のトマムは、３ホテル1,300室で運営していましたが、夏休みと年末年始はそこそこ満室になるのですが、それ以外の稼働がまったく振るわず、激しい繁閑差という課題がありました。「激しい繁閑差」の何が課題かというと、まずは雇用です。サービスを維持するために、混雑している期間のために、閑散期も雇用しなければなりません。だからと言って閑散期に社員数を合わせると今度は繁忙期に短期スタッフを雇用しなければなりませんが、そういうると短期スタッフをその都度育成するエネルギーが発生します。自社だけではなく、トマムのお取引先も同様です。繁忙期だけ必要な資材や人材を確保するのは決して簡単ではありません。

そこで、まずは年間通して稼働率を高めることを優先しました。リゾート地なので、できるだけ多くのお客様に来て消費していただき、そこで得た利益をサービスとしてお客様に還元するという意思が会社にはありましたし、私もそこに強く賛同していました。まずは販売チャネルを拡大し、販売単価を繁閑差に合わせて柔軟にしました。当時は、イメージアップのPRも同時にしていたので、価格を下げた時にPR担当から「安売りだ」と苦言をいただいたのですが（笑）、売上なくしてPRコストは捻出できないわけですから、価格を柔軟にして稼働と売上を上げることに最初は集中しました。

平行して、マーケティングを強化しました。お子様連れご家族をターゲットに、構築された四季折々のコンテンツやサービスをマスメディアやウェブメディア、旅行会社のパンフレットへ拡散する活動に相当力を入れました。その結果、少しずつ稼働率が上がり、売上が伸び、単価も上げられ、お客様へより多くのサービスを還元できるようになりました。

固定概念を取り払い、地域を巻き込む。エリアを盛り上げたいという気持ちが大切！

■桑野

やはり、ここでも「人」がキーになっていますね。どんなに良い資源があってもそれを活かすためには人の思いや行動が必要になりますね。そういった思いは、旭川での活動にも活かされているのでしょうか。

■相内様

OMO７旭川（おも）by 星野リゾートなど、星野リゾートは旭川市でも積極的に事業展開をしています。旭川は、トマムとは逆で夏は富良野や旭山動物園の集客もあってか多くの方にお越しいただいていましたが、冬の集客に課題がありました。

そこで、スキーが趣味である星野代表とマーケティングチームが、大雪山系に抱かれた旭川市はカムイスキーリンクや旭岳に１時間前後で行ける環境であることに目を付け、2018年に、スキーヤー・スノーボーダーファーストなホテルを目指した「旭川、スキー都市宣言」を発表し、OMO７旭川（おも）by 星野リゾートからスキー場へのアクセスを拡充し、ホテル内でもスキーヤーへ向けたサービスを充実させる取り組みを開始しました。