シド・サクソンの

アーカイブから

FROM THE SID SACKSON ARCHIVES

生涯を通じ、シド・サクソンは常にゲームの発明、改良、そして批評を行っており、そしてそれらのうちほぼ全てについて記録を取り続けていたのである!こちらはシド・サクソンのアーカイブ(これを実現させてくれたシドの娘、デイル・フリードマン夫人に心から感謝)における埋蔵物から発掘された真珠たちである。

『バザール』新方式:ペナルティ・バザール

・キャント・ストップ:賭けてみるかい?

・『 ヤチ』に何が起きたのか?

・シド・サクソン・クイズ:薔薇はどんな名前で呼んでも―――

『バザール』新方式:ペナルティ・バザール

『Bazaar バザール』はシド・サクソンのクラシック3M「ブレイン・バーナー(※訳注:脳を酷使する)」ゲームの1つである。3M社がゲームの「最終仕上げ」の段階にあった頃、1968年2月14日にシドはこの企業から質問/提案が記載された手紙を受け取った。

「ゲーム終了時にプレイヤーの手元に残ったチップについて、ペナルティを与えることは考えたことがありますか?これは基本ルールに含めることもオプション・ルールとすることもできると思うのですが。もしそうした場合、チップ1枚につき1点にするか、少々の点数にするか、いずれをご希望しますか?」

ほんの10日後、シドは返事をしている。

「提案をいただいた後、少なからず考えた結果、よく似たバリエーションを考え付きました。ご覧いただければお分かりいただけると思いますが、このバリエーションではカードが購入されるたびにペナルティが発生します。これはプレイに新しい次元をもたらすものです。他プレイヤーが何をしているのか注意深く観察し続けることが必要となります。トークンをたくさん手に入れるため、そして自分が捕まってしまうことを避けるために。」

「これは絶対に追加バリエーションとして提供すべきです。これを試したプレイヤーの中にはオリジナルよりもずっと気に入った人もいましたが、一方でそれ以外の人は同じぐらい強くオリジナルのほうを気に入っていました。これは好みの問題だと思われます。もともと競争的な側面が強い人はバリエーションを好み、より気軽なゲームが好きな人はオリジナルを好むのです。」

そして、こちらが初公開となるシド・サクソンのルールである。

ペナルティ・バザール:競争的プレイヤーのためのバリエーション

このバリエーションでは、プレイヤーが品物カードを購入するたびに、そのプレイヤーは自分が得点する点数に加え、他プレイヤーに対しペナルティによる失点を与えることができる。ペナルティは購入者が交換の後に持っているトークンの枚数を、他プレイヤーそれぞれが持っているトークンの枚数と比べることによって決定する。

購入者の手元に残っているトークンの枚数に3を加算する。この合計よりも多い枚数のトークンを持っている各プレイヤーは、その超過枚数1枚につき1点を失点する。

例:プレイヤーは購入の後で手元にトークンが2枚残っている。トークンを5枚持っている他プレイヤーはペナルティを受けない。トークン6枚のプレイヤーは1点のペナルティを受ける。トークン8枚のプレイヤーは3点のペナルティを受ける。ペナルティによって、プレイヤーの合計得点がマイナスとなることもあり得る。

Copyright © Sid Sackson

キャント・ストップ:賭けてみるかい?

1980年、シドは素晴らしいダイス・ゲーム『キャント・ストップ』を出版した。しかしシドはそれだけでは止まらなかった。1886年、彼はゲームに賭けの要素を加える方法を発明したのだ!こちらが初公開となるシドのルールである。

キャント・ストップ・ベッティング:『キャント・ストップ』の新しいプレイ方法

オリジナル・ゲームにおける全てのルールを適用し、次の内容を追加する:

■新しい用具:各プレイヤーは片面に「メイク・イット」、もう片面に「ブロウ・イット」と書かれた青いディスクを1枚ずつ持つ。各プレイヤーは白いディスクも5枚ずつ持つ。

■ベット実行:プレイヤーが手番における2回目のダイス振りを終え――そしてその結果に従い対象のマーカー全てを配置するか移動した後――このプレイヤーは「ベット開始!」と宣言する。

◇他プレイヤーはそれぞれ自分の青ディスクのうち「メイク・イット(成功)」か「ブロウ・イット(失敗)」いずれかの面を非公開で選び、その上に白ディスクを1~5枚――枚数はそのプレイヤーがどれぐらいギャンブルしたいかによる――置くことによってこれを覆い隠す。

◇プレイヤーのうちボード上の縦列に自分の駒を1個も置いていないプレイヤーはベットを行わない。ただし、そうではないプレイヤーは全員必ずベットを行わなければならない。

◇全員のベットが完了したら、手番プレイヤーは通常の手順で手番を続ける――止めることを選択する[=メイク・イット]か「ブロウ・イット(失敗)」するまで。その後、他プレイヤーは全員自分のベットを開示する。

■ペイオフ:手番プレイヤー左隣のベットを行ったプレイヤーから順に、各プレイヤーは自分のベット結果に応じて自分の駒を移動させる。

◇ベットが成功した場合――それが「メイク・イット」「ブロウ・イット」どちらであるかに関わらず、そのプレイヤーは自分の駒1個または複数を、合計でベットに使用した白ディスクの枚数と等しいマス数分だけ前進させる。駒は縦列の頂上に移動させることはできず、また新しい縦列を開始することもできない

◇ベットが「ブロウ・イット」でプレイヤーが実際には「メイク・イット」した場合、賭け手は自分の駒1個または複数を、合計で白ディスクによるベット枚数に等しいマス数分だけ後退させる。駒は縦列から降りることができる。

◇ベットが「メイク・イット」でプレイヤーが実際には「ブロウ・イット」した場合、賭け手は[自分の駒1個または複数を、合計で]白ディスクによるベット枚数の2倍に等しいマス数分だけ後退する。

◇ベットに失敗した賭け手がそのベット枚数分を後退することができない場合、可能な数だけのマスを後退する。この場合、このプレイヤーは次の手番をパスする。

■ゲーム勝利

◇2人プレイ:最初に縦列5つに勝利する。

◇3人プレイ:最初に縦列4つに勝利する。

◇4人プレイ:最初に縦列3つに勝利する。

Copyright © 1986, Sid Sackson

『ヤチ』に何が起きたのか?

多くのサクソン・デザインのホームとなったクラシック3Mゲーム・シリーズのファンにとっての「聖杯(ホーリー・グレイル)」の1つが『Jati ヤチ』である。

『ヤチ』に関する情報をもう少し:

ミネアポリス・トリビューン紙1965年12月5日に掲載されたある記事によれば、『ヤチ』はミネソタ州マウンドの芸術家(「基本的には画家」)キース・ヘイブンズによってデザインされた。最初に作られた際、『ヤチ』は固い麻布の上でプレイする形であり、巻物状にして円形の筒に収納されているデザインだった。しかしながら、そういった形態が3Mゲームのシリーズに合わないであろうことに気付き、ヘイブンズはゲームをプラスチック製のボードとブックシェルフ型の箱へと再デザインした。記事ではこのゲームについて「3M社によって販売される」と宣言しているが、この小さな情報は時期尚早であり、そして結論から言えば、不正確だった。

『ヤチ』はもともと3Mシリーズにおけるもう1つのブックシェルフ型アブストラクト・ストラテジー・ゲームとなる候補であったが、3M社の重役たちはこれを完全に製品化する前にいくらかのフィードバックを欲していた。当然ながら、彼らは意見をもらうために「ゲーム・グル」その人のところへ赴いたのである。こちらは1965年7月29日付の3M社に対する手紙であり、この希少品に対するシドの見解である。

『ヤチ』

類似ゲーム:

プレイ方法は『Go-Bang ゴ・バン』『Pegity ペギティ』(パーカー・ブラザーズ社)、『99』(ウォッシュバーン・リサーチ&マニュファクチャリング社)等に似ています。しかしながら駒の配置における制限、「ブースター」の使用、そして得点計算方法によって『ヤチ』はずっと面白いゲームになっています。『Montezuma モンテズマ』(ウェールズ・ゲームス・システムズ、1952年)は5個以上の駒によって完成した列それぞれに対するボーナスを基本とした得点計算を採用しています。相手の列を駒4個にブロックすることによるペナルティも存在します。ボードは異なる色のマスによって構成され、色はボーナスやペナルティの決定要素となっています。

寸評:

3ゲームをプレイしたところ、これはよくできた面白いゲームであることがわかりました。弱点が1つあるとすれば、このゲームは方眼紙に鉛筆で書き込むことで(私がプレイした方法です)容易にそして快適にプレイできるという点でしょう。これは販売上の深刻な障害となるかもしれません。ワード・ゲームの『Jotto ジョット』は少なからぬ人々を楽しませたものの、ほとんどのプレイヤーは用意された道具を購入するよりも、紙と鉛筆を使用したのですから。

ルール:

ルールは明解だが、幾分くどいところがあります。抜けのない形でかなり凝縮することができるでしょう。「得点となる基本的な並び」の図は交差する並び方、特に斜めに並んでいる場合を掲載しなければより明確になるでしょう。「ゲーム途中」の図は収録する価値があるとはほとんど思えません。

(シドのアドバイス、特にこのゲームが紙と鉛筆によってあまりに簡単にプレイできるため、販売の障害となるというコメントはインパクトを与えたことだろう。3M社のお偉方はこのゲームを出版しないことに決め、その結果、3Mゲームのコレクターにとって真の希少品が生まれたわけである!―HL)[※HLは「ハーブ・レヴィによるコメント」の意]

シド・サクソン・クイズ:薔薇はどんな名前で呼んでも―――

(※訳注:ロミオとジュリエットの台詞「薔薇はどんな名前で呼んでもその香りは甘い」より)

その長く多作なキャリアの中で、シド・サクソンは長期間のプレイに耐え、世界中のゲーム・プレイヤーの間でお気に入りになり続ける高品質なゲームを実にたくさん創造した。しかしこの我々が慣れ親しんだデザインの多くは、常にその有名な名前で知られてきたわけではない。プロトタイプとしては、別のタイトルが付けられていたのである。

下に示すのは、8つのサクソン・デザインの出版に際し、最初に提出された名前である。

① シット・ダウン・アンド・シンク(Sit Down and Think [座って考えよう])

② プラン・アヘッド(Plan Ahead [事前計画])

③ イッツ・ア・ディール(It’ A Deal [取引開始])

④ インフィニット・プレーン(Infinite Plane [無限の地平線])

⑤ キャピタル(Capital [資本])

⑥ サーチ(Search [探求])

⑦ ゴー・シー(Go See [訪問])

⑧ バケーション(Vacation [休暇])

これらのプロトタイプについて、最終名称を推理できますか?

(ヒント:これらのゲームは全て有名なものである。もちろん他に比べて有名ではないものもあるが、難解なものや無名なものは存在しない。助けが必要? リンク「サクソン・ゲーム・リスト」をクリックすれば、このマスターによる全ゲーム・リストがある。)




















クイズの答え

① シット・ダウン・アンド・シンク(Sit Down and Think [座って考えよう])

正解:『Bazaar バザール』

たしかにこのゲームはプレイヤーを座らせ、考えさせる。素晴らしいアブストラクトであり、新しい名前はこのカラフルな等式ゲームにテーマを与えるための3M社による試みだった。そしてそれはうまくいった!『バザール』はこれまで複数の企業から出版されており、しかもパーカー・ブラザーズ社は(ヨーロッパ限定で)『ビール・ボーゼ』という名前の、色チップをビール瓶の王冠で代用したバージョンさえも出版したのだ!

② プラン・アヘッド(Plan Ahead [事前計画])

正解:『Business ビジネス』

このゲームに対するシドのオリジナル名は、このデザインに対して完璧な名前である。成功は1ターンか2ターン(あるいは3ターン)先を事前に計画することができるかどうかにより決定し、よってプレイヤーは勝利のためにはまさに先読みし、「プラン・アヘッド」しなければならないのだ。これはシドの生涯最後に出版された新作ゲームである。日の目を見ない理由により、より普通で(そして面白みのない)『ビジネス』というタイトルがリラックス・ゲームズ社によって選ばれた。

③ イッツ・ア・ディール(It’ A Deal [取引開始])

正解:『Kohle, Kie$ & Knete ゼニ!ゼニ!ゼニ!』(別名:『I'm the Boss! アイム・ザ・ボス』)

取引を実行し、破壊するクラシック・ゲーム。世の中に交渉ゲームはたくさんあるが、このクラシックより笑いを引き起こし、そして気分を害することが少ないゲームは存在しない。1994年ドイツ年間ゲーム大賞ノミネート!(そして受賞するべきだった!)

④ インフィニット・プレーン(Infinite Plane [無限の地平線])

正解:『Monad モナド』

シドが依頼されたカード・ゲームの条件は「簡単だけど難しい」というものだった!この悩ましいパラドックスから、この宝石が生まれた。『モナド』は最初、特別カード1デッキと白黒で大きな円形の「モナド」1式を収納したカセット・タイプ(別名「バター皿」)のパッケージで登場した。シドは3M社への手紙において、このカセット・ボックスを初めて開いた際、モナド1式が床に転がり落ちてしまったということを指摘していた!珍しい話ではないようなのだが、残念なことにおそらくこの出来事が、我々がより親しんでいるガメッテ・スタイル(※訳注:3M社は「3Mガメッテ」という名で小サイズのゲーム・シリーズも出版していた。)の箱の登場について説明している。真の謎は『インフィニット・プレーン』がどうやって『モナド』へと変化したのかという点だ!

⑤ キャピタル(Capital [資本])

正解:『Venutre ベンチャー』

当初カセット(バター皿)スタイルのパッケージで登場したもう1つのゲーム。『ベンチャー』はゲーム・プレイの終了時期を変動させるカード1式を使用しており、この特別なゲーム装置に関する初期の発明の1つである。しかしながらこの名前は3M社を悩ませた。3M社の弁護士たちは『キャピタル』という名称が既に使用されているとし、それによりゲームの名前は『キャピタル』から『ベンチャー・キャピタル』へと変化した。最終的に名前の後半が落とされ、残されたのが:『ベンチャー』。

⑥ サーチ(Search [探求])

正解:『Sleuth スルース』

オリジナルの名前よりも新しい名前の方が改良されている数少ないものの1つ! もともとアイデアル社より『Ellery Queen: The Case of the Elusive Assassin エラリー・クイーン:暗殺者逃亡事件』として出版されたゲームである。シドはこのゲームを再調整し、ボードを削除して3M社へ提出した。『スルース』という名前は推理物の雰囲気をとらえている。しかしながら、万が一この単語がボキャブラリーに存在せず、そのため『スルース』が何を意味しているかわからない場合のために、このゲームにはシャーロック・ホームズのモチーフが描かれているのである!

⑦ ゴー・シー(Go See [訪問])

正解:『Holiday! ホリデイ』

8人でプレイしてもうまく働く数少ないゲームの1つであり、そしてプレイに何日もかかったりはしない!プレイヤーは世界中を都市から都市へと周るチャーター機の行き先について競りを行う。都市に「正しい」日に到着すれば、大きな勝利点を得点することになる。望ましくない日に到着すれば、得点も少ない。現金が勝利点と同等の価値となっているという点にひねりがある。よってプレイヤーは勝利点を獲得するために勝利点を消費し――そして一度現金を使ってしまったら、それっきりなのだ!現金をさらに獲得することはできないのである!限られた資金をいつ使用するか、賢明に考えることがカギとなる。このゲームは今日に至るまでに3種類のバージョンが登場しており、オリジナル(そして最高の)バージョンはRGI社によって出版された。後のバージョン(『Das Erbe des Maloney マロニーの遺産』『Shanghai 上海』)がそれに続いた。プロトタイプに付けられたタイトルは実際には『Go See : A Global Holiday ゴー・シー:ア・グローバル・ホリデイ』というものだったが、それではこの問題が簡単になりすぎてしまう!

⑧ バケーション(Vacation [休暇])

正解:『Acquire アクワイア』

この名前が付いたこのゲームに出会ってから長い年月が経っているが、最初に3M社へ提出した際、シドが本当にこれを『バケーション』と呼んでいたことを信じることは難しい。新しいタイトルをシドに提案したのは3M社であり、そして彼は了承した。(私がシドと交わした全ての会話の中で、彼は『アクワイア』を『アクワイア』以外の名前で呼んだことはなかった。)

技術的に言えば、これはこのゲームに対する3番目の名前である。シドは子供の頃、自分の子供用ゲームを改良して遊んでおり、『ロト』を戦争ゲームへと作り替え、それを『ロト・ウォー』と呼んでいた。この初期デザインが、ついには『アクワイア』となったのである。

実に多くの人々にとって、『アクワイア』は洗練されそしてやりがいのあるプレイを持つ明確に大人を対象としたゲームであり、「ユーロ」ストラテジー・ゲームとして知られるようになるジャンルの始まりであった。(これが1人のアメリカ人発明者によりアメリカで出版されたデザインであるという点は皮肉である。)長い年月を経た今日においても、このゲームはいまだに輝かしいゲーム・デザインの中でも最上段に位置しており、そしてこのゲームに身を捧げたゲーム・プレイヤーの大群を抱えている。「世界地図」バージョン(「シド・サクソン・ギャラリー」参照)は実際には、3M社が選んだ都市(シュリーブポート、ニューオリンズ、セントルイス、カンサスシティ、デモイン、マディソン、ミルウォーキー、デンバー)において出版された市場テスト・バージョンであり、現在では通常サイズであると考えられているブックシェルフ版を出版する前に反応を測るためのものだった。そしてこのブックシェルフ版は、複数存在する版の中でも、このゲームおよび3M社シリーズ全体に対して最も強く連想される形式のパッケージとなったのである。

いくつ正解したかな?