原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope: AFM)はDNAなどのナノメートルサイズの分子を計測することができる顕微鏡である。直径がナノスケールの尖った探針で分子表面を走査することで分子の高さを計測し、2Dまたは3DのAFM画像(動画)として可視化する。DNAオリガミの大きさは数十~数百マイクロメートルのオーダーなので可視光の波長より短いため光学顕微鏡で観察できない。このため、DNAオリガミをマイカ(雲母)表面に付着させ、AFMで観測する方法が普及している。AFMで環状DNA分子を観測したときの高さ情報を色情報にマッピングすることで、マイカ表面は茶色、DNA分子は黄色、DNA分子が重なった部位は白などに色分けすることができる。
AFM画像を見ればスキャフォールドDNAやステープルDNAがDNAハイブリダイゼーションによりどのような形状に自己組織化されたかを確認することができる。ただし、実際にDNAオリガミを観測したAFM画像をAI画像認識システムで解析すると、設計通りに自己組織化されたDNAオリガミ以外にDNA ハイブリダイゼーションのミスに起因した様々なバリエーションがあることがわかる。このことは、DNAオリガミの収率改善の観点から、ミスハイブリダイゼーションした部位を同定することで配列設計情報にフィードバックできる可能性があることを示唆している。
また、DNA二重らせんの直径は約2ナノメートルであるが、AFMで観測されたDNA分子画像は約8ナノメートルと実際の分子よりも太い。このことは、適切な学習データを用意すればAIを用いて超解像AFM画像を生成できることを意味する。一般的に、超解像AIシステムの構築には大量の観測画像データを必要とするが、高画質AFM画像を大量に撮影することはコスト的に困難である。そこで、VR技術を用いてDNA分子および探針を仮想化し、VR空間上で仮想AFM画像を生成する手法を採用した。これにより、DNA分子のAFM画像からDNA二重らせんの副溝が見える超解像画像を生成することに成功した。
原子間力顕微鏡 (Atomic Force Microscope: AFM)
AFM探針
AFM画像とDNAモデルの直径の比較
仮想AFM顕微鏡と仮想DNA分子
Yuexing Han, Akito Hara, Akinori Kuzuya, Ryosuke Watanabe, Yuichi Ohya, Akihiko Konagaya.
Automatic Recognition of DNA Pliers in Atomic Force Microscopy Images, New Generation Computing, vol.33, pp.253-270 (2015).
https://doi.org/10.1007/s00354-015-0305-4
深層学習を用いた、DNAオリガミオブジェクトの自動認識
taken by F. Kawano and J. Masada (Konagaya-lab, 2016)
taken by M. Chen (Konagaya- lab, 2018)
VR空間上で、3次元原子間力顕微鏡(AFM)画像とDNAモデルを仮想手を用いて重ね合わせることにより、DNAとAFM画像との違いを直観的に理解できることを示した。(G. Gutmann, Konagaya-lab, 2023)
Konagaya, Akihiko, Gutmann, Gregory and Zhang, Yuhui.
"Co-creation environment with cloud virtual reality and real-time artificial intelligence toward the design of molecular robots" Journal of Integrative Bioinformatics, vol. 20, no. 1, 2023, pp. 20220017.
https://doi.org/10.1515/jib-2022-0017
仮想原子間力顕微鏡と仮想DNAで観察した仮想AFM画像を学習した超解像AIシステムを用いてDNA2重らせんの副溝を観測できることを示した。(H. Xiaoran , Molecular Robotics KK, 2023)
(超解像処理方法、超解像処理装置およびプログラム:特開2025-085052 )