SUZUNE IKEDA / 池田 鈴音

湖のほとり

[ ‪Ring, Brooch ]‬ ‪Silver, Copper, Antlers‬, Ebony‪, CZ, Synthetic ruby, Synthetic sapphire, Glass, ‬Enamel, Rhodium plating
巡っていく命の中には、平等に生と死が存在します。どんなに大きな肉食動物よりも、小さな植物の方が、長く力強く生きていく術を持っているかもしれません。生きているものには必ず訪れる“死”を、そこに“居た証”に変えて。それぞれの命のあり方を考え、やさしく・暖かな世界で表現しました。
とある森の奥、湖のほとりでのお話です。群れからはぐれてしまったオオカミは、湖のほとりにある大きな骨の中で一休みしていました。近くに咲く一輪の花を見て、1人になった自分と重ねたオオカミは、その場所を気に入ります。力強く咲き、どんどん増えていく花を仲間だと思いながら、日々を過ごしていきました。
1匹だと狩りがうまくできず、オオカミは弱っていきます。骨の中で眠る時間が増え、ついには目を覚さなくなりました。そんなことはお構いなしに、オオカミにも花は咲きます。
花はついに、オオカミを完全に覆ってしまいます。そしていつの日か、そこに何がいたのか知らずに、惹かれるようにやってきたウサギやら小鳥たちの新しい住処になっていくのでしょう。
裏面には根っこも生え、しっかりとオオカミから栄養をいただいています。
鹿角の鬆(す)を活かして、顔の模様にしました。花に覆われたオオカミは、あえて密度の低い鹿角を使用することで、花に栄養を吸い取られた様を表現しています。