2026年3月31日以前は、離婚後、原則として父母の一方のみが親権者となる「単独親権」が採用されていました。
新たに施行された民法には次のように規定されています。
民法819条1項「父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。」
同条2項「裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。」
★実務家として感じる「共同親権の難しさ」
しかし、弁護士として、多数の離婚事件にかかわってきた身からすると、少なくとも弁護士が介入する事件では、共同親権が望ましい、裁判所が共同親権にすべきと判断する事例は極めて限定的だと考えています。
1. 高度な協力関係が前提となる
共同親権は、父母がともに子供の利益を考えて、継続的な協議と合意形成ができることを前提とします。
しかし、離婚に至る当事者間では、
・感情的対立
・信頼関係の喪失
・コミュニケーション不全
が生じていることが非常に多いというのが実情です。
この状態で「共同で決める」ことを前提としてしまうと、かえって離婚後も子供をめぐる紛争が長期化するリスクがあります。
進学など、子供にとって重要な事項について、離婚後の父母間で紛争が生じてしまってはかえって子供の不利益になってしまいます。
このような状態が子供にとって望ましいものとはなかなか言えないでしょう。
2. DV・モラハラ事案への配慮
家庭裁判所で扱う事件の中には、
・DV(ドメスティック・バイオレンス)
・モラルハラスメント
が問題となるケースも多く存在します。
このような事案で形式的に共同親権を認めると、被害者側が加害者との関係を断ち切れず、結果として子どもにも悪影響が及ぶおそれがあります。
したがって、すべての事案に一律適用されるということはあり得ません。離婚後の共同親権を選択するかは、
・父母の協力可能性
・紛争の程度
・子どもの年齢・意思
・DV等の有無
といった事情を踏まえた個別判断が不可欠です。
★今後の制度と弁護士の役割
仮に、離婚後に共同親権を選択するのであれば、父母が常に「子供の最善の利益」を考え協力する関係を構築することが優先です。
もちろん、離婚紛争について、適切な解決がなされたうえ、離婚後の父母が「子供の最善の利益」に向けて協力する関係ができあがっているのであれば、子にとって望ましいことは言うまでもありません。
弁護士としては、常に「子どもの最善の利益」を中心に据え、離婚後の父母が協力できるために、依頼者がどのように離婚を進めるべきか考え、提案することが求められます。
★まとめ
共同親権は一見すると理想的な制度に見えますが、実務の現場では慎重な運用が不可欠です。
離婚や親権に関する問題は、ご家庭ごとに状況が大きく異なります。
理想論だけで判断するのではなく、何が「子供の最善の利益」となるか、具体的な事情に即して考え、対応することが重要です。
三津間法律事務所では、家事事件に関する豊富な経験をもとに、それぞれのご家庭にとって最適な解決をご提案しています。
親権や面会交流についてお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。
A 法定養育費制度は、養育費の取り決めがない場合でも一定額(子供一人当たり月2万円)を法律上当然に支払義務として認めるという仕組みです。
つまり、「決めていないから払わない」という状態をなくし、最低限の子どもの生活を保障しようという発想です。
これまでの養育費制度では、養育費を請求するためには事前にその額を決定する手続きが必要でした。
協議、調停、裁判などを通じ、父母の収入や子どもの人数などを基に、いわゆる「養育費算定表」を用いて個別に決定されていましたが、その手間を多少なりとも軽減しようという意図に基づくものです。
★制度のメリット
① 養育費ゼロ問題への即効性
これまでに私がみてきた離婚案件でも、養育費の取り決めがない、あるいは支払いが途絶えるケースは少なくありませんでした。
法定養育費が導入されれば、合意がなくても請求可能であり、手続のハードルが低下し、子どもの生活保障に直結します。
② 紛争の簡略化
「子供一人当たり月額2万円」と金額の最低ラインが明確になることで、初期段階の争いが減り、交渉や調停での話し合いがスムーズになることが予想されます。
③ 義務者側の心理の変化
心理的にも、「払うかどうか」ではなく「いくら上乗せするか」という議論に変わる点は重要です。
法律の規定上「当該他の一方は、支払い能力を欠くためにその支払いをすることができないこと又はその支払いをすることによってその生活が著しく窮迫することを証明したときは、その全部又は一部の支払を拒むことができる」とされており、支払う側、減額を求める側に立証の負担があることで、養育費請求側のハードルが一定程度下げられる効果もあると言えそうです。
★一方で見逃せない課題
① 金額の低さによる固定化リスク
最も大きな懸念は、「本来もっと高額になるべき事案でも2万円で済まされる」という運用が広がる可能性です。
「相手とかかわりたくないから2万円でいいや」と妥協してしまう人が現れる可能性があるのです。
特に、
・高収入の親
・私立教育・習い事など教育費が高い家庭
では、月額2万円では明らかに不十分です。
② 実効性の問題
この制度があっても、生活保護など支払能力がない場合、行方不明・無職などのケースでは回収は容易ではありません。
養育費支払いを渋る親の中には、養育費を支払いたくないあまり仕事を辞めて無職になるケースまであります。
結局のところ、法定養育費制度だけでは、養育費問題の根本的な解決にはならないでしょう。
真に子供の将来を考えた養育費問題の解決には、行政などによる養育費の肩代わりなどの制度が不可欠です。
★ 弁護士としての実務的スタンス
現時点で制度は運用を開始したばかりであり、私の担当する事件では現時点でそれほど影響は出ていません。
それでも、今後、
・法定養育費の額に安易に依拠しない
・個別事情(収入・生活水準・教育環境)を丁寧に主張する
・回収可能性を見据えた合意を形成する
ことが非常に重要な視点であると考えます。
養育費は単なる「金額の問題」ではなく、子どもの生活と成長の基盤そのものです。「相手とかかわりたくないから」などとして安易に妥協するのではなく、弁護士に相談するなどして、適切な養育費の水準を確保するよう目指すべきです。
★まとめに代えて
法定養育費制度「2万円」は、現状の問題を打開するための一歩であると同時に運用を誤れば新たな不公平を生む可能性もある極めて繊細な制度です。
三津間法律事務所では、
・養育費の取り決め
・増額・減額交渉
・養育費の回収
などについて、実務経験に基づき最適な解決をご提案しています。
お子様の将来に関わる重要な問題だからこそ、早い段階で専門家にご相談ください。
A 最高裁令和8年6月5日判決は、不貞相手の責任を軽くする判断を示したものではありません。
離婚・男女問題の案件を多数扱う弁護士の立場から、この判決の意味と今後の実務への影響について説明します。
★事案の概要
判決文によると、
この事件における不貞相手は、
メールで離婚に向けたやり取りについて確認していた
離婚届を見ていた
という事案でした。
一審は請求を棄却しましたが、二審高松高裁は、
「注意が足りない」ことから、「離婚したと信ずるにつき相当の理由があったとはい」えない
として不貞行為について過失を認め、55万円の支払いを命じました。
これに対し最高裁は、
「婚姻関係が破綻していたと信じ、かつ、そう信ずるについて相当の理由があった」場合には過失がない、
との判断枠組みを示し、高裁に差し戻しました。
★この判決の本当の意義
「婚姻関係が破綻していれば不法行為にならない」
ということは既に1996年の最高裁判例で確立されていました。
問題は、
実際には婚姻関係が破綻していなかった場合でも、第三者が『破綻していると信じたことに相当な理由があれば過失責任を負わないのか』
という点です。
令和8年6月5日の判決は、
「相当な理由があれば過失責任を負わない可能性がある」
という判断を初めて明確に示した点に大きな意義があります。
★私が注目した点
私は日々、多数の不貞慰謝料事件を扱っていますが、実際の相談では、
「もう離婚することは決まっていました」
「夫婦関係は完全に終わっています」
「別居しています」
という説明を受けて交際を開始したケースは少なくありません。
ところが後になって、
「まだ法律上は離婚していなかった」
「配偶者から慰謝料請求を受けた」
として紛争に発展することがあります。
これまでの実務では、
最終的に婚姻関係が破綻していたかどうか
が大きな争点でした。
しかし今後は、
「第三者がどのような事情を認識していたのか」
という点も重要な争点になります。
★実務への影響
1 証拠の重要性が増す
今後は、
別居の事実
離婚協議の状況
離婚届の作成状況
メールやLINEの離婚に向けたやり取り
配偶者本人の説明内容
などが従来以上に重要になると思われます。
不貞相手側は、
「婚姻関係が破綻していると信じた合理的な根拠」
を主張立証しようとするでしょう。
2 慰謝料請求訴訟が複雑化する可能性
従来は、
「肉体関係があったか」
「婚姻関係が破綻していたか」
が主戦場でした。
しかし今後は、
「第三者は何を知っていたのか」
「何を確認していたのか」
「そう信じたことは合理的だったのか」
という新たな争点が加わります。
結果として、事実認定はさらに複雑になるでしょう。
3 安易な『もう離婚している』は通用しない
もっとも、この判決は不貞相手に過失責任が生じる場合を狭く限定したものとはいえません。
例えば、
「本人がそう言っていたから」
というだけでは足りないケースも多いでしょう。
別居の有無や離婚協議の進行状況など、客観的事情を全く確認していなければ、
「相当な理由がある」
とは認められない可能性が高いといえます。
今回の最高裁も、
破棄自判によって過失責任を否定したわけではなく、
「高裁でもう一度審理しなさい」
と差し戻したに過ぎません。
★弁護士として感じること
私は離婚事件を扱う中で、
法律上の婚姻関係と、実際の夫婦関係との間には大きな隔たりがあると感じることがあります。
形式的には婚姻が継続していても、実質的には何年も前から夫婦としての共同生活が失われているケースは少なくありません。
一方で、
配偶者の一方だけが「もう終わっている」と考えているだけのケースもあります。
その境界線は極めて曖昧です。
今回の判決は、その曖昧な現実に対して、
形式的な法律上の関係だけではなく、夫婦の実態にも目を向けるべきだ、
という最高裁のメッセージとして理解することができるでしょうか。
★まとめ
今回の最高裁判決は、
不貞慰謝料請求の実務において重要な転換点となる可能性があります。
今後は、
婚姻関係が実際に破綻していたか
第三者は何を認識し、破綻していると信じたことに相当な理由があったか
という2つの観点からの検討が必要になります。
離婚問題や不貞慰謝料請求は、事実関係の微妙な違いによって結論が大きく変わります。
「不貞の事実があるから必ず支払わなければならない」
とは限りません。
個別の事情によって判断が大きく異なる分野ですので、お悩みの方は早めに弁護士へご相談ください。
三津間法律事務所では不貞慰謝料訴訟など、男女間トラブルの経験も豊富ですから、安心してお問合せください。
A 懲戒処分の無効を争う労働事件の民事訴訟にも重大な影響を与えることは間違いありません。懲戒処分の判断に際して、行為単体としては比較的軽微な非違であっても、それが積み重なり、全体への影響が大きい事案では適法な懲戒処分となってしまう可能性があります。
最高裁第三小法廷は、2025年9月2日、糸島市消防職員が部下に対する言動等を理由として受けた懲戒免職処分が裁量権を逸脱濫用した違法なものであるとした福岡高裁の判決を破棄し、裁量権を逸脱濫用したものとはいえない適法な処分だったとの判断を示しました。
三津間法律事務所では、労働問題についても多数のご依頼をいただいており、私も懲戒処分の無効を争う訴訟をいくつも経験してまいりましたが、今後の労働事件処理に影響が生じそうです。
判決書によると、懲戒された消防職員は、
「職場内における優位性を背景として、採用後間もない部下に対し、鉄棒に掛けたロープで身体を縛って懸垂をさせた上で力尽きた後もそのロープを保持して数分間宙づりにして更に懸垂するよう指示したり、熱中症の症状を呈するまで訓練を繰り返させたり、体力の限界のため倒れ込んだことに対するペナルティと称して更に過酷なトレーニングをさせるなどしたものであり、部下に傷害を負わせるものであるか否かにかかわりなく、訓練やトレーニングに係る指示や指導としての範ちゅうを大きく逸脱するものというほかない。また、各発言には、部下に恐怖感や屈辱感を与えたり、その人格を否定したりするもののみならず、その家族をも侮辱したりするものも含まれている。このように、本件各行為は、部下に対する言動として極めて不適切なものであり、長期間、多数回にわたり繰り返されたものであることにも照らせば、その非違の程度は極めて重いというべきである。」
とのことです。
確かに、懲戒された消防職員の行為はひどいものであったと言えそうです。
しかし、それは、犯罪行為やそれに類する悪質な行為とまではいえず、これだけでは懲戒免職という極めて重い処分が相当するか疑問です。
ところが、この判決では、さらに、このような非違行為を単体として評価するにとどめず、
「本件各行為は、小隊長等として消防職員を指導すべき立場にある被上告人が、少なくとも10人もの部下に対し、十数年もの長期間、多数回にわたり、上記のような不適切な指導や発言を執拗に繰り返したというものであり、甚だしく職場環境を害し、上告人の消防組織の秩序や規律を著しく乱すものというべきである」
として、その行為の影響の大きさも考慮に入れています。
この点について、林道晴裁判官の補足意見は、福岡高裁の原判決を、
「個々の行為を単体で評価すると免職が重きに失する旨判断するものということができるところ、本件各行為が全体としてどのような悪影響をもたらすものであるかをも十分に評価すべきであったにもかかわらず、これを怠ったものといわざるを得ない。」
と批判しています。
この判例は、公務員に関する行政訴訟でしたが、懲戒処分の無効を前提とした民間の労働事件に関する民事訴訟にも判断枠組みとしてそのまま当てはまりそうです。
今後の労働事件の処理に際しても注意が必要です。
懲戒処分に関する労働事件については専門的な判断が不可欠です。
まずは、労働事件の経験豊富な三津間法律事務所に御相談ください。
A. 有給休暇・未払賃金・残業代・退職金・損害賠償など、退職に関連して少しでも問題があるのであれば、最初から弁護士へ依頼するべきです。退職代行を利用してよいのは、退職が会社への連絡だけで終わり、関連する問題が一切ない場合に限られます。
近年、「退職代行サービス」が広く知られるようになり、ニュースや新聞でもたびたび取り上げられています。
退職代行サービスは、会社に対して本人の退職意思を伝えることを主な業務としています。
確かに、退職することだけが目的であれば、退職の意思表示をすれば足ります。
しかし、実際の退職は「会社を辞める」という一言だけで終わる手続ではありません。
退職時には、
有給休暇をすべて消化できるか
未払い賃金や未払い残業代を請求できるか
退職金を受け取れるか
離職票や源泉徴収票などの書類を適切に交付してもらえるか
会社から損害賠償請求や違約金を主張されないか
競業避止義務や秘密保持契約に問題がないか
など、多くの法律問題が関係します。
★退職代行業者ができることは「退職意思の伝達」だけ
弁護士でない者が、報酬を得る目的で法律事件について代理・交渉を行うことは、原則として弁護士法第72条によって禁止されています。
そのため、多くの退職代行業者は、
「本人の退職意思を会社へ伝達するだけ」
という形で業務を行っています。
つまり、
有給休暇を取得したい
未払い残業代を請求したい
退職金について交渉したい
会社から不当な請求を受けている
といった場面では、退職代行業者は代理交渉を行うことができません。
その結果、本人が会社と直接交渉しなければならなかったり、権利を十分に主張できないまま「泣き寝入り」で退職してしまうケースもあります。
★「退職を誰かに任せたい」と感じる時点で、法的問題が潜んでいます
「会社に退職を言い出せない。」
「上司が怖くて話ができない。」
「引き止められる。」
このように感じる背景には、職場との深刻なトラブルが存在することが少なくありません。
★逆に、何の問題もないのであれば、退職の意思は「本人が」内容証明郵便などで通知するだけ十分です
つまり、
第三者に退職を依頼したいと考える状況そのものが、法的サポートを必要としているサインであることも少なくないのです。
★弁護士なら退職後まで見据えた対応ができます
弁護士は、退職意思を伝えるだけでなく、
会社との交渉
未払い賃金・残業代請求
退職金請求
ハラスメントに関する損害賠償請求
証拠の収集・保全
労働審判
民事訴訟
まで、一貫して代理することができます。
万が一、会社側が不当な対応をした場合でも、そのまま法的手続へ移行できることは、弁護士へ依頼する大きなメリットです。
★勤続年数が長い方ほど慎重な判断が必要です
特に、
長年勤務している方
管理職の方
高額な給与を受け取っている方
退職金制度がある会社に勤務している方
は、退職時に生じる金銭的利益が大きくなる傾向があります。
そのようなケースでは、退職代行サービスだけで手続きを進めることにより、本来受け取れるはずだった権利を失ってしまう危険があります。
★三津間法律事務所では退職に関する法律問題を総合的にサポートしています
三津間法律事務所では、これまで数多くの労働事件を取り扱ってきました。
退職に際しては、
退職意思の通知
有給休暇の取得
未払い賃金・残業代請求
退職金に関する交渉
ハラスメント問題
労働審判・訴訟
まで、一人ひとりの状況に応じた最適な解決を目指しています。
退職は、人生の新しいスタートです。
だからこそ、「会社を辞めること」だけではなく、「退職後に後悔しないこと」「退職時の権利をもれなく実現すること」が何より重要です。
会社との関係に少しでも不安がある場合には、一人で悩まず、できるだけ早い段階で弁護士へご相談ください。
★まとめ
退職を第三者に依頼したいと考えるほど追い詰められているのであれば、それは単なる「退職の連絡」の問題ではなく、労働問題そのものです。
三津間法律事務所では、退職という一つの手続だけを見るのではなく、これまで積み重ねてきた労働に見合った権利の確保、その先にある将来の生活まで見据えてサポートいたします。
静岡で退職代行、未払い残業代、有給休暇、退職金、ハラスメントなどの労働問題でお悩みの方は、お気軽に三津間法律事務所へご相談ください。
新規ご相談をご希望の際は、下記相談予約フォームをご利用ください。送信いただいてから、3営業日以内にご連絡を差し上げます。
※三津間法律事務所相談予約フォームにご入力いただいた個人情報は、相談のご予約、利害関係確認以外の目的には利用いたしません。ご入力いただいた連絡先へご相談予約の調整以外のご用件で弊事務所よりご連絡することはございません。