FC今治×食物栄養コース

コラボ授業2022

テーマ:スポーツ栄養教室

FC 今治の選手、専属の管理栄養士を講師とし、学生は講師から選手の食生活を中心とした日常生活(食事、練習、睡眠、ストレス対処など)を学びます。スポーツ選手各々にあった食事を提案できるようになることを目的として実施します。

PROJECT REPORTS

第1回 コラボ授業(2022.7.21 実施

×FC今治 近藤 高虎選手・武井 成豪選手

「FC今治選手の食生活を知る」

・FC 今治の選手 2名による対談

・学生と FC 今治選手とのグループワーク

最後にみんなで記念撮影

2022.07.21 実施報告

7月21日、FC今治と食物栄養コースのコラボ授業が始まりました。


食物栄養コースは、全体を通して公認スポーツ栄養士の濱西美幸先生(常盤小学校栄養教諭)にコーディネートいただき、スポーツ栄養について学びを深めていきます。


第1回は「サッカー選手の食生活について理解を深めよう」というテーマで、近藤高虎選手と武井成豪選手にお越しいただき、いろいろとお話を伺いました。

開始前は選手も「緊張しています」と言いつつも、壇上ではピッチのように堂々とお話くださいました。


対談形式で、選手お二人の学生時代の部活のこと、プロになったきっかけ、プライベート、練習や食事についてお話いただきながら、本学の運動習慣や朝食の状況と選手の学生時代の食生活を比較していきました。


さらに、選手の普段・試合前日・当日の食事・補食などの写真を見ながら、スポーツ選手に必要な栄養素は何が・いつ・どういう目的で必要となるのかについても、濱西先生が栄養学的な要素を加え、わかりやすく解説してくださいました。


=近藤高虎選手=

・試合前日にはカレーを、当日にはうどんなど、短時間で消化できるものをとる。

・補食は、練習後などにミネラルとエネルギーを同時に摂取できる発酵食品やプロテインなどを摂る。

普段の食事では、品数の多さに、濱西先生も「すごい」の一言。


=武井成豪選手=

・試合の2日前から炭水化物・糖質をとり、当日動ける身体をつくる。

・試合前にはバナナを食べる。(バナナは吸収の速度がちがう糖質が含まれていて、すぐに使われるものとゆっくり吸収されるものがある)

・試合後にリカバリーでアミノ酸を摂取する。


グループワークでは、さらに深掘りし、学生からの質問に気さくにお答えいただきました。


プロになってからより栄養を意識して食事をとるようになったこと、専属スポーツ栄養士に食事内容を相談し、アドバイスをもらって食べていること、ファーストフードを控えるなど、食事の大切さや日頃心がけていることを教えていただきました。また、大学時代とは違うプロの練習の厳しさや、メンタルを強くするにはなどの質問にもお答えいただきました。


学生にとっては、今回の授業でスポーツ選手が栄養を意識して試合に臨んだり、身体づくりを行っていることをリアルに知ることができました。また、スポーツ選手を身近に感じ、より自分たちの専門の学びについて興味を深めるきっかけになりました。


選手のお二人も、今回の授業が食事について考えなおすきっかけとなったこと、また、今回の授業で改善できる点にも気づくなど、勉強になることがたくさんあったとお話いただきました。


本日は貴重な経験をありがとうございました。


【公開】

第2回 コラボ授業(2022.10.28 実施)

× 河南こころ氏・FC今治 近藤高虎選手・武井成豪選手・松井治輝選手

「トップチーム管理栄養士によるお話」

・食事支援についての講話

 (グリコーゲンローディングについて)

・FC 今治選手と学生によるグループワーク

 (補食について)

最後にみんなで記念撮影

2022.10.28 実施報告


FC今治コラボ授業(食物栄養コース)では、FC今治の選手の皆さんの食生活を中心とした日常生活について学び、選手の皆さんが食べたらよい食事内容について学生が考えることを目標としています。

 

第2回は、FC今治トップチーム管理栄養士の河南こころ先生をお迎えして、競技にプラスになる食事選択の一つである「グリコーゲンローディングと補食」をどう活かせばよいかをお話いただき、近藤高虎選手・武井成豪選手・松井治輝選手と一緒にグループワークで意見交換を行いました。

また、この授業は一般公開とし、一般参加者もスポーツ栄養についての学びを深めていただきました。


はじめに、河南こころ先生がサポートされたアスリートの食事写真を使って、トップアスリートの食事をご紹介くださいました。

 

意外なことに、スーパーフードが入っているといった特別なものではなく、馴染みのあるメニューばかり。遠征や合宿では、ホテルのビュッフェスタイルの食事から自分で選ぶことが多く、どのように食事を組み合わせるかがポイントとなるようでした。

また、フィギアスケートの選手は、余計な体脂肪をつけないように、油を使わない和食をメインとし、品数を多くして、栄養をしっかりとっていました。

 

「継続は力なり」という言葉があるように、大切なのは続けることで、いかに継続してもらうかということも考えながらサポートする必要があり、飽きないように味の工夫をしたり、手ごろな値段、手に入りやすい食材などを使って、メニューを作成しているそうです。

 

アスリートの裏話も聞きながら、5大栄養素をバランスよくとる基本的な食事のとり方についてお話を伺ったあと、いよいよ専門的なお話に入っていきます。

 

グリコーゲンローディング(カーボローディングとも呼ばれる)とは、エネルギー源(グリコーゲン)をため込む(ローディング)食事戦略のこと。炭水化物中の糖質が体内に入ることで、グリコーゲンというエネルギー源(最大約1220kcal)を筋肉と肝臓、血中に蓄えることができます。持久系の高強度で長い間走り続ける競技では、この糖質のエネルギーをたくさん使うため、最初に満タンにしておくそうです。

サッカーも、試合中の補給はなかなかこまめにできないため、事前に準備しておくことができるグリコーゲンローディングは効果的とのこと。

 

【試合時の栄養戦略】

▶試合前…グリコーゲンの蓄積

 パスタや白米など炭水化物を多く含む料理をたっぷりとってグリコーゲンを満タンに。

▶試合中…グリコーゲンの維持

 ようかん・ジャムパンなど、すぐにエネルギーになる吸収の速いものを。

 トップアスリートもおにぎり、バナナ、エネルギーゼリーなどを補食としている。

 食欲促進、競技中の食べやすさも大切なので、味、サイズ、包装方法などの工夫も必要。

▶試合後…グリコーゲンの回復

 糖質(筋肉の分解を抑制)とたんぱく質(筋肉の合成を促進)を一緒にとると、さらにグリコーゲンの貯蔵量がUPして疲労回復が促進される。その割合は3:1~4:1が良い。


\河南先生イチオシ/

①リカバリードリンク

 低脂肪乳と100%オレンジジュースの割合を1:1にすることで、グリコーゲンの貯蔵量がUPする割合である糖質とたんぱく質が3.6:1でとれる。

②アーモンド

 疲労回復を促進するビタミンEが手軽にとれる。

 

最後に、やっぱり食事の基本は「美味しく・楽しく」ということが大事と、笑顔でおっしゃいました。

 

講義の後はグループワークに入ります。

3つのグループに分かれ、それぞれのテーマで選手の実体験をふまえて話し合いました。


A.試合前日の夕食メニューと補食:

近藤高虎選手とのグループワーク

食事:普段と同様の食事。脂質や揚げ物等をとらない。試合の時間にあわせて夕食をとる。

補食:プロテイン・バナナ


B.試合当日の食事と補食:

武井成豪選手とのグループワーク

2日前、3日前は食べる量を増やし、当日の量は控える。

食事:うどん、おにぎり、フルーツ。あぶらっこいものをさける。

補食:バナナ、おにぎり、ゼリー


C.グリコーゲン再補充のための補食または食事:

松井浩輝選手とのグループワーク

食事:松井選手は試合後体重が2kg程減るため、水分を中心とした食事。魚。油ものをさける。

補食:ゼリー、バナナ、カステラなど


【感想】

河南こころ先生より

スポーツ栄養をしたいという学生は多いが、現場に行けなかったり、選手と直接話せないことがほとんどなのに、このように選手と話すことができるというのは、とても恵まれていると感じました。

 

FC今治選手より

地域のみなさんとこのように学ぶ機会があり、嬉しい。

こころ先生に講義していただいたグリコーゲンローディングの効果は、サッカーのパフォーマンスにつながっているのを実感できているので、参考にしてみてほしい。

また、自分の食事について再確認できてよかったと思います。

 

一般参加者の方より

スポーツ愛好家や、スポーツをする小・中・高校生の保護者が多く、参考になったという感想を多くいただきました。

講義終了後も質問をたくさんいただき、充実した時間となったようで嬉しく思います。

 

次回の公開授業では、今までの授業で学んだことをふまえて、選手の皆さんが食べたらよい食事内容を考え、みなさんにご紹介したいと思います。



【公開】

第3回 コラボ授業(2022.12.18実施)

×FC今治 滝本晴彦選手・トップチーム強化担当中野圭さん

学生が考えたメニューの発表」

・選手が食べたらよい食事内容について学生が発表

・学生が発表後、学生と FC 今治選手との意見交換

2022.12.18 実施報告


コラボ授業3回目の最終回は、FC今治選手やFC今治専属管理栄養士の河南こころ先生から教えていただいたことや、本コラボ授業のコーディネータである濱西美幸先生からの助言、さらに学生たちで調べたスポーツ栄養に関する情報を用いて、それぞれの班で試合時に選手のみなさんにオススメしたい食事を発表しました。


今回発表を聞いていただいたのは、FC今治滝本晴彦選手と、元FC今治選手でトップチーム強化担当中野圭さん、そして、地域のみなさん。学生の発表に対する、それぞれの感想とアドバイスをいただきました。


グリコーゲンローディングの戦略を用いた、試合前から試合後のリカバリーまでの食事を3つの班に分かれて提案しました。

A班「試合前日の夕食のメニュー」

試合直前に必要な栄養素である糖質・タンパク質・ビタミンC・ビタミンB1・クエン酸・カルシウムを摂取できる簡単で誰でも作れるメニューを提案します。


① 黒ごま焼き鳥丼

 鶏肉・ごま→コンディションを整える・筋肉の収縮を助ける


② カリフォルニア丼

 サーモン・アボカド→筋肉の修復・疲労回復


③ キムチ丼

 白菜キムチ・豚肉・イカ・チンゲンサイ→疲労回復・筋肉の修復


料理のコツは、野菜を選んで食べることと、スパイスで食欲増進させること。また、油や脂肪を極力避けることです。



B班「試合当日の食事と補食」

①試合当日の食事

消化時間を考えて、試合開始時間には、体の中のエネルギーを満タンにしておきます。試合4時間前には、食事・固形物の摂取を終えることが理想です。

ご飯を多めにとるなど、普段のバランスのよい食事に糖質をプラスした食事を提案します。


焼き魚:炎症を抑え、持久力を高める。血行を良くする。疲労軽減。

【必須脂肪酸(EPA / エイコサペンタエン酸)】炎症を抑える、持久的な能力を高める。

【不飽和脂肪酸】中性脂肪やコレステロール値を調節、血液の流れを良くして栄養素や酸素を体中に届ける、運動時の疲労軽減効果。


卵料理:完全栄養食

【タンパク質】代謝を上げる・疲労回復効果

【脂質】悪玉コレステロール値の低下・動脈硬化予防

【ビタミン】脂質やタンパク質の代謝・歯や骨を丈夫に・抗酸化作用・免疫力を高める

【ミネラル】体の構成・体内の代謝・生理機能のコントロール


味噌汁:「水分・塩分・ミネラル」を補う

①身体を大きく…豆腐・油揚げ・豚、鶏肉・たまごなどタンパク質をメイン

②疲労を回復…大根・じゃがいも・さつまいも・いんげんなどビタミン群をメイン

③ミネラル補給…わかめ・あさり・しじみなどの海藻など海産物をメイン


果物:プレッシャーを低下

【ビタミンC 】【カルシウム】プレッシャーを低下させる

グレープフルーツやバナナは季節を問わず購入しやすい。

ブロッコリー:試合間近に主食を多めにとる場合の不足しがちなビタミンCを多く含む


【カリウム】血圧を抑えむくみ解消効果、筋肉が正常に働くようサポ―ト

ビタミンk・β-カロテンなど多くの栄養素を含む

 ②試合当日の補食

エネルギー不足を防ぐため、1~2時間前(緊張すると胃の動きが止まり消化が抑えられてしまうため)に、ゼリーやバナナなどの消化の良い軽食をとり、水分補給として、スポーツドリンクを15分~20分間隔で摂取するのがオススメです。

C班「グリコーゲン再補充のための補食」

運動後は内臓が疲労しているため、できるだけ早く水分や糖分、たんぱく質などをとることや、食べやすく消化しやすい食べ物(おにぎり、バナナ、オレンジジュースなど)をとることがポイントになります。


試合後の補食

ジャムを使った簡単ゼリーを提案します。


試合後に必要な栄養素


運動後はこれらの栄養素が含まれた食事をすることが大切です。運動直後は、できるだけ早く栄養補給をすること、また、食べやすく消化しやすい食べ物をとることで内臓への負担を減らすことができます。


夕食時には、糖質の利用効率を高め、新陳代謝をスムーズにするビタミンB1、強い抗酸化作用を持つアリシンが含まれている食べ物を(豚肉/ネギなど)摂取することで疲労回復への期待が高まります。生ものやアルコール、繊維が多く含まれているものを避けることで内臓への負担を抑えることができます。


発表が終わったあとは、フードモデルを使って参加者の普段の食事の栄養バランスをチェックするワークショプを行いました。

日頃の学びを生かして栄養指導にチャレンジです。


3回のコラボ授業を通して、FC今治の選手がいかに食事に気をつけているか、一流選手がベストのパフォーマンスを出せるようにするためには、どのように栄養で支えることができるのかを直接プロから学んだことは、とても貴重な経験となりました。


まだまだ奥が深いスポーツ栄養の世界ですが、食事と運動がどのように体に影響を与えるのかを身近に感じることができ、栄養学の面白さを深めることができました。