研究紹介

スーパーコンピューターと呼ばれる大型計算機を使って、物質中の電子の振る舞いを調べる研究をしています。物質の個性を決めているのは、とても小さな電子の集団運動によるものです。そのため、電子の振る舞いを理解することは、物質が金属になるのか、半導体になるのか、磁石になるのかならないのかといった、基本的な性質を明らかにする手がかりをつかむことに繋がります。

磁石の研究

「ネオジム磁石」と呼ばれる世界最強磁石は、日本人の佐川眞人博士によって発明され、車やロボットといった、動きを伴う様々な製品の制御に欠かせない材料の一つです。一般に、「材料」と呼ばれる物質内部の微細構造は非常に複雑で、磁石材料も例外ではありません。世界最強のネオジム磁石は熱に弱い(保磁力の弱耐熱性)という弱点があり、この弱点解明の理解を妨げているのが複雑な微細構造です。
京コンピューター」や東京大学物性研究所が運営するスーパーコンピューターを用いることで、「界面」と呼ばれる複雑な微細構造における電子の振る舞いを解析し、保磁力と電子状態の関連性を明らかにする研究を行っています。

新奇物質合成の可能性を探る

周期表に示されるように、自然界で安定に(人工で作られた不安定元素を除いて)存在できる元素は91種類あります。個々の物質は違った構造(結晶構造)や、その構造の中での原子の位置(原子配置)、元素の種類が異なります。仮に、構造は同じですが原子の種類が異なる2つの物質を比較したとします。原子の種類が異なれば、物質内部に存在する電子の数や特徴も変わってしまうため、2物質は全く異なる性質を持つ可能性もあるわけです。
このように、様々な元素の組み合わせで構成される物質の数は無限に考えられます。しかし、組み合わせを色々変えながら物質合成の実験を進めても、実際に安定して存在可能な物質は無限に存在しないことが分かります。現在、実験家の協力を得ながら、安定に存在できる物質の可能性をコンピューターシミュレーションを用いて解析する研究を行っています。

重い電子の状態を探る

周期表の下には「希土類」や「アクチノイド」と呼ばれる原子番号の大きな元素が存在します。これらの元素を含む物質群では、通常の物質に存在する電子に比べ数倍から数百倍重い状態の電子が観測されています。この「重い電子」の振る舞いをコンピューターシミュレーションを用いて解析し、物質の性質との関連性を明らかにする研究を行っています。

Institutional Research (IR)

大学が所有する大学入試・学生成績・教員研究業績などを分析し、可視化することで大学の方針・意思決定をデータに基づいてサポートする仕事です。