精子凍結保存の歴史
ヒトの精子凍結保存の歴史は古く、1953年Bunge and Shermannにより凍結保存精子で人工授精を行い、妊娠例を得たというのが最初の報告でした。日本では1958年に凍結保存精子による非配偶者間人工授精(AID)での出産が報告されています。以後、精子凍結保存は主にAIDに対して用いられてきました。しかし近年、不妊治療の普及により、配偶者間人工授精(IUI)や体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)を行うことを前提としての、妊娠可能な精子を凍結保存することが行われるようになりました。さらに、精巣精子採取術(TESE)を行って精子を採取したものや、悪性腫瘍者に対する精子を凍結保存するよう
になりました。(※当院ではAIDは施行しておりません。)
当院では精子凍結保存の適応として以下の精子凍結保存をしています。
人工授精(IUI)のための精子凍結保存
人工授精を行う当日に新鮮精液の採取が不可能な場合、前もって凍結保存をしておきます。人工授精の当日に融解して使用します。ただし、融解後の精子の生存率・運動率は凍結前の精子の状態に比べて低下します。よって、当日の新鮮精液を採取することをおすすめします。
体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)のための精子凍結保存
人工授精と同じく、体外受精や顕微授精を行う当日に新鮮精液の採取が不可能な場合に前もって凍結保存しておきます。採卵の当日に融解をして使用します。同じく、融解後の精子の生存率・運動率が低下しますので、体外受精の適応にできず、顕微授精に変更になることがあります。よって、当日の新鮮精液を採取することをおすすめします。
悪性腫瘍の方の精子凍結保存
がんや悪性リンパ腫、白血病などの悪性腫瘍の化学療法や放射線治療に伴う副作用により造精機能の低下が予想される場合、治療を行う前に凍結保存をしておきます。抗がん剤の使用後には、精子数の減少や、精子数がゼロになることもあります。このような場合、精子数などの回復する治療は現在のところありません。治療の前に凍結保存をしておくことで妊娠の機会を失うことを防ぐことができます。