鼠径ヘルニア
小児の「鼠径ヘルニア」について
「脱腸」と言われます。あしの付け根の”鼠径部”と呼ばれるあたりに、腸管などのおなかの中の臓器が出てしまう状態です。
あしの付け根あたりが膨らみ、さわると柔らかくグニュグニュします。膨らみが戻ったり、再度出現したりすることが特徴的です。
こどもの「鼠径ヘルニア」は、お母さんのおなかの中にいる時に閉じるはずだった袋(おなかの中から鼠径部、陰嚢までつながっています)が閉鎖されないために起こります。ヘルニア内容が戻らなくなる嵌頓ヘルニアを起こす可能性があるため「鼠径ヘルニア」は手術が必要です。
「嵌頓ヘルニア」とは、袋の中に出た腸管などが袋の入り口で締め付けられ、元に戻らない状態を言います。「嵌頓ヘルニア」は強い痛みが起こり、血流が悪くなって、脱出した臓器が十分に行き渡らず、臓器が壊死してしまうことがあります。嵌頓ヘルニアとなったら徒手整復をおこない完納できない場合には緊急手術が必要となります。
小児の「鼠径ヘルニア」手術について
当院では、男の子は精管や血管の剥離を伴うため前方アプローチ法、女の子では剥離臓器がないため腹腔鏡手術を採用しています。
両側同時に行う場合には男の子でも腹腔鏡を用いる場合があります。
男の子の手術について
当院では、男の子の鼠径ヘルニアに対しては前方アプローチ法(Potts法)を標準術式としています。鼠径部を、15~20㎜程度切開し、ヘルニアの袋と精巣につながる血管や精管を分けます。その後、ヘルニアの袋のみを縫い閉じます。
創部はからだに吸収される糸で縫います。皮膚は医療用ボンドでコーティングします。皮膚のしわに合わせて切開することから目立ちにくい創となります(右図:右鼠径ヘルニア術後3ヶ月)。
女の子の手術について
当院では、女の子の鼠径ヘルニアに対しては腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(LPEC、エルペック)を標準術式としています。腹腔鏡手術とは、細長いカメラと鉗子を小さな創部からおなかの中に入れて手術をする方法です。
おへそ、おなかの右を3㎜程度切開し、カメラと鉗子を挿入します。また、ヘルニアの袋を縫い閉じるためにヘルニアがある側の鼠径部を2㎜程度切開します。
おなかの中を観察すると、ヘルニアの袋の入り口にあながあいているのが見えます。
ヘルニアの原因となっているこの袋の入り口を糸で閉じます。鼠径部の切開部から糸をつけた特殊な針を通し、袋の入り口の周りに糸を回します。この糸を結紮してあなを閉鎖させます。創部はからだに吸収される糸で縫った後に医療用ボンドでコーティングします。
入院について
当院では、1泊2日入院で手術をします。手術前日に入院していただき、翌日午前中に手術をします。術後3時間を目安に飲水を開始し、夕方の診察で問題がなければ退院となります。
激しい運動やプールなどは、1~2週間程度控えていただきますが、退院翌日から通園、通学可能です。吸収される糸で縫うため、抜糸や消毒は要りません。
術後外来について
術後1週間を目安に小児外科外来で創部の診察をします。問題なければ運動制限などを解除します。
その後、通常は術後1ヶ月、3ヶ月を目安に外来受診していただき、創部の診察をします。