虫垂炎

「虫垂炎」について

俗に「盲腸(もうちょう)」とも呼ばれます。医学的には、虫垂とは盲腸の先端にある臓器のことを指します。

虫垂炎は、その腸管に炎症が起きることで発症します。初期の段階症状は炎症の波及が広がっていくことによって痛みの部位は一定ではないこともありますが、徐々に右下腹部に移ってきます。虫垂は正常で4㎜位の太さですが、虫垂炎になると風船のように膨らんで痛くなります(非穿孔性虫垂炎)。

さらに虫垂炎が進行していくと、虫垂が破裂して穴があき、おなかの中に膿が出て重症化します(穿孔性虫垂炎、汎発性腹膜炎)。非穿孔性虫垂炎と穿孔性虫垂炎では手術難易度、入院期間、術後合併症率が大きく異なります。

このことから、虫垂に穴が開く前に治療をすることが大事です。

治療について

虫垂炎は、こどもでもおとなでも起こります。小児では発見が難しく、穿孔性虫垂炎への進行が早いとされています。

そのため当院では手術を第一の治療としておすすめしております。小さいお子さんで、ぐったりしているような場合では特に早急な手術が必要です。

発見が早期で、痛みもまだ弱い虫垂炎のときは、抗生剤で治療(保存的治療)を行うこともあります。保存的治療の入院期間は約1週間です。虫垂は残ったままなので約20%が再び虫垂炎になると言われています。

虫垂炎手術について

当院では、腹腔鏡手術を行っております。腹腔鏡手術とは、手で直接手術するのではなく、細長いカメラと鉗子を小さい創部からおなかの中に挿入して手術をする方法です。

当院の腹腔鏡下虫垂切除術は、おへその下の輪郭に沿ってU字型に切開してカメラを挿入します。下腹部と左腹部に5㎜程度切開し、鉗子を2本挿入します。

穿孔性虫垂炎の場合はキズが増えたり、術式が変わったりする可能性があります。

盲腸近くの虫垂の根本を糸で縛り、その先で虫垂を切って摘出します。

入院について

腹腔鏡手術は、開腹手術よりも創が小さいため、痛みも少なく入院期間も短いです。

非穿孔性虫垂炎の入院期間は5日程度です。一方で、穿孔性虫垂炎の入院期間は10日程度を必要とし、腹腔内膿瘍等の合併症が起きた場合はさらに入院が延長します。

退院となってからは、激しい運動やプールなどを1週間程度控えていただきますが、退院翌日から通園、通学していただけます。

吸収される糸を用いるため、抜糸や消毒はいりません。

術後外来について

術後1週間を目安に小児外科外来で創部の診察をします。問題なければ運動制限などを解除します。

その後、通常は術後1ヶ月、3ヶ月を目安に外来受診していただき、創部の診察をします。