2025.11.17
answer は古英語から用いられており、名詞としては「答え、返事;反論」、「応酬;〘フェンシング〙打ち返し」(1535年初出)、「解答」(1592年初出)を意味する。名詞から派生した動詞としての answer は、古英語では「返事する」を意味し、近代英語期からは「(願い・要求などを)聞き入れる;従う」(1593年初出)、「(ノック・合図などに)答える」(1598年初出)、「[〜 to one’s name の成句で]…という名前である」(1598年初出)、「応酬する」(1599年初出)、「(目的などに)かなう」(1714年初出)、「(問題などを)解く」(1742年初出)、「役に立つ、間に合う;うまく行く」(1783年初出)の意味でも用いられる。名詞の answer は古英語では andswaru などの語形で用いられており、ゲルマン祖語の *andswarō から発達した。これは「…に反対して」を意味する and- と「誓う(swear)」を意味する *swarjan から成っているため、もとは「告発に対する反駁における誓い」を意味した。『英語語源ハンドブック』では、この原義から古英語では中立的に「返答」の意味になったことについて、意味の一般化(generalization)として触れている(p. 16)。
現代英語の answer には発音されない <w> の綴字が含まれているが、これは上記の通り語源に swear が含まれているためである。『英語語源ハンドブック』によると answer における w は17世紀頃に発音されなくなった(p. 16)とあるため、<w> を含む綴字が標準として固定しつつあった頃に発音がされなくなり、その結果 <w> の綴字が現代にも残っているものと考えられる。OED には古英語から18世紀までの様々な answer の異形が挙げられているが、イングランド英語において <w> または <u> が脱落した綴字は中英語の north-west midlands 方言の onsar を除き見られない(ただし、中英語期には方言形として w とは異なる anshere (Norfolk), ansquare (north-west midlands), onsquare (northern) のような語形が見られる)。Upward and Davidson は、古英語から <w> (古英語では <ƿ> (wynn) の文字が用いられた) の綴字が保持されているものの、近代英語期に発音されなくなった語として andsƿarian ‘to answer’, sƿeord ‘sword’, tƿa ‘two’ の3語を挙げている(p. 61)。
また、古英語の andswaru (名詞), andswarian (動詞) のように <d> を含む語形は初期中英語期まで見られ、古英語では速記記号の Tironian notes で and を表す ⁊ を用いて、andswarode を ⁊swarode のように省略することもあった(「148. ampersand―&の名前―」を参照)。
参考文献
「Answer, N. & V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Answer, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/answer_n?tab=forms. Accessed 17 November 2025.
唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一『英語語源ハンドブック』研究社、2025年。
Upward, Christopher, and George Davidson. The History of English Spelling. Wiley-Blackwell, 2011.
キーワード:[silent letter] [spelling-pronunciation gap] [abbreviation] [Germanic]