2025.11.4
『英語語源辞典』には小文字で始まる2つの angle と大文字で始まる Angle の見出しが立っている。angle (1) は「かど;すみ」(1380年頃初出)、「角度」(1391年初出)、「観点、立場」(1872年初出)を意味する。angle (2) は名詞で「釣り針」(古英語期に初出)を意味し、動詞としては「魚釣りをする」(1450年頃初出)、「手に入れようと狙う」(1589年初出)を意味する。そして、Angle は英語史の始まりとされる、449年頃にブリテン島に上陸したゲルマン人の一つである「アングル族」を表し、古英語から用いられている。
この3語は現在、大文字・小文字の区別を除けば同音異義語となっているが、語源も共通している。まず、古英語から用いられている、「釣り針」を意味する angle (2) は印欧祖語で「…を曲げる」を意味する *ank-, *ang- に遡り、ゲルマン祖語の *anȝulaz から発達して古英語では angul となった。「かど」や「角度」を意味する angle (1) も同じ印欧祖語 *ank-, *ang- に遡り、ギリシャ語の agkúlos「曲がった」からラテン語の angulus「かど、すみ」、(古)フランス語の angle を経由して中英語に angle として借用された。「アングル族」を表す Angle はラテン語の Anglus, (複数形で) Anglī から借用したものだが、『英語語源辞典』によると原義は「Angul の人々」で、この “Angul” とは釣り針(angle)の形をした Schleswig の一地方名を表す。ラテン語の Anglus, Anglī はゲルマン祖語の *anȝli- に遡るが、このゲルマン祖語から古英語に発達したものが Engle で、Engle に -ish が付いたものが English である。
参考文献
「angle (1), N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「angle (2), N. & V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Angle, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
キーワード:[homonymy] [Indo-European] [Germanic] [Greek] [Latin] [French]