2025.10.24
analyze は『英語語源辞典』によると1601年に初出し、当初の語義は「†解体する」であった(1794年で廃義)。現在用いられている「分析する」の語義は1758年から見られる。analyze は名詞 analysis「分析、分解」からの逆成(back-formation)によってできた語で、OED によると -ize の接尾辞を持つ語からの影響で、paralyse「麻痺させる」、paralysis「麻痺」との類推の可能性も挙げられている。『英語語源辞典』によるとフランス語の analyser の影響を受けて動詞の analyze が確立したとされているが、OED はフランス語の analyser が実証されたのは英語よりもかなり遅い(OED における英語の analyse/analyze は1587年初出で、フランス語の analyser の初出は1679年)ことを指摘している。ちなみに、analysis(1581年初出)は中世ラテン語の analysis からの借用で、ギリシャ語の análusis「ゆるめること、解放」(analúein「…を解く、…を再びほどく」から派生したもので、「再び」などを意味する ana- と「…をゆるめる」を意味する lúein から成る)に遡る。
analysis からの逆成によってできたこと、またフランス語の analyser からの影響を受けた可能性を考えると、動詞も <-yse> の綴字になるように思われるが、OED によるとイギリス英語では analyse、アメリカ英語では analyze が主に用いられているようである。ただし、Upward and Davidson によると -ize の接尾辞は近代英語期に広く用いられるようになり、Samuel Johnson による1755年の A Dictionary of the English Language では analyze の綴字が用いられている(ただし paralyse は <s> の綴字が用いられている)ことから、analyze は早くに <z> の綴字の影響が及んだ例として挙げられている(p. 214)。analyse/analyze に関しては、初めは analyse の綴字が用いられたが、-ize を持つ語からの影響で analyze の綴字が生まれ、アメリカにおける主流の綴字となった一方で、イギリスでは再び analyse の綴字に揺り戻しが起きたと考えられそうだ。今後もアメリカ英語とイギリス英語の綴字の違いが続くのか、アメリカ英語からの影響でイギリスにおいても analyze の綴字が一般的になるのか、見守っていきたい。
参考文献
「Analysis, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Analyze, V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Analyse | Analyze, V.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/analyse_v?tab=forms. Accessed 24 October 2025.
Upward, Christopher, and George Davidson. The History of English Spelling. Wiley-Blackwell, 2011.
キーワード:[back-formation] [-ize/-ise] [British and American English differences] [analogy] [Latin] [Greek] [French]