2025.9.25
「ほとんど」を意味する副詞 almost は古英語から存在し、その語形から見て取れるように、all 「すべて」と most 「ほとんど」が組み合わさってできている。古英語での語形は (e)almǣst, ælmǣst のほか、eall mǣst のように2語に分かれた形も見られ、さらに mǣst eall のように語順が逆のものも用いられていた。『英語語源ハンドブック』によると2語に分かれた語形は1600年代まで、語順が逆の語形は13世紀頃まで見られた(p. 12)。
現代英語における almost は程度について「限りなく…に近い、ほとんど…」の意味で用いられるが、もとは量について「ほとんどすべて(most all)」の意味を表した。中英語以降にメタファーによって量から程度についての意味が生じ、後者が almost が表す主な意味となった(『英語語源ハンドブック』p. 12)。
語形の話題に戻すが、『英語語源辞典』には中英語期の語形として almost, almest, almast が挙げられている。第2音節の母音字が <o>, <e>, <a> で異なっているが、これは中英語期の方言の違いを示しており、almost は北中部方言、almest は南部と南中部方言、almast は北部方言形である。『英語語源辞典』によると14世紀後半まで南部方言、ロンドンを含む南中部方言ではalmest が用いられていたが、15世紀初めから北中部方言のalmost がロンドンでも一般化し、後の標準形となっていった。
参考文献
「Almost, Adv.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一『英語語源ハンドブック』研究社、2025年。
キーワード:[word division] [dialect] [Germanic]