2025.9.5
all は古英語期から形容詞・名詞として「全部(の)」、副詞として「全く」の語義で用いられている。後者の「全く」の語義として、all は他の語の意味を強めるために用いられており、all right「全く申し分ない」のほか、also (< 古英語 eall swa「全くそのように」)、altogether (< 古英語 eall togædre「皆一緒に」)、although (< 中英語 all + though「たとえ…だとしても」)、always (< 中英語 all + ways「あらゆる時に」)、already (< 中英語 all + ready「完全に準備できて」) などに見られる(『英語語源ハンドブック』pp. 11–12)。
all はゲルマン祖語の *allaz, *alnaz から発達したもので、それ以前の語源は明らかになっていない。古英語期の語形は『英語語源辞典』によると (e)al, (e)alle であった。ea で始まる語形は、OED によると æ がウエスト・サクソン方言において割れを起こしたものであり、一方のアングリア方言では æ が a となり、all の語形となった。また、語幹の末尾の重子音 ll は、屈折変化などで子音が続く場合(複数属格の ealra など)や語末(eal, al)では l が1つとなることもあった。さらに、æl-, æle- などの語形が古英語期の主に複合語に見られた。
中英語期になると単数形の al、複数形の alle の語形に発達した。『英語語源辞典』によると al は後に母音が来ないときにわたり音が生じ /aul/ となり、初期近代英語期に /ɔːl/ の発音になった。また、中英語では al の複数属格として al(d)re, aller, alder があり、1600年頃まで用いられていた。その複数属格 alder を含む表現に、1385年頃の Chaucer による Troilus and Criseyde が初出の alder-liefest「最愛の (dearest of all)」がある。
参考文献
「All, Adj., N. & Adv.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“All, Adj., Pron., N., Adv., & Conj.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/all_adj?tab=etymology#6869377. Accessed 5 September 2025.
唐澤 一友・小塚 良孝・堀田 隆一『英語語源ハンドブック』研究社、2025年。
キーワード:[Germanic]