2025.8.31
『英語語源辞典』には algorism と algorithm がそれぞれ見出しとして立っている。algorism は1200年以前に初出し、「アラビア数字算法」を意味する一方で、algorithm は1699年に初出し、algorism と同じ意味を表すのに加え、1938年以降数学用語の「互除法」や、「算法、アルゴリズム」を意味するようになった。
algorism の語源はアラビア語で「ホラズム(現在のウズベキスタンのヒヴァ)の男」を意味する al-Khwārizmī́ に遡り、ペルシャの数学者 Abū Jafar Muhammad ibn Mūsā (c780–c850) の姓に由来する。英語へはラテン語からフランス語を経由して借用されたが、中世ラテン語の語形は algorismus で、語源としては直接の関係がない接尾辞 -ism の影響によって語形が変化している。中世ラテン語から古フランス語に借用されると augori(s)me, algorisme の語形になり、al- が au- に変化したり、s が脱落する場合もあった。したがって、古フランス語から借用した中英語でも augrim, algorisme などの語形が見られ、OED の語形欄によると17・18世紀まで揺れが続いた。
一方の algorithm は algorism から転訛してできたものだが、これはギリシャ語で「数」を意味する arithmós (「算数」などを意味する arithmetic の語源でもある)との混同によって s が th になったものである。algorism と algorithm のどちらも元はペルシャの数学者の名前(および地名)に由来するが、語源として直接の関係がないものの語形が類似した接尾辞 -ism や関連した意味を持つギリシャ語の arithmós から影響を受けて、それぞれ語形が変化したことになる。
参考文献
「Algorism, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Algorithm, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Algorism, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/algorism_n?tab=forms#7070054. Accessed 31 August 2025.
キーワード:[folk etymology] [Arabic] [Latin] [French]