2025.9.19
「ワニ」を表す alligator は1591年の初出となっているが、当時の語形は表題に示した aligarto や alagarta, alagarto, aligarta などであった。alligator はスペイン語の el lagarto から借用され、el はスペイン語の定冠詞(ラテン語の illum (原義「あそこの、向こうの」) から発達したもので、更に印欧祖語で「...の向こうに、…を越えて」を意味する *al- に遡る)、lagarto はラテン語で「トカゲ」を表す lacertum から発達したものである。『英語語源辞典』によると定冠詞 el の付かない形を借用した lagarto も1568年からしばらく用いられており、aligarto をはじめとする語形もまたスペイン語に近いものとなっている。なぜ現代の alligator の語形に変化したのだろうか。
『英語語源辞典』によると現在の語形は17世紀から見られ、ラテン語の alligāre「結びつける」の影響と言われている。また、OED によると ‑arto, ‑arta から ‑ator, ‑ater への変化は、administrator などに見られる行為者接尾辞 ‑ator, ‑ater からの連想による可能性があるとされている。語頭の al- から all-、語尾の ‑arto から ‑ator への変化は、それぞれ語源とは関係のない形態的な類推、あるいは民間語源によるものであると考えられているようだ。
また、フランス語における語形は英語と同じく alligator であるが、これは英語からの借用だという。一般的に語彙など様々な側面でフランス語が英語に与えた影響の方が大きいとされているが、alligator は英語がフランス語の綴字に与えた影響の一つということになる。
参考文献
「Alligator, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Alligator, N. (2)” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/alligator_n2?tab=etymology#6838133. Accessed 19 September 2025.
キーワード:[folk etymology] [analogy] [Spanish] [Latin] [French]