2025.9.3
alike は「同様で[に]」を意味する副詞・形容詞で、古英語期から用いられている。現代英語の alike の語形を見ると、接頭辞 a- と like に分けられるように思われるが、古英語では a- ではなく、表題のように ġelīċ の語形であった。これはゲルマン祖語の *ȝalīkaz から発達したもので、接頭辞 *ȝa- と「身体、形」を表す *līkam から成る。ġelīċ は中英語期に ilich(e), ilik(e) に発達し、初期近代英語期まで ylike の語形で残った一方で、古英語の ġe- が弱化した a- の語形が1300年頃から現れた( ġe- から a- への弱化は、他に afford にも見られる)。また、『英語語源辞典』によると、a- の語形は中英語期における古ノルド語の álíkr (形容詞) や álíka (副詞) の影響もあるという。
また、「同様な」などを意味する形容詞、「…のように;同様に」などを意味する副詞、また前置詞、接続詞の用法も持つ like は alike の頭音消失形である。『英語語源辞典』によると、接頭辞 ġe- を落とした古英語の līċ(ċ は /k/ が口蓋化した /tʃ/ の発音を表す)は、南部方言で līch、北部方言で līk となったが、おそらくすべての方言で /-k/ の発音を持つ比較形の影響で、līk が14世紀以降に一般化した。また、古ノルド語の líkr の借入とも考えられている。ちなみに、「…を好む」を意味する同音同綴異義語 like は、同じくゲルマン祖語の *līkam を語源に持つが、そこから *līkǣjan, līkōjan に派生し、古英語では līcian に発達したものである。両者は同じゲルマン祖語を語源に含むものの、古英語では(方言によっては事情が異なる可能性もあるかもしれないが) ġelīċ (līċ) と līcian の異なる発音・語形であったが、中英語・近代英語期における発音・語形の変化や、屈折語尾の消失の結果、同音同綴意義語になったと考えられる。
参考文献
「Alike, Adv. & Adj.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Like (1), Adj., Adv., Prep., Conj., & N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
「Like (2), V.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
キーワード:[aphaeresis] [homonymy] [Germanic] [Old Norse]