2025.9.1
alidade は測量用器具の「アリダード、指方規」を意味し、1500年以前に初出した。語源はアラビア語の定冠詞 al- と「半径」を意味する ʿaḍid から成り、「目盛りの付いた円の回転半径」を表す al-ʿiḍā́dah に遡り、中世ラテン語の al(h)idada を経由して英語に借用された。中世ラテン語に見られる語中の-h- は OED によるとアラビア語の名詞の語頭についている ʿayn を反映したもので、英語でも16世紀から19世紀の間に alhydada, alhidada, alhidade などの語形が見られた。
加えて、借用された当初の後期中英語期にはアラビア語やラテン語によるものではない語形 allidatha が用いられていた。現在の alidade の語形は『英語語源辞典』によるとフランス語の alidade からの影響によるもので、/d/ を2回発音することを避けたのだろうか、allidatha は英語において2つ目の d が th に交替した語形ということになる。借用語における d と th の交替が珍しいことなのか、それともよくあったことなのかが気になるところである(英語本来語における d と th の交替の一例は「75. afford ―二重の<f>と、<th>と<d>の交替―」をご覧いただきたい)。
参考文献
「Alidade, N.」寺澤芳雄(編集主幹)『英語語源辞典』研究社、1997年。
“Alidade, N.” Oxford English Dictionary Online, www.oed.com/dictionary/alidade_n?tab=etymology#7103704. Accessed 1 September 2025.